聖剣求めて地下に
「んあ…?」
目を覚ますとなにやらふかふかのベッドで寝ていた。
んん~すっごい気持ちぃ~なにこれ~もうひと眠りしちゃおっかな~
「じゃねえよ!なんで寝てるの私!?」
布団君の誘惑を断ち切り慌てて起き上がる。
「え~と何してたんだっけ私…」
なぜか記憶が曖昧だ。
確か外で出会ったクロリスさんという人にご飯に誘われて…そこで寝ちゃった…?
「嘘でしょう…カルラたちはどうしてるのかな…早くいかないと」
身だしなみを最低限整え、部屋を出る
そこで恰幅のいい女性…たぶんここの女将さんてきな人かな?がいた
「あら、起きたのかい」
「あぁはい!お世話になりました!」
「はいはい、なんだか顔色も良くなったねお嬢ちゃん」
「え?」
言われてみれば確かに、なんだかすごく気分がいい。
いままでずっと不調気味だったが身体がとても軽い
なんでだろう?いいお布団で寝たからかなぁ?
あ、そうだ
「あの、私と一緒に女性がいませんでしたか?」
「ん?あぁあの人ならお代払って帰ったよ。あんたのこと頼むってさ」
「帰った?どこに?」
「さぁね…外は危ないって一応伝えておいたんだけどねぇ。大丈夫ですの一点張りだったからさ…見かけない顔だったからこのあたりの人間じゃないのは確かだね」
それはかなり心配かもしれない。
ただならぬ雰囲気のお姉さんだったが戦えそうには思えない。
探してみたほうがいいかもしれない
しかし私は女将さんの次の言葉に驚愕することになった
「いやそれにしてもあんた大丈夫だったのかい?まる二日も寝たっきりだったけども」
「え!?二日!!?」
そんなに寝ちゃってたの!?
やばい、もうゲームのイベントはだいぶ進んじゃってるんじゃ!?
クロリスさんも外に出てたらもうさすがに追い付けないだろうし…
「なんでそんなに寝ちゃったんだろう…」
「疲れてたんじゃないのかい?いちおう一緒だった人が病気ではないですって言ってたから放っておいたけどさ…あぁでもよかったかもね。もうじきこの国も元に戻るだろうし」
女将さんが随分と意味深なことを言った
「もとに?」
「あぁ…あんたは外から来たから知らないか。外からどう見られてたかはしらないけどもさ。この国はここ数年本当に酷いもんだったよ…街中を魔物が我が物顔で歩いてさ、外から来た人はみんな食べられちまうしあたしたちも外に出ることを禁じられた。税金もやたら高くなるし、おまけに魔物どももこうして家に引きこもってるときは何もしてこないけど外に出てあいつらと目が合えば襲われちまう…地獄だったよここは」
やはりゲームの設定どおりの展開そのまんまだ
ということはだ、今カルラたちが健闘中ということだろうか
「元に戻るって言うのは?」
「勇者様達が来たんだよ。今魔物たちと戦ってくれてるのさ…きっとこのままこの国を救ってくださるはずさ」
そう語る女将さんの顔は…なんだか複雑そうな表情を浮かべていた
「その割にはあんまり嬉しそうじゃないですね?」
「いや嬉しいよ…嬉しいんだけどさ…アウス様も終わりなんかねと思ってさ」
アウス様…その名前は確か
「この国の一番偉い人でしたっけ?アウス公」
「あぁそうさね。とってもいい人だったんだよ…毎日忙しい癖に下町にまで降りていって農作業とかいっしょになってやったり、子供たちと遊んだりしてさ」
「おぉ…それはなんだか奔放なひとですね?」
「あはっはっは!そうだねぇ。貧乏だったり急な出費だったりで税金が払えない家があるとさそこの若い娘を城に連れ帰っちまうような男だったさ」
「えぇ…最低じゃないですか…」
「いやいや、別に何もされないんだよ。ただ少しだけ働かせてくれるだけさ…家事とかでね」
おぉ~それはなんというか?
まぁとにかく国民から愛されてた人だったみたいね
「でもそれがある日からおかしくなっていってね…いつも不安そうにうつむくようになって、そんな人じゃなかったのに暴言を吐いたり、国民に手を上げたり…挙句の果てにどこから連れてきたのか国に魔物をいれたりして…このありさまさ」
女将さんはとても悲しそうだった。
「だからこそ、きっと勇者様達はアウス様を殺しちまうんだろう?それがなんだか悲しくてね…やりきれないねぇこういうのはさ」
「…そうですね」
かつて国民から愛されていた現在の暴虐の王
はたしてそれは倒されるべき悪なのかそれとも…
ま、そこに答えを出すのは私の仕事じゃない
私はただの聖剣泥棒だからね。
さて、それじゃあ私も自分のやることをやるとしますか
「お話聞かせてくれてありがとうございました。そろそろ行きますね」
「もう少しいてもいいんだよ?まだ魔物はいるからね…というより戦いに巻き込まれたら事だよ」
「お気遣いありがとうございます。でも行かないとなので、では!」
宿の外に出ると確かに遠くで戦闘が行われているような感じがした。
あ、今光ったね
おぉ~今度は爆発した
激しくやっているようだ。みんなここに来るまでかなり強くなったし、負けることは無いだろう。
なので私は先に二本目の聖剣を回収することにしようっと…一応言っておくけど今度は盗まないからね!ちゃんとカルラに渡しますから!
さすがにうろ覚えなのだが自分の記憶と、私が持つ聖剣からのイメージでなんとなくの場所はわかる。
あの正面に見える大きなお城の近くにある神殿
そこに誰も知らない地下室がありそこに聖剣は刺さっているのだ。
確か魔王の因子にとりつかれたアウス公との戦いで地面が崩落し、偶然見つかるとかだった気がする
というわけで目指すは神殿!
ごーごー!
猛ダッシュで神殿まで走るがなるほど確かに、魔物がすごいっぱいいる
まぁしかし雑魚ばかりなので適当に切り倒しながら進む
「うわぁああ!誰かぁ!」
そこで聞こえる誰かの悲鳴
はいはい~今行きますよ~っと
なんで外に出たのか数人の国民が魔物に襲われていた。
少し距離があったのでお得意の雷魔法で一掃…したかったが腕が悪いので一匹残ってしまった。
なので普通に走って普通に斬った
「無事ですか?」
「あぁ…!おかげさまで助かりました!あなた様が勇者様でしょうか…」
え…まさか勇者と間違えられるとは思わなかった。
一応人相書きやらで勇者パーティの顔は出回ってるはずなんだけど…
「私は勇者じゃないですよ。通りすがりの…え~と…まぁそんな感じです」
まさか聖剣泥棒とは言えず、言葉を濁してしまった
まぁいいだろう。しょせん私なんて物語には関係ない一般の村娘だ
すぐに忘れられるでしょう。
というわけで颯爽と走り去る。
お?あれが神殿かな?
少し離れた場所に白く豪華な建物が見えた。よっしゃ突撃…
なぜか突然、人が真横からふっ飛んできた
慌てて受け止めたその人は…
「ええ!?カルラ!?」
「っっ…んえ?レーナさん!?」
なんで横からカルラが飛んでくるのよ?
とんできた方向を見ると向こうのほうに他の三人の姿も見えた
「おーい!みんな~!何してるの~~~?」
とりあえず大声で話しかけてみた
「!?先生か!いままでどこ行ってたんだよ!」
「心配したんですよお姉さま!」
「いやぁごめんね!いろいろ手間取っちゃって!」
そして鳴り響く爆発音
「ぐおおおおお!?お前さん達とりあえず話は後にしてこいつをどうにかせんか!?」
クロガネさんはやっぱり一人で何かを受け止めて頑張っているらしい
いつもお疲れ様です。
どうやら何かと交戦中にカルラは吹っ飛ばされてしまったらしい。
強くなったはずなんだけどまだまだなのかな?う~ん
「カルラ立てる?」
「あっはい、大丈夫です」
「よしっんじゃ少し加勢に…」
ドゴーンと派手な音を立てて目の前の建物が倒壊した
これは向こうに行くの少しめんどくさいかもしれない。
「カルラ!先生!大丈夫か!?」
「大丈夫~ケガはないよ~!」
しかしこれはどうしたものか…よし、先に聖剣を回収しよう。そのほうがたぶん早い
「みんなごめん!私とカルラは別方向から行くからもう少し頑張ってて!」
「了解ですわ~!」
「なるべく早く頼んだぞ~!」
「よしっじゃあ行くよカルラ」
「あ、はい…どこに?」
「あの神殿」
「神殿…?」
カルラの手を引いて神殿まで行く。
中は外と違ってほぼほぼ荒らされていなかった。
やっぱ魔物も神殿には近づきにくいのかな?もしくは聖剣の影響?
私はとりあえず神殿の中央まで進むと聖剣を突き刺し、地属性の魔法を聖剣に付与
そしてその能力を発動させる。
瞬間崩れる地面
「ええええええええ!?レーナさん!?」
「し~っ!ばれたらどうするの!」
「いやバレるとかじゃなくて何やって!?」
「すぐわかるよ!」
狙い通りに地面に穴をあけることはできたのだが…誤算は地下が思ったより深かったことだった。




