夢の残響
鮮やかな夢を見ていた。
それは、美しく、眩しく、そして、残酷だった。
触れた瞬間に壊れてしまいそうなほどの繊細さで、だけど確かにそこに存在する、鮮烈な夢。
月明かりが差し込む夜空の下、私の身体は無数の光の粒で覆われ、淡く輝いている。
全身を包む薄い氷の膜は、わずかに動くたびに砕け、冷たい音を立てながら剥がれ落ちる。
冷たい空気を大きく吸い込み、吐き出した息は白い霧となって広がっていく。
そして夜の静寂の中に私ごと溶け込んでいった。
「帰ってきたんだ……私だけが。」
荒廃した建物の崩れた天井から、鋭く輝く月が私を見下ろしている。
カプセルの中で眠っていた私の体はまだ慣れていないが、慎重に一歩を踏み出す。
足元に走る冷たさは、鋭い刃のように私の感覚を刺し、意識を現実へと引き戻した。
「痛っ……」
薄い氷を踏み砕いた足を見下ろし、私は静かにため息をつく。
この世界に戻ってきたというのに、心はまだ、あの世に置き去りにされたまま。
そこで交わした言葉、そこで感じた温もり、そこで築いた大切な、大切な思い出たちが、心の隅々まで染み渡り、私を引き留めている。
その思い出たちは時期に失われるだろう。
でもあの夢で感じた愛や悲しみ、それらは私の一部となり、今の私を形作っている。
だから、私は歩き出す。
この現実に再び向き合うために。
空に輝く月が、まるで私を導くかのように光を放っている。
この孤独と共に、私は進む、それが私の物語の始まりだから。
この先に待つものが何であれ、私はそれを受け入れる。
でもきっとこの旅路は長くなる。
だから憶えているうちになぜ私が冷凍保存され、そしてどんな夢をみたか。
そんな物語を、今、語ろうと思う。