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君がいたから  作者: HRK
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side 桑島 香織




 「空さ、夏木と付き合った決め手は?」


 花火大会の日、無断欠勤をした丹羽大空という他校の先輩は今、店長や先輩のフォローで元通り働いている。

 大怪我をして謝りに来た時は驚いたけれど、やっぱり誠実な人だと感じた。


 闇深そうな雰囲気ではあるけれど、わざと誰かを傷付けたり、陥れようとはしない。だからこそ、無断欠勤をしてしまったのは重大な何かが起きたのだと察した。


 「なんで付き合おうと思ったの?俺にくれない?」


 怪我をしているから、夏休み期間は仕込みをメインにシフトを入れることにしたらしい。翔也くんも合わせて仕込みに入っている。私はたくさん稼ぎたくてほぼ毎日いるから二人とはよく会う。


 「アカリは可愛いからねぇ」

 「顔?」

 「んー。それもそうだけど、性格が?」

 「性格可愛いか?学級委員みたいじゃね?」

 「うん。真面目なのも良いところだよね」


 お客さんが来ない時間帯のシフトだから好き放題喋っているのだけど、いつもいつも大空くんの彼女さんの話題だ。そんなに可愛いのだろうか。大空くんは芸能人並みにイケメンだから、彼女さんは相当可愛いのかもしれない。でもそんなうまいこと美男美女カップルが成立するのだろうか…。


 「なんか俺的にはさ、夏木が一方的に好き好き〜って感じなのかなって思ってたの。空もなんだかんだ好きなのな。安心」

 「好きなんだけど、好きってなかなか言えなくない?」

 「えー俺めっちゃ言う」

 「翔也の本命って誰だっけ」

 「アコち」

 「あー」

 「無関心やめてくれる?」

 「いや、そうじゃないんだけど、そうだったなーって」

 「空ってさ、無表情のくせに正直だよな。そのまま夏木に愛の告白したらいいのに」

 「んん、あっちから好きって言われると自然と『俺もだよ』って言うしかできなくない?俺の告白タイムが無い」

 「まー。夏木って空にぞっこんだもんな」

 「本当ありがたいことだよねー」

 

 お通し用の野菜をザクザク切りながらの恋バナ楽しそう。

 私は唐揚げ用の鶏肉を一人黙々と力一杯切っている。仕込みシフトは仲の良い人が近くにいないと孤独を感じる。


 「俺さ、武藤無理なんだよね」

 「あぁ、アカリの親友ね」


 人の悪口を言わない翔也くんが珍しい。彼女さんの親友ってことは女の人なのかな。苦手なタイプ、気になる。


 「あいつなんであんなに空気壊すの?普通に気分悪い」

 「あの子は…アカリの保護者みたいな立ち位置だから、不良と付き合ったことが許せないっていうか、あり得ないって思ってるんじゃないかな」

 「こんな真面目な不良がどこにいんだよ。見た目だけだろ」

 「見た目は性格を語るからね。かと言って俺から歩み寄るとか、俺だってアカリのこと好きだよって伝えようとも思ってないから、根本的に合わないのかも。生理的に無理な人っているじゃん」

 「そりゃ無理な人はいるけどさ。それを態度に出すのはどうなの?無理だわー」


 あからさまに態度に出す人は苦手っと。なかなかこの年代でそんな人いないような気もするけど、大空くんの彼女さんの親友さんはそういう人なんだね。メモメモ。



 「そういや、この後部活行くんだよな」

 「うん。アカリが盛り上がっちゃって」

 「あいつなんもしねぇのに」

 「文化祭の練習しようって」

 「それって鏡堂とかも出んの?」

 「んー、どうだろ。知らない」

 「鏡堂がいたらまじでうるさそう」

 「分かる」


 なんの部活に入っているのかすごく気になる。想像がつかない。空くんは見た目こそチャラチャラしているけれど…明るいタイプではなくて、なんとなく体を動かすのが似合わない。

 直感で運動部ではなさそう。文化祭で活躍する部活ってなんだろう。ダンスとか、吹奏楽とか、…あ、軽音?隅っこでギター弾いてるとか?


 「鏡堂ん家、空くなら俺はあおに会いに行こうかなー」

 「あお?アコじゃなくて?」

 「あおセフレ」

 「あー」

 「アコちは多分会ってくんねーから」

 「なんで?」

 「夏休みにわざわざ会うのはカップルっぽくて嫌なんだとさ」

 「フラれてんの?」

 「フラれてる。花火大会も断られたからバイト入れたんだよね」

 「へえ」

 「でも好きだから諦めない」

 「すご」

 「こう見えて一途なんで」

 「ん?」

 「ん、じゃねぇよ」


 空くんは翔也くんの言う通りすごく正直だ。一途と言いながら早速別の子の元へ行こうとする翔也くんに目線で圧をかけていた。


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