再結成
あれから数日、私は普通に行動できるほど回復していた。
驚異の回復力!なんてはずはもちろんなく…ナリアから手渡された回復薬のおかげだ。
なんでもこれ国宝級のやばい代物だったらしく王国に数本しかないどんな怪我でも直してしまうフルポーション的なすごいやつだったらしい…。
私が飲んで大丈夫なものだったのか…?と聞いてみたところ国王様から魔法を使った通信で恩人のためだからむしろ使えと言われたそうで…大変恐縮です。
私が意識を失って2週間ほどたっていた。
それまでつきっきりで看病してくれたみんなに感謝しかない。
カルラたちは旅が止まっちゃってるし本当にいろいろと申し訳ない。
リハビリもかねて久しぶりに外に出た。
空は雲一つなく晴れていてとっても気持ちがいい。
「ふぅ…いい天気~」
深呼吸して大きく身体を伸ばす。
風もいい感じだし鳥のさえずりも聞こえてきて…なんというか生きてるって気がする。
気取りすぎかな?
そんなことを一人考えていた時だった。
「聖女様ぁああああああああああ!」
ドドドドドドドドドと土煙をあげながらギルド長が走ってきて…私の前に勢いよく膝をついた。
「ええ!?なに!?」
「無事お目覚めになったのですね聖女様ぁ!よかった…目覚めなければこの腹を切り裂き責任をとらねばならぬところでした!」
いやそんな物騒な…というかなにこのテンション。
「とりあえず顔をあげて立ってくださいな。」
「そういうわけにはいきませぬ!聖女様はこの村の恩人です!敬意をもって接せねば女神様から怒られてしまいます!」
んなわけあるか。
ギルド長の大声を聞きつけて他の村人もどんどん集まってくる。
「聖女様!」
「目が覚めたんですね!」
「わぁ聖女様だぁ!」
そして口々に聖女様聖女様と言い、膝をつく。
やめてくれえええええええ!!!!
「皆さん本当にやめてください!だいたい私は魔物にやられちゃって…この村を本当に救ってくれたのは私じゃなくてカルラ…勇者たちで…」
「いえ!確かに勇者様達にも感謝しております。しかしあなたがいなければ私たちは死んでいました。それは間違いない事です!」
「と、とにかくこういうのはやめてください!困りますから!」
必死に説得すること30分弱。
ようやく普通にみんな会話してくれるようになった。
「それでは今日は手筈通りに村をあげての祭りを開こうと思いますので」
「いや、その手筈知らないですよ私」
祭りなんて聞いてない。
「村がこうして民も含め無事だったことと聖女様のご快挙と勇者様含めの感謝の気持ちを込めてささやかですが開かせていただきますのでぜひ参加してくだされ」
私が主役かよ。
いったいなんでこうなってしまったのか…何もわからない。
しかしギルド長や村人たちの期待のまなざしを受けて断るわけにもいかず…私はそのお祭りに参加することになった。
村を少しだけ離れて近くの湖が良く見える場所に座る。
少し考えたいことがあって、ここは雰囲気的に落ち着くので最適だと思ったのだ。
そして目下私が一番考えなければいけない事…それは、
「…ふぁ」
私の隣で暢気に眠たそうな声をあげたアルマのことである。
実はさっきからずっと一緒でした。
というか目が覚めて以降はずっと一緒だ。というのも私の後ろをちょこちょことついてきて離れてくれないの!なぜか!
いやゲームでもこの子はそういう子だった。
懐いた相手にはずっとついて行く…みたいな。
でもその相手はもちろん私ではなく、カルラのはずだったのだけど…なぜか私についてくるようになってしまっていた。
いや、カルラたちと仲が悪いわけでもなく、私がベッドでおとなしくしている時とかは皆で遊んでいたりするのだが…優先順位的に私が一番上に来ているらしく…こうなっている次第です。
あとは名前。
ゲーム中でカルラたちが悩んだ末に「アルマ」という名前が付けられるのだが、なんとカルラたちが名前を聞いたところ自らアルマと名乗ったそうで…どうやらあの時…魔物にやられちゃったときに私がとっさにアルマと呼んでしまってそれで定着してしまったようなのだ。
はぁ…もう無茶苦茶だよ…。
先ほどかったパンを二つ取り出し、アルマに手渡して私もパンもかじる。
「ん、けっこう美味しい」
アルマも気に入ったのかもきゅもきゅと小動物のように一生懸命食べていた。
「どう?アルマおいしい?」
「うん」
短く返事をすると再びもきゅもきゅと食べ始める。
静かでおとなしい子だ。
しばらく二人でぼ~っと湖をパンのお供に眺めていた。
「退屈じゃない?」
「うん、おかあさんと一緒だから楽しい」
くっ…健気なことを言いおってからに!!!
頭撫でてやる!この!この!
なでなでと撫でてやると相も変わらず気持ちよさそうに目を細める。
可愛い顔しやがって!
…しかし「おかあさん」か…まだ私17歳なのになぁ。
子持ちです☆
いやいやおかしいでしょうに…というかゲームでカルラになついてた時は「おねえちゃん」じゃなかった!?なんでおかあさんになったんだ!…まさか私って老け顔なのか…?
知りたくなかった事実に私は打ちひしがれた。
こてんと軽い衝撃と共に右腕に体重がかかる。
見るとアルマがすぅすぅと寝息をたてていた。
私は上着を一枚脱いでアルマにかぶせた。
「おやすみ」
しばらく眠るアルマの頭を撫で続けていた。
「いつまでもこうしてはいられないよね」
とりあえずアルマはカルラたちに預けないといけない。
この子と勇者パーティが旅をするというゲームの展開は踏まないとまずいためだ。
とりあえずカルラたちと一回話して…きっと大丈夫だよね?
しばらくしていまだに眠っているアルマをお姫様抱っこして村まで戻った。
「おい!聖女様とご息女様がお帰りになられたぞ!早く出迎えの準備を!」
「やめて!?」
帰ってくるだけでひと騒ぎだ。
というか聖女と呼ぶのやめてほしいと何度も言ってるのに聞いてくれないし…しかもアルマが完全に私の娘と認識されちゃってる…はぁ…。
「お~い嬢ちゃん」
宿に向かっていると勇者一行が揃っていてクロガネさんが私に手を振っていた。
「あ、みんな。どうしたの?」
「実はお姉さまはも無事回復しましたし、そろそろ次の目的地に向かおうという話になりまして。」
おお、それはタイミングのいい話だ。
「今日は村でお祭りらしいので数日後に旅立とうかと思ってるんです。」
「そっか~、じゃあお願いがあるんだけどさ」
私は腕の中で眠るアルマをカルラに差し出す。
「えっと…?」
カルラは首をひねって困惑している。
「旅にこの子を…アルマを連れて行ってくれないかな」
「はい!?」
「おいおい何考えてるんだよ嬢ちゃん」
驚かれたがまぁ普通にそういう反応になりますよな。
しかし大丈夫!こういう言い訳考えさせたら私は一流よ。
「皆も見たでしょう?魔物が異常に集まってきてたの…あれ多分この子を狙ってたんだと思うの。特にあの大型の奴は確実にこの子狙いだった」
「ふむ…」
「じゃあやっぱり先生の見立てでは普通の子供じゃないってことか?」
「たぶんね」
ちなみに狙われてる云々は本当だ。
この子はその性質上、魔王の因子を持つものやその系統の魔物に狙われやすい。
だからどちらにせよ誰かが保護しなくてはいけないわけで。
「そういう事だからお願いしてもいいかな」
「いやでもお姉さま…きっとこの子お姉さまと離れたがりませんよ?」
「だなぁ…そうとう嬢ちゃんに懐いてるみたいだしなぁ「おかあさん」?」
「からかわないでよ~、大丈夫でしょカルラや皆とも遊んでたし」
「いやこれとそれは違うだろ先生」
やっぱり簡単には納得してくれないかぁ…さてどうしたものか?
「そうだレーナさん。こうしましょう」
カルラが何か思いついたらしく手を上げた。
その顔はなぜか満面の笑顔で…。
「自分たちと一緒に行けばいいんですよレーナさん」
そうきたか…だけどもそれはダメだ。
いろいろと支障が出る。
「いや~…それはちょっと…」
「レーナさん言いましたよね。自分たちがレーナさんより強くなってそれでも必要だと言ったら旅に同行してくれるって」
「え、うん…言ったけど」
「自分達、レーナさんがやられた魔物倒しましたよね?」
「いや…それはさぁ…少し違うじゃん?連戦だったし…」
「自分たちが倒した個体は調べた結果、他の二体とは違った特殊個体だったそうですよ?解剖した人に聞いてみてくれてもかまいませんよ」
マジか。
まさかそんなことが…いや怯むな私。ここで負けるわけにはいかぬ!
「でもさぁ」
「おい先生。俺あれから修行して最上級魔法も詠唱無しで撃てるようになったんだぜ?これって俺は魔法において先生を超えたってことだよな?」
それは卑怯じゃないですか?レーヴェ君よ。
「私はお姉さまが使えない回復魔法をたくさん使えますわ!そもそもお姉さまを主だって治療したのは私ですしこれはもうお姉さまを超えたと言えるのではないかしら?」
いつもは私の味方のナリアまでもが私の敵に回るか…おのれ…無駄な連携を見せおってからに…!
「あ~俺?俺は~え~と…ほれ嬢ちゃんより戦闘経験豊富だし年上だしそういう意味では嬢ちゃんよりも強い…よな?」
もう何でもありかよ。
クロガネさん自身納得できてないじゃん。目が泳いでるよ!
「そんな無茶な…」
「じゃあここで自分たちと戦いますか」
カルラの目はマジだった。
本気とも真剣とも書いてマジでガチ。
だいぶゲームの物語から外れてしまっている現在、時系列的にどのあたりになるのかいまいちわからないが3本目の聖剣を手に入れた時点の彼女たちと戦って勝てるかは微妙なところ…いやおそらく無理だ。
つまりお手上げ…。
しかし私は最後まであきらめない。
諦めるなんて言葉、私の辞書にはあるにはあるが何ページにあるかは知らぬ。
「…わかったよ、皆は私よりも強くなった。なら私なんて必要ないでしょう?」
「あります」
「ある」
「ありますわ」
「あるんじゃないか?」
あるのか。
「え~…」
「それに、先生は俺たちが見てないとまたどっかで死にかけそうだしな!」
「うむ」
「うぐっ!」
実際に死にかけたんだからなんにも言えねえ。
「ん…」
腕の中でアルマが身じろぎした。
どうやら起こしてしまったようだ。
「起きた?」
「うん」
そうだ、アルマに聞いてみるのはどうだろうか?
「ねえアルマ?」
「…?」
「アルマも私じゃなくて勇者のお姉ちゃんたちと一緒のほうが、」
ぎゅうぅぅううと擬音が聞こえそうなほどしがみつかれた。
「あはっはっは!どうやら答えは出たようだな嬢ちゃん!」
「うっし!今度は先生のオリジナル魔法も完コピしてやっから教える準備しとけよな!」
「またお姉さまとご一緒できてうれしいです!」
どうやら私の同行は決まってしまったらしい。
どうしたものか…途中で逃げる?
「レーナさん」
「は、はい!」
悪だくみをしているところカルラが突然耳元でささやいた。
「最後までよろしくお願いしますね」
「…はい」
逃げられる気がしない。
空が青いな…そんな現実逃避に興じたお昼でしたとさ。




