第14話 閑話
《クローリーの苦悩》
ニャッギャルニラ国首相であるクローリー・マクラーレンは懊悩していた。
愛娘が行方不明、しかも禁呪を唱え異世界人と自分の位置を入れ替えたというのだ。
『ヒルデ・ラクシャリー長官が娘を断罪し首相を失脚させるべく息巻いているらしい』と、首相派の部下が報告してきた。
……ラクシャリーたちは事態が収まるまではクローリーには報告しないことに決めていたのだが、首相派の居残り組が密かに報告してしまっていた。
すぐにでも国に舞い戻り娘の捜索の陣頭指揮をとりたいが、国代表として各国を回っている最中に、やらかした娘を心配してとんぼ返りし私情を挟みまくりながら捜索指揮をとったら、国として大問題なのは分かっている。
分かっているが、帰りたい。
たった一人の娘なのだ。
入れ替わった青年には気の毒だが、娘の代わりに罪を着せて処理するつもりだった。ラクシャリーやヒムロの読み通りだ。
クローリーの息がかかった部下にもそう指示してある。戻ったら、一気に処理にかかるのでねつ造した証拠を作りつつラクシャリー長官派を牽制しておけ、と。
だが、突然事が急展開した。
部下が離反したのだ。
ラクシャリー長官派に寝返ったらしい。
ねつ造を指示した証拠と共にラクシャリーに恭順し、何か起きた時、その青年との間をとりなしてほしいと頼んだという。
「何が起きているんだ……!?」
優雅に夕食会に出席し談笑している場合ではない。食欲もない。
だが、各国は国を挙げてスケジュールを組んでさまざまな調整を行いニャッギャルニラ国首相訪問を歓迎しているのだ。
たとえ今現在自国で大変な事が起きていようと首相派の牙城が崩されようとも、たとえ娘が無事帰ってきてもラクシャリー長官派によりすぐ投獄されるように手が打たれていて娘の全財産が自分が買い与えたすべてが売り払われ青年に慰謝料として渡ってしまっているとしても、笑顔を見せつつ相手の歓待を受けなければならないのだ。




