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第30話 会談

長らくお待たせしました。

忙しい日々が続いていますが、少しづつ書いて更新していきます

アレクは幼い頃、孤児院に引き取られる以前の記憶がなかった。すべては孤児院の園長であるミライズが記憶を封印していたからである。彼の封印魔法が解けた事ですべての記憶も蘇っていた。時々、夢で見ていた光景は封印魔法が……それが現実だったと理解する。


「おじいちゃん……」


2歳の誕生日を迎えた後、アレックスは王宮を離れ、ブライト夫妻と暮らしていた。魔法の制御を覚えるために。その頃の記憶は曖昧だが、アレクはブライト夫妻に育ててもらった事を覚えている。そして、あの血塗られた夜の事も思い出した。何者かの襲撃があった……おじいちゃんやおばあちゃんが死んだのは魔物に殺されたんじゃない。人間に殺されたんだと理解してしまった。そして彼らの狙いは――


自分だった……


ルーナ、トゥナを医務室に連れていった帰り、アレクは一人泣いていた。





その日の夜、陛下に呼ばれて3人は学院長室にいた。3人とは、アレクとチームを組んでいるルーナとトゥナを合わせた3人だ。3人を待っていたのはレグリット王国国王であるライゼン・レグリット、魔法学院長であるリットマン・フォーティだった。まず、レグリット国王陛下が口を開く。


「アレックス。いや、アレクよ。記憶は戻ったな」


「はい。おと……陛下の事もおじ……師匠の事も……」


アレックス――アレクは戸惑いながらも答える。戻ったばかりの記憶もそうだが、国王陛下と話をする…それだけで緊張してしまう。ライゼンはその事を気にかけず、さらに会話を続ける。


「うむ。ならば、なぜ私がお前に封印魔法を施したのは理解できるな?」


「はい――。魔法の制御ができなかった……からです」


「その通りだ。先ほどの魔法は見事に制御できていたと思う。さらに無詠唱、魔法の同時発動と前代未聞だ。その才能は認めよう。しかし、昔のように暴発する可能性もないわけではない。そこにいるトゥナによれば、怒りが起因となって様々な現象を引き起こしていたのも確かなようだからな」


アレクは驚いた表情でトゥナを見たが、トゥナは顔を逸らす。トゥナが国王陛下とそんなやり取りをしていたとは思えなかったが、事実なのだろう。


「そこで、お前の魔法が暴発しないという事を学院在学中に証明しなさい。そうすれば、卒業後にアレックス・レグリットとして王宮へ戻る事を許す。それまではただのアレクとでも名乗るといい」


ライゼンはアレクにそう伝える。アレクとルーナは呆気に取られた表情をしていたが、トゥナは予想していたの分かっていたような表情だ。しかし、ライゼンの話はそこで終わりではなかった。


「もう一つ、これはお願いになるのだが――」


そう言ったライゼンはリットマンに目をやる。それを受け取ったリットマンは口を開いた。


「無詠唱魔法及び、魔法の同時発動については未知数でな。その研究に協力をお願いしたい」


詠唱を必要とする魔法――それが無詠唱で使えるとなるとその有効性は計り知れない。戦闘はもちろん、生活においても役に立つに違いなかった。無詠唱魔法が使えるようになればアレクのしたように魔法の同時発動も夢ではない。表情には出さないが、学院長は心を躍らせていた。


「私からも頼む」


ライゼンはアレクに頭を下げる。そんな異様な光景にアレクは慌てて答える。


「そ、そんな。頭を上げてください。どんな協力ができるか分かりませんが、俺のできる範囲でなら協力します」


アレクはその申し出を受ける事にした。決して善意ではない。研究を進める事で自分の力がどんなものか見極める事ができるかもしれない、それを有効に使うために自らも魔法に対する理解を深める必要があったからだ。


「ありがとう」


リットマンはそう言うとアレクに手を差し伸べ、アレクはその手を握る。


「では陛下、私はこれで失礼します」


アレクとの握手を終え、普段と違う一人称を使って学院長は部屋を後にする。


「トゥナにルーナ。君たちもお礼が言いたかった。アレクがここまで成長したのも君たちあっての事だと思う」


トゥナとルーナは戸惑いながらも国王陛下の言葉を素直に受け取り、順に退室する。部屋に残されたのはライゼンとアレクの2人となった時、奥の扉が開く。


「アレックス……」


そこから現れたのは、リーナ・レグリット陛下――つまり、アレクの母親だった。

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