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光の縁
少女・イロハは、幼い頃から時折、人のまわりに色が見えることがあった。
それはまるで風に揺れるカーテンのように淡く、でも確かにそこにある光。
ある日、イロハは祖母の形見である旅ノートを見つける。そこにはこう書かれていた。
「本当の声は、目に見えない。でも、心の色がそれを教えてくれる。」
イロハはふと、自分の見るオーラが「色」ではなく「想い」なのかもしれないと気づく。
祖母が歩いた旅路をたどるように、イロハは町から町へ、人と出会い、色と対話しながら旅を始める。
最初に訪れたのは海辺の町。
そこで出会ったのは、赤い光に包まれた青年・ユウト。
言葉少なく、どこか怒りを抱えているように見えた。
話すうちに、イロハはユウトの怒りの色の奥に、「置いていかれた悲しみ」が重なっていることに気づく。
弟を亡くし、自分だけが生き残った罪悪感を抱えていたのだった。
イロハは静かに語る。「その想いも、あなたの中に生きてる。赤は愛の色だよ。」
ユウトははじめて涙をこぼした。