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僕の中の想像神

「ふ〜…よ〜し、かんせ〜い!」

「…フミは何もしてないでしょ?」

「ごしゅじ〜ん!どうですか?この館!」

「私達の最高傑作ですわ。気に入らないなんてこと、ありませんよね?」

「うんうん。僕には考えられないほどすごいよ…ほんと、まさか君たちにそんな力があったとはね…」


 僕の目の前に広がる信じられないほど大きな館。…一応、僕の土地だし、大丈夫だとは思うが…こんなのを勝手に立てて怒られないよね?うん。僕の土地だし!


「ヤッター!ご主人に褒められたー!」

「ふふん。当然の反応ですわ」

「フミ…私はもうお役御免なんだね…」


 よく世話をしてくれているシャノが、これみよがしに泣き真似をする。…シャノ、初めて会った時から比べて、なんというか、元気になったね。


 僕には余る、大きな大きな館。…最近までは普通の家に住んで、普通の、日本人としての生活を送っていたのに。なんでこんな事に…


「それにしても大きいな〜…」

「なー」

「うわおっ…びっくりしたぁ…」

「むー…私はずっと隣に居たよー」

「ごめんごめん…」


 僕には余るバカデカい館に、良き仲間たち。


「早く行こ!フミっ!」

「あ、うん。…ちょっと、走るの早いってシャノ。」



 §



「…ん?…なに?…ホワイトハウス?」


 朝、いつものように起きて、いつものように目を開けたら─────いつもとは違う場所にいた。

 …いやそもそもホワイトハウスはアメリカだし、内部が真っ白ってわけじゃないわ。


「うわー…なんだここ…」


 真っ白な壁に、真っ白な床。…うん。これはまだ夢だな。珍しい。明晰夢かな?


「あ~…つかれたぁ――――え!?!?侵入者!?」

「え?」

「何が目的…というかどうやって入ってきた?!」

「…」


 どんな夢だよこれ。なんで僕が侵入者になってるんだよ。

 というかこのザ・美人なこの人、ちょっと宙に浮いてない?


「あなた…敵意もない。殺意もない…そして、魔力もない?…おかしい、私の管轄内の世界は魔力が存在しているはず…いったいどうやってここまで?いや、そもそもこの領域に入ったのは過去に私が無理矢理呼び込んだあの二人の英雄しかいないし…」


 一人でなんかぶつぶつ言っている。っていうかこの人神様?いわゆる女神ってやつなのかな。

 なんでそう思ったかって?…なんか、女神っぽさを感じたからだよ。つまり勘。


「僕は日本人ですよ?ところでここはどこですか?」

「日本?…私の管轄内の世界では聞かない名前ですね…」


 何のことを言ってるのか分からないが、夢って確か自分の経験や記憶をもとに組み立てられてるんだよね?

 まぁ多分、何かの漫画とかアニメのだろう。


「あなたには悪意も敵意も殺意も、何も感じません…ので、とりあえず話し合いで解決しませんか?」

「え、あ、はい。よろこんで。」

「…では。」


 そう言うと、暫定女神が指をパチンと鳴らす。

 テーブルと椅子が空中でふわふわしながらふわふわと近づいてきて、ふわふわと僕の前で着地する。夢みたいな光景だ。めっちゃかっこいい。

 こういうのって、男の夢だよね。夢なら僕にも出来たりしない?


「どうぞ座ってください。」

「あ、失礼します。」


 流石は僕の想像の中の神。礼儀正しい。


 想像神さんがまた指をパチンと鳴らすと、次は目の前にチーズケーキと紅茶が出てきた。当たり前のように地球の食べ物。


「う~~ん!このチーズケーキ美味いね!」

「お気に召したようで何よりです。一応、あなたの頭の中にある一番好きな物、を出しました。」


へ~。僕ってチーズケーキと紅茶が一番好きだったんだ。紅茶なんて年に何回の飲むか分からないくらい飲んでないけど…夢の中では紅茶好き系キャラでいたかったのかな…僕。


「この紅茶も!チーズケーキに合う!」

「…毒とか、色々と、怖くないんですか?」


 え、毒?急に何?…この神、怖いんですけど。

 想像神は毒を仕込むなんてそんなことしないはずだ。僕の思う神は優しくて寛大。つまり―――─


「大丈夫。毒、盛られてないってわかってるから。」


 そう、毒は100%盛られていない。なんてったって僕の考えた神だぞ?そんな想像神が毒なんて盛るはずがないのだ。


「…白状します。つい先程からあなたの心を読もうとしてましたが、一切読めません…何をしたのですか?」

「え?…何もしてないけど…」


 というか、この想像神僕の心読もうとしてたの?なんで?…ま、まぁ、警戒心の強い神ってことだろう。


「…あなたはどうやってここに?」

「寝てたらいつの間にか。というかここどこ?」

「…ここは神の間、とでも言ってください。世界に顕現してはいないので、厳密には違うのですが…」


 おぉ!かっこいい!神の間。そしてそんなところにいる僕。浅はかすぎるストーリー、まさしく僕が考えそうなことだ。 いい夢で明晰夢になったなぁ。


「ふ~ありがと。チーズケーキと紅茶。めっちゃ美味しかったよ」

「…それはなによりです。」


 うん。流石は僕の妄想神。優しい。…とはいえ、そろそろ妹に起こされそうな時間だな…明晰夢になったのは今日が初めてだから時間の流れ方とかどんな感じなのかは知らないけど、そんな気がする。


「そろそろ来るかな…」

「?何が――あ、すみませんちょっと席外します。」


 妄想神が人差し指を頭に当てて、何か喋っている。何をやっているのか分からない……いや、僕にはわかる。これは僕の夢、つまり僕のいままでの経験がなにか関係してる…そう、これは漫画やアニメでよく見る、テレパシーだ!!

 うん。絶対そう。


「え⁉⁉…はい、はい…はい。わかりました…では、こちらで対応して…はい。…失礼します。」


 ほら、よく電話で聞く言葉の配列達。


「すみません、話の途中で抜け出してしまって…」

「いいなーテレパシー。僕も出来るようになりたいなぁ」

「…分かるんですね」


 当たってたらしい。…僕の夢、単純すぎない?


「あなたの言った通り、本当に来ました。本当に、何故わかるんですか?」

「…来たって、何が?」


 え、妹の事?もしかして僕の妹、夢にまで乱入してくるの?…いや、あり得る。なんせ、僕はシスコンだからね!!

優しくて美しい神様に、僕の大好きなチーズケーキと紅茶。ここまで僕の好きなもので並んだら、妹が来てもおかしくない。


「…では、転生の特典の一つにテレパシーを追加しときますね…というかあなた出来るんじゃないんですか?このくらい。」

「え?いや、無理に決まってるでしょ」

「そういうことをあなたが何度もしてきたから言ってるんですけどね…」


 …あれ?なんか怒ってる?…僕の妄想神が急に怒るわけないし、何か僕がやちゃったのか?

…いや、何もしてないと思うけど


「まぁいいです。スキルは何がいいですか?どうせどんなスキルがあるかあなたには分かってるのでしょう?」

「え?いや?…なんで知ってると思ったの?」

「…」


 普通に考えて、説明も受けてない事が分かるわけないじゃん。…もしかして説明してた?…いや、そんなことは無いはず。流石に僕が記憶力皆無で頭の悪い男だとしても、そんな直前の記憶まで無くなるわけがない。


「…スキルには、大まかに回復系、攻撃系、特殊系、防御系があります。まぁ、他にも細かいものは色々とありますが…まぁ、いいでしょう。」

「へ~…じゃあ、とびっきり強いのがいいな。あ、でも、仲間0とか悲しいし、味方を巻き込むようなスキルは嫌だな。技量が必要なやつも僕には使えなさそうだし、痛いのも嫌だから盾役は嫌だな。となると、前線も怖いな。死にたくないし。あとは~…」

「どれだけ強欲なのですか!とりあえず、今のに該当しそうなスキルを探しますね。」

「あ、はい。」


 ついつい喋りすぎた。

 でも、仕方なくない?異世界転生系で、自分が転生するならどんなスキルが欲しいか、一度は考えたことない?そんな状況に夢でとは言え立ち会ってるんだよ?そりゃ興奮しちゃうでしょ。


「…じゃあ、吸血鬼になってみます?」

「吸血鬼?」


 吸血鬼…それって、URYYYYYYYってやつ?…うーん、何か色々と弱点多そうだしなぁ…おもしろいならそれでもいいけど…太陽の光とかで死にたくはないなぁ


「吸血鬼って言われても、分からないよ。」

「基本的に、吸血鬼は体が弱いです。再生能力&不死の能力を付与することはできますが、その場合人間の形を保つことが出来なくなります。と言っても、角が生えたり、翼が生えたりするだけです。」

「えぇ…それは嫌だな…」

「完全に人間と同じ体の吸血鬼にすることは可能ですが、その場合体が弱いです。後は、元の機能として、相手の同意の上で眷属にすることが可能、血を見ると…目の前に美味しいものが広がっているような、そのような高揚感に包まれる、大きくなることはできないが、小さくなることが出来る、動物等に擬態も可能。」

「眷属ってどうやるの?」

「相手の血を吸い、自分の血を相手に飲ませる、が一つ、もう一つは同井上の」


 なんか、盛りだくさんだな。…とはいえ、思ったより全然チートじゃないな。なんか、血で剣作ったり、その他諸々出来たりするのだと思ってた。


「うーん、なんか少ないんだよなぁ…」

「…本当に注文が多いですね…そんなのに強いなら何もいらないでしょうに…」


 なんか色々言われているが、ちょっと聞えない。

 まぁ多分、新しい何かを探してくれてるのだろう。


「それでは、絶対防御、その他諸々、色々なことが出来るフェアリーを10体くらい眷属としてお渡ししますが…あなたなら大丈夫だとは思いますが、このフェアリーたちにも自我があります。従わないこともできるので、扱いには気を付けてくださいね?」

「?…はい」


 まぁ、つまり、普通に接してればいいってことだよね?…大丈夫でしょ。

 というかなんか急に便利過ぎない?やっぱり、流石は想像神。神だ。…いや、そりゃ、神なんだから神か。


「うん、ありがとう。最高だよ。君は神の中でも優秀な方だね?」

「え、い、いえ。私なんてまだまだ全然下っ端で…」

「そうなの?意外だね。まぁ、そのうちもっともっと上の立場になるよ。なんせ…君は想像神なのだからね。」


 想像神。うん。創造神ではないよ?口に出してみたら思ったより創造神でビビったけど、僕の想像の中の神、という意味での想像神ね?

 というか、神の中にもやっぱ上とか下とかあるんだ。…創造神とか、時空神とかいるのかな。


「…創造神?…って、急かすようで申し訳ありませんが、新しい世界へ行く時間となりました。」

「本当に色々ありがとね」


 …なんか、明晰夢ってちょっと辛いな。この目の前にいる想像神は僕の作りだしたものだから、もう会うことは無い…こんな人、見た感じ会ったことないし、多分アニメや漫画のキャラだよねぇ…


「それでは、新しい世界で、新しい人生を。…あなたなら大丈夫だとは思いますが、スポーン先は森です。お気をつけて…」


 体が光り、徐々に薄くなっていく。すげぇ、これが寝覚める感覚?…どちらにせよ、良い演出だ。


「それじゃ、もう会えないかもしれないけど…また、会おうね!」


 もちろん、これは僕の夢なわけで、もう会うことは無い。一期一会と言えば、美しく感じるかもしれないが、やっぱり悲しいものは悲しい。


「良き生を。」


 …最後の最後まで、本当に、僕の理想の想像神様だった。




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