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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太




 で。俺一人で作ってもいいんだけど。大変だしめんどくさいからまずは武藤を召喚。


 「なんであたしなの?藤ノ木でいいじゃん」

 「あいつに勉強以外の能力があると思ってんの?ねぇよなんにも」

 「…それ、友達に言うこと?」

 「友達じゃない。戦友」

 「一緒でしょ。で、何したらいいの?てか、あんたの城に入ってもいいの?」


 台所に人を入れたくないのは余計なことをされて汚されるのが嫌だから。

 その点、武藤は必要なことしかしなさそうだから大丈夫だろう。それに作りすぎた料理はタッパーに詰めて持って帰ってもらえる。


 「料理経験は?」

 「まぁ、一人暮らしで困らない程度には」

 「へー、自炊とかすんの」

 「してると思ったから呼んだんじゃないの?」

 「まーね。まずは、買い出し」

 「そこからぁ!?あたしそんな体力ないよ」

 

 今回の趣旨を伝えているから大量の買い物リストを脳内に浮かべたのだろう。何も一人では行かせない。便利な男を召喚しているからな。


 「村尾と一緒に行ってきて」

 「げっ。あいつも来んの?二人きりは嫌だから藤ノ木借りてもいい?」

 「いいけど空気だぞ?いてもいなくても…」

 「だからそれ、友達に言う?」

 「友達じゃねぇって」


 さっさと買ってきてほしいから村尾は待たずに二人を家から追い出した。

 しんと静まり返った我が家が、なんだか自分の家ではないような複雑な気持ちになる。俺はほぼ一人っ子で、家にいる時は部屋にこもって勉強することも多かったから、静寂が苦手という訳ではない。

 ただ、ワイワイ過ごした時間が長かったから、急に静まり返った空間に慣れていないだけ。いてもいなくても変わらないと思っていた優がいないと、こんなにも静かなのか。いてもいなくても、同じなのに。


 

 静寂を掻き消すように調味料を選抜して、可能な限り合わせ調味料を準備する。

 一人で黙々と集中するのがこんなに虚しいなんて、知らなかったよ。






 「まじで、人使い、荒すぎ」


 ゼェハァゼェハァと息を切らして玄関に傾れ込んだ村尾は、まるで真夏日にマラソンをしたかのような様子だった。

 学校帰りに直接スーパーへ行ってもらったから制服姿で、スクールバッグにしているリュックサックがパンパンに膨らんでいる。

 自分の荷物だけでも重そうなのに、大きなレジ袋を三個も持っていたらしい。村尾とともに玄関に転がっている。


 「あいつらは?」

 「ゲェ…ゲェ…暑いからって、そこの公園でアイス食べてる…はぁ、死ぬかと思った」

 「村尾も休んでくればよかったのに」

 「生物がダメになっちゃうから、走れって言われて…」

 「ドライアイスもらってねーの?」

 「あぁーー。入ってる。やられた!!」

 

 二人にこき使われた村尾を労りながら、静寂が破られたことに安堵した。

 親に置いていかれたことを今更何とも思わないけれど、一人じゃなくてよかったと心の底から思う。


 「冷凍庫のアイスなんでも食べていいから休んでて」

 「やったぁあぁ…。あーっつい。氷水ちょうだーーい。藤ノ木がいつも飲んでるやつ」

 

 村尾はソファーに横たわり、クーラーの風を浴びながら手でパタパタと顔を仰いだ。

 ほとんど水の入っていないコップを手渡し、食材の整理を始める。


 野菜は武藤に切ってもらいたいから置いといて。肉類の下味と、あー、米炊いとくんだった。予想外の静けさに動揺しちゃったなぁ。


 「村尾ー。あんた速すぎ。どんだけガチったの。あたしらがいじめてるみたいじゃん」


 思ったよりも早く、玄関から武藤の声が聞こえた。息遣いからして武藤も走ったらしい。


 「いじめられたぁあーー」

 「いじめてないから!ほんの五分休んでただけなのにやばすぎでしょ」


 家に人がいるって、落ち着くなぁ。


 「藤ノ木はゆっくり歩いてきてるからまだ時間かかりそう。手伝うよ」

 「疲れただろ。休んでろよ」

 「そんなにダッシュしてないから平気。早くしないと…帰ってきちゃうし」


 ハッキリとは言わないが空のことを気にしているらしい。

 空のバイトは22時までだからまだ余裕はある。ゆっくり作っても鉢合わせることはなさそうだけどな。


 「何したらいい?野菜切る?」

 「あぁ、これをこうしてあぁでこうで」

 

 絶対に顔を合わせたくないらしく、テキパキと下拵えをこなしていく武藤。空、めちゃくちゃ嫌われてんな。


 「ねぇ、アカリは?」

 「誘ったけど返事無し」

 「んー、そっか。寝てんのかな」


 

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