準備開始と存在核
記憶を取り戻して早数日
村でいろいろ調べたがどうやらこの世界はあのゲームの世界と見て間違いない
ならばと私はやることをまとめた
まず第一に力をつけること
最終目的はこの物語の結末を変えることだ。ならば必然と魔物がはびこる外に冒険の旅に出ないといけないわけで…となると必要なのはやはり力
なんとかして自分を鍛えなくてはならない。とここで重要になってくるのが「存在核」と言われるものだ。
これはいわゆる魂でありこの世界の生き物には全て備わっているものだ。
そしてこれに情報を刻むことで成長できる…説明が難しいがつまり人が経験したことはこの存在核というものに情報が刻まれ、完全に定着すると技術として身につく
つまり前世での「調べる、聞く」→「実践する」というものをわかりやすくしたものである。
だが大半の人間はこれの存在を知らない
知らずのうちに自ら存在核に情報を刻んでいるのだ。ゲームでは勇者一行は女神様の加護によりこれの存在を知っていてゲーム上ではスキルツリーのようなものとして扱われていた
そして私はすでに存在を知っているからなのかこの存在核を知覚することができていたのだ。
ならば話は早い
そこにあるのがわかるのなら扱うこともできる…私は村にある魔法について記された本を読み漁り、魔法の術式を片っ端から存在核に刻んでいった
だがすぐに私はある壁にぶち当たったのだが…ここでいう事ではないしくよくよしていられないので次に進むことにした
そもそもゲームの結末を変えるために何をすればいいかだが…実は方法ももう考えてある
ずばり
勇者より先に聖剣を手に入れる
これに尽きる
私の目的にあの聖剣は必要不可欠…ゆえにそれを目的に行動するべきだ
つまりまずは剣を扱えるようにならないといけない
身体を鍛えながら剣を練習…というわけで村には書置きを残しパパが朝、職場に行く馬車に忍び込んだ
そしてたどり着いた騎士団の鍛錬場
そこに颯爽と登場する私!!
「レーナ!?なんでここに!」
「ついてきちゃった!パパに会いたくて!」
義娘スマイル前回!
「お!なんすか団長の娘さんですか?」
「なんとあの噂の!」
「どれどれ」
あっという間に大柄な騎士の皆さんに囲まれる私
「はじめまして!レーナです!パパがいつもおせわになってましゅ!」
ぺこりと子供らしくお辞儀をする
「おぉ~かわいい!」
「確かに!」
がやがやと私を囲んでの話がはじまる
ふふふ
これでもはやパパも私を追及できまいて
そしてはじまる訓練
しれっと私も混じる
「えい!えい!」
「お~いい太刀筋だ!」
「えへへ!えい!えい!」
あくまで無邪気に遊んでる風を装いつつガチで訓練に励む
「…レーナ。そこはもう少し腰を入れて振るといいぞ」
「うん!」
何かを察してくれたのかパパもアドバイスをしてくれるようになった
本当の娘じゃない私の事を愛情たっぷりに育ててくれたことを私は知っている
だから大好きなのだ
それから10年
「ふっ…!」
私の剣が騎士の人の胴をとらえる
「うわぁ!…くっそ~もうレーナちゃんには歯が立たねぇなぁ」
「あはは、偶然偶然」
私は17歳になっていた
だいぶ剣技も身についたし魔法もだいぶ覚えた
我ながら今の私ってかなり強いのではないだろうか。
「いやしかしホント強くなったよなぁ…新人共はもちろん古参もレーナちゃんにはかなわんし…これはもう次期団長は決まったようなもんじゃね」
「レーナは騎士じゃないだろう。無理だ」
「団長はお堅いねぇ~」
「あはは!パパの言う通りだよ~…それに私はどっちにしろ騎士にはならないし」
「ありゃそうなのか…てっきりそのために鍛えてるとばかり…じゃあ何になりたいんだ?」
「ふふふ私はね冒険の旅に出たいのだ!」
「そんなこと許さん!」
ガン!とパパが剣を地面にたたきつけた
辺りに静寂が訪れる
まぁ正直こうなるだろうなぁとは思っていた
今、外の世界は大変なことになっている。長年封印されていた魔王竜が復活しかかっているのだ
それに伴い各地でも異常な現象が目撃されたり魔物が狂暴化したりしているのだ
それでも私は行かなくてはいけない
それが今私が生きている意味だから
「私は行くよ」
「お前は今外がどれだけ危険か!」
「わかってるよパパ。でも私は行く」
「どうしてだ!」
「それが私のやりたいことだから。外の世界を見てみたい、冒険してみたい…何か私にできることをしたい。」
「なら今じゃなくてもいいはずだ!もうじき女神の信託が下る!そうすれば勇者が現れて平和になるんだ!それからでも遅くないだろう!」
それじゃあ遅い
あの私が許せない結末が訪れてしまう
「ううん今だからこそ行きたいの。」
「決意は変わらないのか」
まっすぐとパパの瞳を見つめる
「うん」
「勝手にしろ!俺はもう知らん!」
「ちょっと団長!」
パパはそのままどこかに行ってしまった
そして数日後、私は荷物をまとめた
今日から私の物語が始まる
絶対にあの結末を変えてみせる…パパと喧嘩したままなのが気がかりだけどね…もっとうまいやり方があったのかな…
「行こう」
私が一歩を踏み出そうとしたその時
「待てレーナ」
「…パパ?」
パパがいた
私を待っていたのだろうか
「これを持っていけ」
何かを投げわたされた。それは回復薬の詰め合わせと…お守り
「これって…」
「お前は俺の娘だ。お前の帰る場所は俺がずっと守る…だからちゃんと生きて帰ってこい」
不覚にも泣きそうになってしまった
愛されてるとわかってたはずなのに…本当に私は愛されていたんだと認識して
「うん!行ってくるね!」
そのまま涙を拭いパパに背を向けて歩き出した
ごめんねパパ
私はきっとその約束は守れない
それが私のやろうとしていることなんだから