女神side 知らない未来/レーナside 一時加入
そこは女神が存在する領域、この世界にありながらどこにもない、そんな場所。
女神はその場所で世界を救うために行動し続けていた。
「加護の付与は無事に終わった…これで準備は全て終わり。あとは勇者達にすべてを託し、私は不測の事態に備えるだけ」
女神は世界を救うための方法として素養のある者たちに「加護」を付与し勇者としての力を授けた。
そしてそれを自分を崇めている教会に信託として伝え、準備をさせた
目論見通りに勇者たちは集まり、聖剣を探す旅に出た。
「あとは勇者たちが旅で力をつけ聖剣を操り…「あの子」と共に魔王竜を倒してくれれば世界は救われる。」
あの子という言葉にほんの一瞬だけ葛藤をにじませる女神
それは果たしてどういう感情からくるものなのか…それは本人にもわからなかった。
全ては順調のはずだった
だがそこで不測の事態が起こる
「これは…聖剣を誰かが手に入れている…?」
聖剣とは女神がかつて魔王竜と戦った時に使った女神本人の存在核の一部より作られた剣…その砕けた一部である。
故に女神には聖剣が今どうなっているかなどの事が感覚としてわかるようになっていた。
そしてそこから伝わってくるものは、勇者ではない誰かが聖剣を手に入れたということであった。
「ありえない…聖剣を手にするだけならまだしも所有者として認められている…?」
聖剣には自我と呼べるほど強固ではないが、うっすらと意志のようなものがある
そして聖剣は自らが認めたものしか所有者になりえない
一応、女神として加護持ちには最低限使いこなせるようにはなっているが…今の所有者は完全に所有者として認められていた
「知らない…こんな未来は存在しなかったはず…」
何度も未来を見たはずの女神だったが聖剣を別の誰かが持っていくことなどなかったはずなのだ
一体だれが?女神は今一度少しだけ未来を見ようとしたが…何も見えなかった
否、見えてはいる。だが今の状況の未来が見えない。
誰が聖剣を持っているのかわからないのだ
これはもはや数字で表せないくらいの時間、この世界を見守ってきて初めての経験だった
ならばこそ
「この目で確認しなくてはいけない。私は今回こそ失敗するわけにはいかないのです」
女神の脳裏に誰かの顔がよぎる
それは彼女が世界を救うために犠牲にすると決めた存在
だからこそ彼女は止まれない
他の誰でもない、女神が決めたことなのだ
ならば絶対に失敗するわけにはいかないのだ。
勝手に犠牲を出して、はい失敗しましたでは済まされないのだ
そうして女神は世界の垣根をこえる
「もし聖剣に関心があるのなら次に向かうのは「二本目」がある、あの国のはず…あそこは魔王の因子に支配された人間がいる場所でもある。ならばこそ最適な場所のはずですね…「第一の聖剣」の所有者、あなたがもしも私の…あの子の邪魔をするというのならこの手で…」
女神は自分が創造した世界の土を踏んだ
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「二本目だと?」
「そうそう」
勇者パーティとの戦闘後、私たちはとりあえず話をすることにした
ぶっちゃけあんまり関わりたくないのだけれど…このままにしておくわけにもいかない
というのもみんな弱すぎるのだ
戦士のクロガネさんは経歴上、強いのだが他はダメだ…いや才能という点では申し分ないが戦闘経験が少なすぎて戦いでは話にならない。
原因は私だ
今は外に出たが先ほどまでの洞窟はゲームのチュートリアルダンジョンなのだ。
そこを私が何も考えず先に雑魚を皆殺しにしてボスも倒してしまった。
つまりは私がレベリングの機会を奪ってしまったわけだ
これはまずいと少しの間、協力を申し出ることにしたのだ。
「聖剣はねこれ一本だけじゃないの。これは最初の一本で私が欲しいのはこれだけだから次の聖剣を君たちに譲る」
「おいおい嬢ちゃん、そんな話を信じろってのか?本当だとしてなんでそんなこと知ってるんだ?」
「それはね聖剣を抜いた時にイメージとして頭に流れ込んでくるの、次の聖剣の場所がね」
ちなみにこれは本当だ
ゲームでもそういう描写があったが実際に頭にイメージが流れたのだ。
私の目的はこの第一の聖剣を手に入れた時点で達成されている。
なので二本目は勇者たちに譲って問題はない…まぁ泥棒のくせに何言ってんだった感じではあるのだがね
ともかく、次の聖剣の場所まで私が案内をすると同時にレベリングを手伝ってあげる
そしてその後は単独行動で計画の軌道修正を図るという寸法だ
「そうなんですわね、それでお姉さま。その二本目はどこにあるんです?」
「おいおい!本当にこいつのいう事を信じるのかよ!」
賢者…レーヴェはずいぶんと私を警戒しているようだ
いやそれが正解だと私も思うんだけどね
「お姉さまがそんな嘘つくはずがありませんわ!」
このありさまである
信じてくれるのは嬉しいがもう少し警戒心は持つべきだと思う。
「まぁどちらにせよ進まねばならんのだから行くしか無いだろう。嬢ちゃんの監視もできるしまぁいいんじゃないか?」
ひゅ~大人の意見~~
かっくいい~
「自分はまぁ…どちらでも」
そして勇者のあまりにも勇者感のない意見
今は仕方ないか。
「というわけで多数決でオッケーね?じゃあ次の目的地はフルセル公国です」
「フルセル公国ですか…」
「う~ん」
なにやら微妙な反応
それはそうだろう、なんだってあそこは今大変なことになっている。
だがそこにあるんだから行かねばならないのだ
「まぁいいか…どうやって行くかがまずは問題だなぁ」
クロガネがう~んと悩む仕草をした
「え?あの天使族の村を抜ければ近くていいんじゃ?」
ゲームではそのルートで普通に行けたはず
「正気か?あの人間嫌いの天使族が素直に通してくれるはずないだろう」
天使族とは見た目はほぼ人間なのだが、種族として真っ白な肌に背中に純白の翼を携えている種族だ
そして自らを女神に近しい偉大な種族として人間を見下しているのだ
そしてここから公国に行くのにまっすぐ天使族の村を通ればいけるのだがあの村は…
「あの村って滅んでるんじゃ?」
そう、ゲームではあの村は滅びているのだ
だから天使族の心配をする必要なんてないはず
「いや?普通に健在だぞ?」
「え、うそ?」
「嘘じゃねえよ。むしろどうして滅んだと思ってるんだ」
ゲームで滅びていたからです
とは言えない
そうかまだ滅びていないのか…確かゲームで戦う中ボスに滅ぼされているはずなのだが…まだなのかな…?
ということは今行けば鉢合わせする可能性もある
さてさてどうしたものか
結局その後、様々な意見が出たが
やはり距離や道の問題もあり、天使族の村を経由するということで話はまとまったのだった
まさかの勇者パーティに一時加入してしまった私はこれからどうなってしまうのか
どうにもなりませんようにっと




