それぞれの戦い
~レフィアside~
魔力で翼からこぼれた羽根を操り迫りくる魔物を葬っていく。
数こそ多いが魔物達は全体的に下級のものしかおらず、なんとか対処ができている。
「レフィアちゃん強いな!さすが聖女様のお付だ」
「いえ…私なんてただの役立たずですよ」
討伐隊の方が魔物を切り裂く。
最初は絶望に包まれていたがご主人様のおかげで皆の士気も高く善戦できている。
というよりこんなただの下級魔物の群れが相手ならもともと何とかなるのだ…問題はご主人様が相手している魔物のほうだ。
「またまた~しかしレフィアちゃんが天使族だったとはなぁ…翼隠してたし髪も肌色も違うからわかんなかったぜ」
「ほんとほんと…魔術の扱いに長けている天使族のレフィアちゃんに聖女様。負ける道理はないってな!」
「…えぇそうですね」
そう簡単に事が運んでくれればいいんですけどね…。
なぜだか胸騒ぎがする。
今すぐご主人様のもとに駆け付けたいし、そもそも最初からついて行きたかった…でも足手まといになるということは私自身が一番よくわかっているから行けなかった。
私の力は魔物や邪悪な存在にはほとんど通用しない…綺麗なものを汚すことしかできない、大切な人を助ける事さえできない役立たずだ。
だからせめて、与えられた仕事はこなそう。村人たちはみんな守り抜いてみせる。
そう拳を握りしめていた時、後方から叫び声が聞こえた。
「伝令!物見やぐらのほうから報告があった!聖女様が相手していた魔物がもう一体発見されたらしい!」
「なんだって!?」
「現在、聖女様が交戦中だが状況が好ましくないらしい!」
そんな!ご主人様っ!
私は一転、パニックに囚われてしまった。落ち着け!落ち着くのよ…ご主人様なら大丈夫…あの人は何物にも汚せないのだから…。
「さらに報告!魔物の第二波が確認された!もう少しでこちらと接敵するぞ!」
「くそっ!どうなってるんだ一体!」
確かに明らかにおかしい、何か魔物を引き寄せてるものでもあるの…?
でも今はそんなこと考えている場合じゃない。
「皆さん落ち着きましょう…私たちのやることは変わらないはずです。魔物を倒して避難経路を確保する…それだけです。」
「そうだな…しかしレフィアちゃんも顔色悪いぜ?大丈夫か」
顔色…悪いだろうか?
じぶんの顔を意味もなくぺたぺたと触ってしまう。
「ずっとレフィアちゃんには頑張ってもらってるし少し休憩をとったらどうだ?」
「できればそうしたいところですが、そんな余裕はないでしょうね」
もうここからでも足音が聞こえるほど魔物の大群は近づいてきている。
先ほどまでより多いかもしれない…これは少しだけまずいかもしれない…。
私だけなら何とかなると思いますがここにいる全員が生存となると可能性はぐっと低くなる。
それに今は余剰戦力がない総力戦だ。
一匹でも抜かれてしまうと後ろにいる非戦闘員から間違いなく犠牲者が出てしまうだろう。
そんなの絶対ご主人様は許さない。
「私も覚悟を決めなければ…」
討伐隊の皆さんも危険を肌で感じているらしく、皆無言で武器を握りしめている。
そして魔物の大群がその姿を見せた。
予想していたより倍は数がいるかもしれない。
「行くぞお前ら!」
ギルド長が大声をあげた。
「この後ろには俺たちの家族がいる!友がいる!恋人がいる!わかってるんだろうな!!」
「当たり前だ!」
「それに聖女様がたった一人でヤバいのを俺たちのために身体張って相手してくれてるんだ!俺たちがダサい姿晒すわけにはいかねえ!そうだろ!?」
「「うおおおおおおお!!!!」」
魔物の大群はもう目前、私も覚悟を決める。
「いくぞおおおおおお!!!!」
そして私たちは生き残るための戦いに身を投じた。
~???side~
想定外の事態が起こった。
なぜ「あの子」がここに…?私が見た未来ではこんなところにいないはずだった。
でも現に今「あの子」はそこにいてレーナがかばいながら魔王因子に侵された魔物と交戦している。
おそらく状況的に見てレーナではあの魔物には勝てない…いや勝てるかもしれないが確率は絶望的だろう…ここで「あの子」を失うわけにはいかない。
私は少しばかり手を出すことにした。
しかし私は魔王の因子を持った魔物に対して対抗する手段がとある理由によってない…ならばできることは…。
自分の力を使い、少しだけ世界の様子を覗き見る。
他人のため、誰かのためにとその身を犠牲にしても戦い続けるレーナ。
自分達の村を守るために剣をとる村人たち。
あぁ私は何をしているんだろうか…必死に生きようとする彼らに私は手を伸ばすことさえできない。
計画に支障が出るから、そんな理由がなければ動けないこの身が呪わしい。
でもこれが私に与えられた罰というのなら、それは甘すぎるものなのだろう…。
視界の隅に小さな子供が映る。
それは私が産んだ、ただ犠牲になるためだけの哀れな命。
そこから目をそらして、私は何がしたいのだろうか…?
「今は自問自答している場合じゃありませんでしたね…あぁ見つけました。」
私は時空の壁を通り抜け、目的の人…勇者たちの前に降り立った。
~勇者side~
三本目の聖剣を無事に回収したのち、四本目の聖剣の手がかりを求めて滞在していた町で突如としてそれは舞い込んできた。
近くの森で魔物が大量発生したらしいく、町は慌ただしくなっていた。
すぐさま討伐隊が組まれ、近隣のギルドにも救援要請がなされるなど大慌てだ。
最初は遠慮されたが自分たちも協力を申し出た。
「大量の魔物なぁ…こりゃあ一筋縄じゃいかんかもしれんなぁ」
「んだよおっさん。びびってんのか?」
「そんなわけあるか、俺を誰だと思ってる。幾たびの戦場を生き延びた漢だぞ?」
「そこの男ども!無駄口叩かないで準備しなさいよ!」
「してるわ!ナリアこそそいつは使いこなせるのかよ」
レーヴェがナリアの背中を指さした。
そこには一本の剣が携えられていた。
「もちろんですわ!あなたこそ大丈夫なんですの?」
「さぁな、使ってみるまでわかるかよ」
レーヴェの背中にも一本の剣が光を放っていた。
「まぁしかし…よく自分から手伝うなんて言ったなカルラ」
「うっ…ダメでしたか…?」
クロガネさんに言われてしまったがこの戦いには話を聞いてすぐに自分が勝手に志願したのだ。
少し皆には申し訳ないという気持ちを抱いていますですはい。
「いいや?ただお前さんも成長したんだなぁとオジサンは感慨深くなっただけさ」
「えぇ…」
まるで子供扱いだ…いやクロガネさんとはそれくらいの年齢差はあるんだけどもさ…。
「まぁでも実際驚いたぜ、旅に出たばっかのお前なら絶対自分からは言わなかったろ?」
「ですわね、最近急に勇者らしくなってきたじゃないカルラ」
皆が自分を見つめて「うんうん」とうなずいている。
すっごい成長を見守られていた…恥ずかしい…。いやでもまぁね…。
「ただ自分は…レーナさんならきっとそうしたろうなって思っただけなので」
そう、ただそれだけなのだ。
きっとレーナさんなら考える間もなく魔物の討伐に乗り出しただろう。
だから自分もと…そう思っただけなのだ。
「それは間違いありませんわね!お姉さまは素晴らしい人ですから!」
「素晴らしいかはともかく先生ならやるだろうなぁ…」
「うんうん」と三人で頷く。
「お嬢ちゃんな…しかしあんまり無条件に信用しすぎるなよ。俺も悪人だとは思いたくないが、あのお嬢ちゃんには不可解な点が多いのも事実だ。そこはお前らも思ってる事だろう?」
クロガネさんが言ったその言葉に自分の中の小さな疑惑が刺激される。
今はクロガネさんが悪役を演じてくれたが、みんなどこかでレーナさんを疑ってるのも事実なのだろう。
絶対に悪人じゃない…そう言い切りたいけれど100パーセント信用するには少しだけ疑惑が残る。
そんな感じ。
でも自分はあの人を信じたい。だから強くなってあの人ともう一度…。
「探しましたよ、勇者さん」
突然後ろから声をかけられた。
振り向くといつからそこにいたのかすごく美人なお姉さんが立っていた。
とにかく美しくて現実感がない女性…レーナさんもかなりの美人だがそれとは質が違った。
レーナさんが絶世の美人だとすれば、この人は人外の美だ。
この世界にはありえないような…すべてが完成された美…そんな印象を受けた。
そして何よりその大きすぎる一部分が、自分の中の「私」の劣等感を少しだけ煽った。ちなみに「俺」の部分は眼をそむけた。
まぁとにかく女性に突然声をかけられたわけで…。
「あの…?」
「説明してる時間はありません。私と一緒に来てください」
女性に手を掴まれる。
そんなあまりにも突然の出来事だが、なぜかこの人のやることだから大丈夫だろうと思った。
「あなた達も掴まってください」
女性がクロガネさん達にも手を握るように促す。
「あ、ああわかった」
「あの…ところで来てくださいって、どこに…?」
「今、あなた達の助けを必要としている人がいます。私にできるのはそこに導くことだけ…お願い…どうか_」
瞬間、視界が一瞬だけ暗転した。
そして次に光が戻った時には自分たちはどこかの森の中にいた。
あの女性の姿はない。
「ここは…?」
「おい!アレを見ろ!」
クロガネさんが指さした先、そこで大規模な戦いが行われていた。
大勢の人が圧倒的数の魔物と戦っていた。
「まさかここ…例の魔物が大量発生してるって場所ですの!?」
「まじかよ!ぼさっとしてる場合じゃないぞおい!」
皆が武器を構えた。
「どうする、行くかカルラ?」
「…はい。行きましょう!」
自分も以前立ち寄った街で仕入れた、特別な製法で作られた魔法剣を構える。
耳には先ほどの女性の言葉が残っていた。
お願い…どうか、みんなを助けて…




