2/3
色を聴く
次に訪れたのは山の集落。
イロハが見かけたのは、緑と黒が交差するオーラの少女・ナナ。
自然と共に暮らしているが、言葉にせずに距離を置くような、閉ざされた雰囲気をまとっていた。
ナナは植物と話せると言うが、人と話すのは苦手だという。
イロハは何度も訪れ、ただ隣で黙ってお茶を飲み、風を聴いた。
ある日、ナナがぽつりと呟いた。
「私ね、母がいなくなってから、人に頼るのが怖くなったの。」
緑の中に混じる黒は、恐れの色だった。けれど、イロハが何も言わずうなずくと、黒が淡く溶けていった。
「私、ずっと言いたかったんだ。『寂しい』って。」
イロハはそっと手を取り、「言えたね」と笑った。
ナナのオーラに、やわらかな春の黄緑が生まれていた。