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試練

「やっぱり人の手が入ってないだけあって魔物が大繁殖してるね~」


雪が降り積もる雪原をひたすら走り抜ける。

ただでさえ視界が悪いのに四方八方から小型の魔物が襲い掛かってくる。

しかしそこは勇者パーティ。半端な魔物くらいならどうとでもなるわけで。


「つーか魔物って繁殖するのか?」


レーヴェはあたりに炎属性の魔法をばらまきながらそんな疑問を口にした。


「確かになぁ…こいつらどうやって増えてるんだ?というか増えるのか?」


クロガネさんはシンプルに前からくる魔物に拳を叩き込み一撃で倒していく。


「そりゃあ増えるでしょう。倒しても倒しても絶滅しないんですから…カルラ、右ですわ」

「了解、エンチャントフレイム!」


ナリアは聖剣を通した探知の魔法で魔物の動きを感知し指示を受けたカルラが迫りくる魔物の群れを薙ぎ払う。

なんたる安定感。私も一応聖剣を構えてはいるが手を出す隙は無い感じだ。

まぁ私は後ろにいるレフィアとアルマの護衛だ。このままで大丈夫なはず…うん。


しかし魔物の繁殖か…確かにどうやって増えてるんだろう?

ゲームではもちろん無限湧きの魔物だがここは現実だ…狩りつくせば絶滅するのかな?

地味に気になるところである。


そもそも魔物とはおなじみ魔王竜の影響を受け異形化した生き物の事である…だから魔王竜がいる限りは理論上いなくなることは無い、ということになるのかな?

魔物同士で生殖とかしたりするのかな?むむむ…考え出すと少し気になってくるなこれ。


「くっ…!吹雪が強くなってきたな!どこか逃げ込める場所を探したほうがいいかもしれん!」


クロガネさんの叫びで思考が現実に引き戻された。

確かに吹雪がヤバいことになってきている。

ナリアが身体を保護する魔法を使ってくれているので感覚的には問題ないがアルマは小さいしそうでなくとも何かの拍子に雪の下敷きになったりしたら大事だ。

どこか雪をしのげる場所を探そう。


「レフィア!アルマも!大丈夫!?」


ばっと後ろを振り向く。

あれ…二人がいない!?


「レフィア!?アルマ!?」

「ご主人様~こっちです~」


どこからか声が聞こえたが姿が見えない。

どこだ!?


私がパニックになっていると上からひらりと何かが落ちてきた。

それは黒い羽根だった。

これってレフィアの?上?


見上げると数メートル上空をパタパタと翼を羽ばたかせたレフィアがアルマを抱えて飛んでいた。


「…あなた飛べたの!?」

「翼がありますから~」


いや飛んでるところなんて一度も見たことないけど…?

というか吹雪凄いけど大丈夫なのかな?

よく見ると何故か空飛ぶ二人には雪がかからず避けていっているように見えた。

なにそれ、おかしくない。


「それ何やってるの?」

「さぁ…多分アルマ様がなにかやってるのだと思うのですが…」


アルマは「ふんす!」といかにも仕事してますというようなどや顔をしていた。


「みんなあそこ!崖が出っ張ってて下に逃げ込めそうだよ!」

「でかしたカルラ!走るぞ!」


全員でカルラが見つけたがけ下まで走る。

魔物の数も多いし吹雪もすごいし一苦労だ…いったん魔物を吹っ飛ばそう!めんどくさいし。


「レーヴェ!剣出して!剣!」

「先生なんだよいきなり!」


「いいから!」

「お、おう」


レーヴェが背中の聖剣を取り出した。そしてそこにすかさず火属性の強めの魔法をぶつける!


「ちょ!おおおい!?いきなり何するんだよ!」

「いいからほら!早く周りの魔物ぶったおして!」


「あぁ…そういう…心臓に悪いからいきなりはやめてくれ…目覚めろ!第三の聖剣サーズ・エクリプス!」


聖剣の力で私が放った魔法が分解され魔力として吸収されていく。

ちなみにこの間にも私はレーヴェめがけて火の魔法を投げ続けている。


「多い多い!!もういいから!」

「ほ~い」


「ったく…魔力に還れ!荒々しき炎よ!魔方陣構築、詠唱破棄!火属性最上級魔法エクスプロードノヴァ!」


どかーん!


もうとんでもない大爆発が起こった。

魔物どころか辺り一帯を吹き飛ばし、私たちも吹っ飛んだ。


「うわぁああああああ!?」


ちょうどよくみんな目的の崖下に飛ばされたので結果はオーライだろう。

みんなも各々ちゃんと着地出来てるみたいだしレフィアとアルマも大量の黒い羽根をまき散らしてクッションにしていた。

すごい大量にあるけど無限に生えてくるのかしら?あの羽根…。


まぁ何はともあれ無事についてよかったよかった。


「だから多いって言っただろうが!?あぶねえよ先生!」

「死ぬかと思いましたわ…」

「自分も…」

「いろいろ戦場を渡り歩いたがあんな爆発は初めてだったぜ…」

「ごめんごめん」


正直調子に乗りすぎた。謝っておこう…アルマにも怖い思いさせちゃったかもと思いそっちに視線を受けると…。


「楽しかった…ふんふん」

「よかったですねアルマ様」


楽しんでいた。

タフな幼女だ。


「あら?皆さん見てくださいまし。なんかここ先がつながってますわよ」


ナリアが指さした先、そこに穴が開いていて確かに先がつながっているようだった。

中は水晶のようなものが大量に生えた洞窟のような形をしている。


「ほんとだ…あっ」

「どうした?カルラ」


「ここ、三本目の聖剣を手に入れたときに見たイメージの場所に似てるかも」

「おお~案外簡単に見つかったな」


そういえばこんな場所だったような気がするな四本目の場所。

確かに割と簡単にここまで来れたけど大変なのは実はここからだ。

何を隠そう、ここには他とは違った試練があるのだ。


「じゃあいきますか~…あ、念のためにレフィアとアルマはここに残ってて。危ないかもだし」

「そうですわね、ここに結界を張っておきますから安全だと思いますわ」

「かしこまりました、ご主人様」

「おかあさん…」


アルマが不安そうに私の服を掴む…ぐぬぬ可愛い奴め!

またいつものように私はなるべく優しくアルマの頭を撫でた。


「大丈夫大丈夫…すぐに戻ってくるからね」

「うん…」


名残惜しそうに手を離してくれた。


「じゃあ行くか~とりあえず俺が先頭歩くぞ?」

「おう、頼んだぜおっさん」


クロガネさんが盾を構え、いつものように先陣を切ってくれる。

でもここでは必要ない。なぜなら…。


「うお!なんだこれ!」

「全員気をつけろ!」


突如として洞窟中が光だし、私たちを飲み込んだ…そして。


「やっぱりね」


眼をあけると私は一人で真っ白い空間に立っていた。

どこまで見渡してもただただ白いだけの空間…そんな中で私の影だけが黒い色を持っていた。


「さぁ試練を始めましょう…ねえ「私」?」


影が突如として喋りだした。

やがて影は地面から上に伸びるようにして浮き上がり…もう一人の私になった。

これがここの試練。


いわゆる「自分に打ち勝て」というやつだ。

私は聖剣を構えると私を見つめる私と相対した。

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