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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太



 『命に別状はありません。目を覚ましたら帰っていただいて大丈夫ですよ』


 花火大会の帰り、そこら中に浴衣を着た楽しそうなカップルが溢れる時間。

 

 医者はそう言った。


 高校生は補導対象だろうが。


 「逃げられたら厄介だから帰りはタクシー呼ぼう」


 無気力な優が最もらしい提案をしたが、恐らくこいつがそうしたいだけ。

 

 「お前が疲れてるだけだろ」


 「引きこもりにはハードな運動だった」


 やっぱり。


 「お前の親、勉強にはうるさいのに俺ん家に泊まったり朝方帰るとかの、素行には何も言わねーの?」


 以前から若干気になっていた話題に触れてみる。


 「まあ。空気みたいなもんだからね。目に見える成績表や賞状にしか興味ないし。上と違って成績さえ良ければ、存在しないもののように見てくれるよ」


 優の家は俺の家よりも遥かに金持ちで、権力もある。と言っても優の親っていうよりも親の親、つまりじーちゃんばーちゃんが強いだけで、親自体を凄いと思ったことはない。


 父親は国家公務員、母親は高校教師、二人の兄貴は超エリートな医学部と法学部。すごいんだろうけど、コネじゃねーのって思ってしまうから、藤ノ木家の人間は優だけがすごいんだと思っている。


 まぁでもそんなんだから、ふらふら遊び歩いたり外泊ばかりしていたら怒られるのではないかと思ったわけ。


 「三男だから高校選びも上より自由だったし。期待されてないんじゃない」


 まじで何の感情もないかのように話す。普通そんな扱いされたら悲しくね?


 「なんか、家族みんな仲悪そうだな」


 俺と違って。


 「んん、俺以外は可もなく不可もなく、会話してるよ」


 そりゃ会話はするだろうけどもはやそのレベルで仲悪いのね。


 「お前、仲間外れにされてんの?うける」


 「俺への小言をネチネチ言うことで団結力を保ってる感じかな。特に母親は、俺が日本一の高校を選ばなかった時点で失望したっぽい。変に期待されるより、どうせできないって諦められてる方が生きやすいからそれでいい」


 「ふーん。お前がこんなに家族のこと話すなんて珍しいな」


 「うん、空の家族より何倍もマシだって、自分の目で見たからね。ただの世間話だよ」


 ただの世間話にするなよ。普通に愚痴ればいいのに。






 空が目を覚ましたのは日が昇ってからだった。三人で初めてのお泊まり会が病院って。


 「何日の何時…」


 頭が痛むのか、眉間に皺を寄せながらも俺たちを認識した。


 「8月13日の六時過ぎ」


 「はあっ、やらかした」


 たくさんのでかい絆創膏でほとんど皮膚が見えない腕で顔を覆った。


 「なんでお前らがいんの」


 「聞きたい?内容によっちゃプライドへし折っちゃうかも」


 「いい。帰る」


 酷く落ち込んでいる様子。バイトを無断欠勤したからだろうか。それとも、俺たちに弱いところを見られたからだろうか。


 どっちもか。


 「帰さねえよ」


 「ぁ?」


 睨まれるとまじで怖ぇな。でも引かない。絶対引かない。帰さない。


 「お前、死にかけてんの」


 「はぁ、だから?」


 「あの家帰ったら殺されんの!」


 「だからなんだって言ってんだよ。お前に関係ねぇだろクソ坊主」


 俺も大概だけど口悪すぎ。怖い。


 「幼馴染が死にそうになってんのに助けねえ奴がいるかってんだよ!!!」


 早朝に馬鹿でかい声出させんなよ。近所迷惑だろうが。


 なんで解ってくんねーの。なんでそこまでしてあの家にこだわるんだよ。クソ頑固野郎。

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