夜明け前
年越しの鐘が聞こえる
ゴーン、ゴーン、ゴーン
良い音だ
心が綺麗になるようで
一年の汚れが落ちて行く
そんな中私は山頂を目指す
初日の出を拝むための小さな冒険
初めていく1人での挑戦
わらじを履いて白い服を着て
心を清める
もうすぐ大人になるから
必要だと自分で決断して
杖となる棒を一本を持ち
山に入った。
かれこれ数時間歩いた
もう年は越しただろうか
山は一段と寒くなる
私を追い出そうとする様に
それでも登る
私が決めた事だから
怖い……
寒い……
帰りたい……
でも、そんなみっともない事はしたくない
ならばどうするのか……
登るしかない
夜明けまでに
ゴーン、ゴーン、
除夜の鐘が聞こえる
まだ年は越してない様だ
夜が深く濃くなる
それに比例する様に
私の心も恐怖心が増していく
恐怖心に勝ちたい
ならば勇気が必要だ
でも、勇気だけでは足りない
勇気だけでは前に進めなくなる
だから覚悟と目標を足した
目標は私自身を変える事
覚悟はこれが出来なければ死ぬという覚悟
夜明けまではまだ時間がある
焦らずゆっくり歩く
道を間違えない様に
上へ上へと一歩ずつ
近道なんかは決してない
人生と同じ様に……
ゴーン……
除夜の鐘が終わった
年が明けたのだろう
まだ夜は長い
上を見上げても星空はなく
ただただ木に覆われている
人生はただ暗いだけなのか
そう思ってしまうほどに
常闇が一層恐怖心を強くする
月あかりもない中私はただただ1人で登って行く。
そして……
開けた場所に出た山頂まであと少しだ
相変わらず明かりはない
でも、山頂まで少し
岩肌を掴んで上へ上へと登る
星は見えない
今はそんなに上を見なくていいから
目の前の目標が見えてるから
そして
着いた
山頂に
息が上がって
苦しくて
でも、
嬉しくて
感情がぐちゃぐちゃだ
あとは待つだけ
そこでようやく空を見た
星が見える
でも
それは遠い場所
遥か、遥か空の上
遠いな……
そして夜明けはまだこない
着いたタイミングでご来光が見える
そんな筋書きは
現実にない
厳しい現実を最後まで突きつけられる
でも、この冒険の終わりは分かる
ほら、
空が白んできた
夜明けだ
そして……初日の出を拝む
息もしっかり整っていた
手を合わせて
合掌
これからの人生は
これよりの苦労も絶望も恐怖もある
ここは通過点だ
そして下山帰れば親に叱られ
風邪をひいた
でも、やりきった私は
山を登る前より成長したはずだ
行って良かったと
ベッドで寝てる私は達成感で満ちていた