表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

夢の残響




鮮やかな夢を見ていた。


それは、美しく、眩しく、そして、残酷だった。

触れた瞬間に壊れてしまいそうなほどの繊細さで、だけど確かにそこに存在する、鮮烈な夢。







月明かりが差し込む夜空の下、私の身体は無数の光の粒で覆われ、淡く輝いている。

全身を包む薄い氷の膜は、わずかに動くたびに砕け、冷たい音を立てながら剥がれ落ちる。

冷たい空気を大きく吸い込み、吐き出した息は白い霧となって広がっていく。

そして夜の静寂の中に私ごと溶け込んでいった。


「帰ってきたんだ……私だけが。」


荒廃した建物の崩れた天井から、鋭く輝く月が私を見下ろしている。

カプセルの中で眠っていた私の体はまだ慣れていないが、慎重に一歩を踏み出す。

足元に走る冷たさは、鋭い刃のように私の感覚を刺し、意識を現実へと引き戻した。


「痛っ……」


薄い氷を踏み砕いた足を見下ろし、私は静かにため息をつく。


この世界に戻ってきたというのに、心はまだ、あの世に置き去りにされたまま。

そこで交わした言葉、そこで感じた温もり、そこで築いた大切な、大切な思い出たちが、心の隅々まで染み渡り、私を引き留めている。


その思い出たちは時期に失われるだろう。

でもあの夢で感じた愛や悲しみ、それらは私の一部となり、今の私を形作っている。



だから、私は歩き出す。

この現実に再び向き合うために。

空に輝く月が、まるで私を導くかのように光を放っている。

この孤独と共に、私は進む、それが私の物語の始まりだから。


この先に待つものが何であれ、私はそれを受け入れる。


でもきっとこの旅路は長くなる。

だから憶えているうちになぜ私が冷凍保存され、そしてどんな夢をみたか。

そんな物語を、今、語ろうと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ