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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太

 うちの学校は進学校というだけあって他所より試験が多い。学期末に行われる定期試験のみならず、『週明けテスト』、『月テスト』、『小テスト』、『中テスト』。言い出したらキリがないくらいたくさん。学校の名に恥じないように、偏差値を維持、もしくは向上させるために生徒の学力を逐一試しているのだ。正直面倒くさい。

ならどうしてそんな高校に進学したかというと、他でもない藤ノ木 優を追い抜くため。幼い頃から家族同士の関わりがあり、度々俺たちの将来について語っていたり二人で学力の天下を取ってほしいなんて言われている。

しかし俺から言わせてもらえば天下は一人で十分。俺がなってやるよ。優は後ろで大人しくしてな。

 というわけで。優が進む先が俺の道ってわけだな。ちなみに今まで試験や成績、たくさん乗り越えてきたけどまだ一度も勝てたことがない。だからこそ今、負けるわけにはいかない。


 実は幼馴染は優だけじゃなくてもう一人いる。ほとんど話したことがなかったF組の丹羽 大空。優と同じで小学校からの付き合いだけど顔しか知らないとい言っても過言ではないくらいの浅い関係。小学生の頃は三家族で出かけたり食事したこともあったけれど、空の親が離婚してからはただ同じ学校に通う同級生ってだけ。成績を競う相手ではないし特に魅力もないんだけど。

優に『この際、部活でも誘ってみれば』と言われ、気になりだした。だって小中高と同じなのになんの関わりもなく終わるのって寂しいし?なんか縁があってのことかもしれないじゃん?関わらないという選択肢を選ぶ理由が見つからないから、関わってみる!




 って決めたはいいものの…。どうやら関わり方を間違えたらしい。



「俺が空の立場でも投げるよ」



毎朝、元気よくサッカー部に入ろうと誘っていたら急に黒板消しをぶつけられ真っ白に。意外と凶暴と知って作戦変更の相談中。あくまで優は空の味方だそうだ。


 噂によると空は常に机とにらめっこしている割には力が付いていないんだそう。四月末に行われた月テストの成績が酷かったと教師がぼやいていた。あんなのなぞなぞ程度の問題だったのに、どこを間違えるんだ…?名前を書き忘れて0点とか?徹夜で勉強して試験中居眠りとか?


「広太。傘持ってない?」


 放課後静かに話しかけてきたのは優。学年トップの座に座る者としてもう少し堂々としていてほしいのだけど。昔から地味で眼鏡で根暗な優はとにかく声が小さい。


「折りたたみならあるけど一人用だし」

「うん。広太なら濡れても風邪ひかないよね」

「は?俺が最強って認めたの?貶してんの?」


真面目そうに見えるこいつは意外とこんなんで時々嫌な奴になる。悪意がないオリジナリティ溢れるジョークって分かるから別にいいけどシンプルに嫌われそう。


「雨降るなんて聞いてない」

「坊ちゃんなんだから迎えに来てもらえよ」


仕返しに嫌がることを言えば案の定。めちゃくちゃ睨まれた。俺も自分で言うのはアレだけどそれなりにお坊ちゃん家庭である自覚はある。親は社長だし生活に不自由したことはないから他より裕福なんだと思うけど。それは優だって同じ…いや俺なんかよりもっといいとこの坊ちゃんな気がする。それも俺みたいに自由にのびのびと育てられた余裕のある家族じゃなくて、どちらかというと家庭内での派閥があったり、ギスギスしていそうな環境。三男ということもあって居心地は悪そう。だから家族の話とか将来の話をすると不機嫌になるんだよなぁ。って分かっててやる俺も十分嫌な奴か。


「なー。部活どうする?俺、高校こそは汗も滴るいい男になるって決めてるんだけど。ぶっちゃけ、サッカー部は出遅れた感あって入りにくいんだよなー」

「茶道でもやれば。少しは静かになれるんじゃない」


 抑揚のない口調で冷めたことを言うお前は合唱部や演劇部にでも入ればいいんだ。表現力を身に着けてこい。


「ね、顔に出てる」

「正直なの」


付き合いが長いから思考を読まれるのか、優の言う通り顔に出る程、顔がおしゃべりなのか。別に直す気ないけど。

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