side 夏木 あかり
「だーから!あおはセフレで本命はアコち!ね、アコち可愛いでしょって」
「どっちがどっちか分かんない。同じ顔じゃん」
「目、悪いの?どっからどー見てもアコのが可愛いじゃん」
斎藤が一生懸命、写真を見せながら力説している。
アオだかアコだか知らないけど、空に可愛い子を見せたらなびいちゃうかもしれない。止めたい。
そういえば一年の時からアコちゃんに好き好きって言ってたっけ。
「どれ見せて!」
「どっちが可愛い?こっちだよな?」
「うわー、まじでおんなじ系統なんだね」
「それはどうでもいいんだけどさ。アコが最強に可愛いの」
「好みは人それぞれだからねー」
会話に乱入した村尾には響かなかったみたい。この前、教室の前でイチャイチャしてた子があおちゃんね。あんなに恋人っぽかったのに恋人じゃないなんて人間不信になりそう…。
なんにせよ、私より可愛い子だから空にはあんまり見せないでほしいな…。
「俺は夏木ちゃんみたいな黒髪ロングで清楚で可愛い子が好きー」
村尾の、こういうストレートに言うところ?だけはいいかもしれないけど…反応に困っちゃう。私そんなに可愛くないよ。
「村尾、せめて丹羽がいないところで言えば?」
「あ。死んだ」
「ははっ!空っ!怖っ!!超怒ってんだけど!ウケる!」
怒るってことはまだ私のこと好きでいてくれてるのかな…。んふふ。にやけちゃう。
「アカリ。そんな離れたとこより隣行きなよ。そこでニヤけてるのはさすがに不審者」
「やだ恭子。不審者だなんてそんな、ふふ」
「誰も褒めてないよ」
「もー武藤さんいけず〜」
「あんたそれ意味分かってんの?」
空の隣には斎藤と村尾が陣取っていて私が入る隙はない。斎藤の横には藤ノ木と鏡堂もいて、村尾の横に恭子、私と座っている。うん、一番遠い。
「あんたアカリと席変わんなさいよ」
「えー!俺の空だよ?」
「早く!」
「やだ武藤さん怖い」
自分のコップやお気に入りのお菓子を持って渋々、席を立ってくれた村尾をおいてすかさず空の隣へ滑り込む。
すっごくドキドキしてる。
数日会わなかっただけでこんなに胸が高鳴るんだ。
「そういえばさ、斎藤と空ってなんで話すようになったの?全然接点無くない?」
席が離れてもぐいぐい話を振る村尾のコミュニケーション能力。心なしか前のめりに座っているようにも見える。本当に空のこと大好きじゃん。
「S組とF組って体育合同じゃん。あーなんとなく名前聞く程度に知ってるわーって思ってたんだけど」
私も若干気になっていたからじっと話を聞く。思えば、こんな風に斎藤の声に耳を傾けることは今までなかった。
去年、同じクラスだったけれど住む世界が違うというか…。毛嫌いしてたのもあるけど関わることがなかった。一番初めに手探り状態で連絡先を交換したきり、嫌いになるばかりで知ろうともしてなかったのかも。
「夏木と付き合ってるって知って、まぁびっくりじゃん。あの夏木があの問題児と?って楽しくなっちゃって」
あくまで隣に空がいるというのに、問題児って。しかも私も目の前にいるんだけど。言い方考えてよ。
「そんで、噂の丹羽くんにちょっかい出しに行ったのよ。そしたら意外と波長合っちゃって。な?」
「んん」
「思ってたほど問題児じゃなかったし」
「そう?問題児の自覚はあるよ」
「いやいや、空は真面目だろ」
「うんうん、斎藤の方がよっぽど問題児だよ。毎日違う女の子と一緒にいるし。男の敵」
「あは、喧嘩する?」
「うわ!物騒!怖いんだけど」
「まー、夏木はそのうち俺がもらうとして」
「え…?夏木ちゃんは間接的に俺のだよ?俺の空の夏木ちゃんってことは一生、斎藤の夏木ちゃんになることはないよ?」
キョトン、とすっとぼけ顔で斎藤に喧嘩を売るなんて…。
二人の冗談に爽やかスマイルで返す空の、なんとなくの圧と、爽やかイケメンで心臓変になりそう。
「つーかさ!文化祭で歌うってマジ?」
斎藤の疑問に一同固まってしまった。
「えっと、そのー」
「そ、空がね、すごーく歌が上手だから、歌ってって言ったんだけど…」
「あー、上手いよな。俺期待してんだけど!何歌うの?」
「村尾とアカリと、そこの二人が楽器と歌をマスターしたら一緒に出ようって提案した」
歌や楽器が得意じゃない私に課せられたミッション…。忘れてた。
「提案じゃなくて一方的な条件だよね…。俺、リコーダーすらまともに吹けないのに。カスタネット参加でもいい?」
「私も、合いの手で参加したいなー…」
「空、一人で出ればいいじゃん!バンドメンバーなんて軽音部から借りたらいいだけだろ」
「やだよ。ただでさえ目立ちたくないのに、知らない人と出るとか」
「じゃ、楽しみにしてるからお前ら頑張れ」
「無責任な応援だこと」
私の心の声を村尾が言葉にしてくれたみたい。練習しないと空の歌が聴けない。やだ。練習頑張る。




