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君がいたから  作者: HRK
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side 夏木 あかり




 「ねぇねぇ!」


 夏休みもいよいよ残すところ三日となった。楽しい楽しい夏休み。みんなで鏡堂の家に泊まるのも終わってしまう。


 「十二月になったら、修学旅行だね!」


 リビングで友達団欒。夏休みが終わる切なさより、先の楽しみを共有したい。


 「十二月って、まだまだじゃん…。その前に学園祭でしょー」


 空と斎藤がバイトでいない時間は私の親友、恭子も団欒に参加してくれる。接触を避けているから二人が仲良くなることはなくて。あわよくば夏休み中にお互いの誤解を解いてもらえたらと思っていたのが、とうとう出来ずじまい。


 「学園祭も楽しみだけど!修学旅行って…お泊まりじゃん!!」

 「あんたたちは今もしてんじゃん」

 「そう言われてみればそうだね」

 

 「えっ…」


 恭子とのやりとりに絶句した村尾はきっとまた、変なことを言うのだろう。


 「俺と夏木ちゃんが…二人で…お泊まり…」


 予想通り、変なことを言う村尾を無視しようと思ったのだけど、内容があまりにも軽視できるものではなかった。


 「二人じゃないよね!?二人きりになれるとしたら私は空を選ぶよ?村尾じゃないよ」

 「空とはクラス違うじゃん…」

 「あっ、そうだった。えっ、じゃあ同じ部屋でトランプしたりできないのかな?空と一緒に観光できないのかな?」

 「うーん、できないんじゃない?中学の時、俺も他クラスに仲良いやついたけど、班行動してたよ」

 「ええ!!…高校生だったら、もっと自由じゃないのかなぁ」

 「望みは薄いんじゃないかな…。だから俺と回ろう!」

 「大丈夫!他の子と回るから!」


 空と同じ班になれなくても恭子が同じクラスだから、何がなんでも同じ班になって美味しいものたくさん食べて、いっぱい写真撮るんだ。村尾は避けても無意味だろうから放置する。私と回らなくたって友達多いんだから楽しめるよね。


 中学の修学旅行や高校受験前のオープンスクールは全部恭子と一緒に回ったから、恭子ナシの学校行事はありえない。

 ありえないけど…。文化祭は一緒に回れそうにない。私が無理に引き合わせようとしたって逆効果なのはよく分かってる。

 修学旅行も、できるならみんなで。


 恭子も斎藤も、空も村尾も鏡堂や藤ノ木も一緒に、たくさんお話してたくさん楽しみたい。


 私は、みんなで楽しめたらいいと思っていただけなんだよ。





 

 夜になり、各々貸してもらっている部屋でまったりした時間を過ごす。

 鏡堂のお父さんが使っていたという大きなベッドに空と二人で眠る至福の時間。


 「空〜」

 「ん?」


 なんとなく甘えたくなって、空の手に触れた。


 名前を呼べば優しく返事をしてくれて、無意味に手を繋いだら握り返してくれる。


 「んふふ。呼んだだけ」

 

 花火大会の日に感じた寂しさを拭うように、今この瞬間を噛み締めたい。

 空は何も悪くないから責める気持ちはないけど、時々不安になるよ。


 『空は、私のこと好き?』



 今は聞けないこの思い。いつか聞かせてね。



 手を繋いだまま眠ったのだと気付いたのは翌朝だった。残暑で暑苦しかっただろうに、解かないでくれた。そういう優しさがどうしてかな、今は心に沁みて涙が出てしまう。


 「アカリ?どうしたの?」

 「んーん。幸せすぎて嬉し涙!」

 「んー?」


 鼻を啜る音で起こしてしまったみたい。

 きっと本当に嬉し涙だ。だって何もないのに泣くなんておかしい。

 まだ眠たいだろうに、優しく笑いかけてくれる人がいる。こんなに嬉しいことはないじゃない?


 

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