表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/44

踏み出した一歩

もう少し浅いと思って、地面をぶち抜いたのだけれど予想以上に深くてびっくりした。

カルラには悪いことをしたかもしれない。

しかし気にしない!


「あいててて…レーナさん、ここは…?」

「ん~二本目の聖剣が置いてあるところ?」


「うぇえ!?」

「ま、行きましょう。」


とりあえず二人ですたすたと歩く。

なんかやけに広いなここ~ダンジョンではなかったはずだけど…

少し雑談でもしながら聖剣を探すことにするか~


「そういえば皆は何と戦ってたの?」

「あぁ~え~と…レーナさんのおかげでここに入れた後、ここの一番偉い人に声をかけられて…それで何故か戦いになりまして~…」


なるほどね、いきなりアウス公に遭遇してしまったわけだ。


「それから?」

「それからはなんか頭の中に「魔王の因子」とかいうやつの情報が急に入ってきたりして困惑したり…何とか逃げ切って町の人にかくまってもらって話を聞いたりして…」


「ふむふむ。」

「そしてやっぱ戦うしかないって話になって皆で偉い人のところに行こうとしてたところでレーナさんに会って…て感じです。」


だいぶ端折られた気がしなくもないがだいたいの事情は分かった。

やはり今の目的はアウス公の撃破ということでいいようだ。


とりあえずはさっさと聖剣を抜いてしまうことにしよう。


「レーナさんは今まで何してたんですか?」

「ん?寝てた。」


「ええ…心配してたのに…」

「あはっはっは、ごめんごめん。」


「なんていうか…レーナさんは強いですよね。」


カルラが急にそんなことを言い出した。


「どうしたの?急に。」

「いや…自分と比べるとレーナさんってすごい堂々としてるし、戦いでも冷静だしで…なんだか自分よりも勇者らしいやって思っちゃって…というかなんで自分が勇者なんてなっちゃったんだろう。」


いつもの弱気発言…とは少し違うようだった。

ずっと心に溜めてたもの、それが漏れてしまった感じなのだろう。

そうだよね、今まで普通に生活してたのに突然勇者だって言われて、旅して魔物と戦って…いろいろと大変だよね。

でも私はあなたを知ってるから、勇者はあなたしかいないんだって思うから。


「私はさ、強くなんかないの…自分勝手なだけだよ。カルラはさどうして勇者になったの?」

「…え?それは…勇者だって言われたから…」


「本当にそれだけ?言われたから勇者になったの?」

「言われたら…やるしかないじゃないですか…」


「そう?私は誰に言われたって嫌な事だったら逃げちゃうなぁ。」

「もし、もしもレーナさんが勇者に選ばれたとしたら…逃げたんですか?」


「逃げたね。そりゃあもう華麗なフォームで走り去ったね。」

「…想像できないなぁ。」


でも正直な話、もし私が何も知らないレーナだったとして。

勇者に選ばれたとしたら間違いなく逃げると思うのだ。

だって怖いじゃない。

今私がこうしているのはひとえに前世の記憶があるから、そして結末を変えたいという思いがあるからに他ならない。


ならばこそ、本当に言われたからって理由だけで勇者になった。

そう語るほど内気な人間が、本当にそれだけの理由で勇者になれるのだろうか?答えは否だ。

でもそんなのはゲームを知ってる私の勝手な思い込みかもしれない。

ここは現実なのだから。

だからカルラには自分で気づいてもらいたいのだ…いや受け入れて欲しいのだ、勇者になったその理由を。


「あはは、ねえカルラ?もう少しだけよく考えてみなよ。自分が今ここにいる理由をさ」

「・・・」


それからさらに数分ほど歩いただろうか、ついに私たちの前に聖剣が姿を見せた。

もうやはりお決まりというか、豪華な台座のようなものに突き刺さっている。

ここには特に門番などはいないようだ。


「カルラ」

「はい?」


「いや、はいじゃなくて。ほら聖剣だよ。」

「うぇ!?自分がとるんですか?」


「当たり前じゃん、勇者でしょうあなた。」

「…泥棒さんに言われても。」


「だまらっしゃい、ほらさっさと引きぬく。」

「はい…」


カルラが台座に近づき、聖剣の柄に手をかける。


「ん?」


しかし何やら首を傾げている。

どうかしたのだろうか?


「どしたの?」

「いや、思ったより硬くて…ふぬぬぬぬぬ!」


だいぶ力を入れている。がたがたと聖剣が揺れているがそんなに深く刺さっているのだろうか?

私の時はあっさりと抜けたものだが…

とか思っていると鈍い音がして聖剣が抜けた。


「おぉ~おめでとう。」

「あぁはい…ありがとうございます。」


とても重要なイベントのはずだが今一つ盛り上がらない感じだ。


「どう?何か聖剣から流れ込んでくる感じする?」

「いや…何もないですね。」


あら?次は三本目の聖剣の場所とか流れ込んでくるはずなんだけど…まさか偽物?

いや、私の聖剣が反応してるし本物で間違いない。

じゃあなんだろう?わからない。


でも目的の物は手に入れた。

三本目の場所は最悪、私のゲーム知識のお披露目で何とかなるだろう。


カルラと二人で来た道を戻る。


「あの…疑問なんですがなんでこんなところに聖剣があったんですかね?自分たちを襲ってきた人は勇者を危険視してたみたいですし、こんなに簡単に手に入るのかなって…」

「ん~知らなかったとかじゃない?ここは見た感じだいぶ昔に作られた場所っぽいし、今の人たちはここに聖剣があることを知らなかったのかも。」


さも今思いついた風に語っているが当然ゲーム知識である。


「なるほど…ところでこれ本当に自分が持ってていいんでしょうか…レーナさんが持ってたほうがいいんじゃ…」

「なんでよ、私はこの一本だけしかいらないって前に言ったでしょう?」


これはさすがに重症かもしれない。

カルラってゲームでもここまで弱気だったっけ…?いや違う。

これはきっと私が関わっているせいだ。

自分の都合で物語を捻じ曲げようとしてるそのしわ寄せだ。


ならば私がとるべき行動は…


「あのねカルラ…っ!」

「え…っ」


私はとっさにカルラを突き飛ばした。

なにかとてつもない気配を感じたのだ。


瞬間さっきまで私たちがいた場所を大きな爆発が襲った。


「ぐぅぅぅ…!」

「レーナさん!」


一応逃げることはできたが少しだけ巻き込まれてしまった。

ちょっと…いやかなり痛い。


でもなんとか立ち上がることはできる。

気合いだよ気合!


「大丈夫大丈夫…それよりなんか来ちゃったね」


上を見上げるとそこには風穴があいていた。

そして…上からふわりと人が降りてきた。

なんというか…優男風の貴族の男といった感じだろうか?歳はそこそこ上に見えるが…


「あの人はさっきの…!」

「あぁ、じゃああの人がアウス公ね。」

「探したぞ勇者よ…今度こそその命をもらい受ける。」


あらまぁ実にテンプレなセリフだ。

突然のボス戦だがどうなることやら…

と、背後からさらに気配が。

それも一体や二体じゃない…かなりの数だ。


振り向きたくはないが振り向く。


「あ~やっぱ見なければよかった。」


それは視界を埋め尽くすような大量の魔物。


「勇者は必ずここで殺す。ならばこそ必勝の策をとらせてもらった。」

「そ、そんな…」


これは確かに絶体絶命だ。

正直詰んでいる。

だが、まだ希望はある。

どちらにせよ私はこんなところで死ぬわけにはいかないのだ。


「ねえカルラ」

「は、はい…」


「後ろの魔物は私が外まで連れていく。だからあなたはアウス公を相手して。」

「え…そんなの!」


「やるしかないの、じゃないと私たちの物語はここで終わりよ。」

「でもレーナさん!あんなにたくさんの魔物を一人でなんて相手できるわけない!」


そう、あなたは自分がアウス公と一人で戦うことじゃなくて…私の心配をした。

それがあなたが勇者である理由。

だからもう一度、私は問いかける。


「カルラ、あなたはどうして勇者になったの?」

「じ、自分は…」


「ただ言われたからって勇者になんてなれない。そこにあなたが勇者になった理由があるはずだから。」

「自分は…ただ…」


「ただ?」

「ただ…ほんの少しだけ…こんな「自分を受け入れてくれた」皆が少しでも幸せで暮らしていけるならって…そんな…」


「そう、立派な理由があるじゃない。」

「立派なんかじゃない…こんなの誰でも思うことで…」


「ううん。確かに誰でも少しは考えることかもしれない…でもね、あなたは一歩を踏み出した。誰かのためにって勇者になった。そんなあなたはきっと誰よりも強い勇者になれるから…だからもう一歩、私が押してあげる。」


トン、とカルラの背中を押す。

瞬間、天井が崩れて私とカルラを分断した。


「レーナさん!」

「怖いなら逃げればいい。嫌ならやらなければいい。辛いならやめればいい。それで誰も責められはしない…でもあなたはきっと前に進むから、ならせめて自分を受け入れてあげて。大丈夫、あなたは誰より強くてかっこいい勇者様になることを私は知ってるから。」


「自分は…」

「「自分」なんて言葉に逃げないで。きっと世界はあなたが思っている以上に優しいから…きっと大丈夫。」


以前の私に夢と希望をくれたのは間違いなくあなただから。

もしこの気持ちが伝わらないとしても、それでも_


背後で魔物達の咆哮が轟く。

どうやら時間切れらしい、私は聖剣を構え魔物の群れに向かっていった。

私は信じている、みんなを、勇者を。

これは絶望に向かう道じゃない。

未来を切り開く一歩のはずだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ