side 桑島 香織
夏休み初日からガンガンシフトに入っている新人の丹羽大空くんの人柄が少しずつわかってきた。
翔也くんがみんなを引っ張るリーダーなら大空くんはみんなの隣、もしくは後ろで寄り添いながら支えてくれる優しい人。
どうしてそう思うのかといったら、高校生のバイトちゃんが仕事でミスをした時にさりげなくカバーしていたのを見たからだ。それも、誰にも分からないようにカバーしていた。翔也くんも、店長も、間違えた本人でさえ気付いていない。あたしが見ていなければ、誰も知らない。
年齢は大空くんの方が一学年上だけれど、バイトでは一番新人さんだから気を遣ったのかもしれない。後輩に指摘されたら嫌な人もいるから。
それに、さりげない優しさを目にすることがすごく多いんだ。特定の誰かに対してだけじゃない。翔也くんにだって、橋田さんにだって、分け隔てなく優しい。よく気が付くなぁって思うようなことばかり。些細なことだけど、だからこそ普通の人ならスルーしてしまうようなことでも、あの人は手を差し伸べてくれる。
あたしは半年近く働いているけれど、橋田さんの調子が悪い日なんて知らなかった。大空くんは、入ってたったの十数日で二回も橋田さんの体調不良に気付いていた。あたしにはいつもと同じように見えていた。翔也くんだって、気付いていなかった。
橋田さん本人も『あれー…気付かれないようにしてたんだけどな。鋭いね。じゃーちょっと休憩もらっちゃおうかなー』と笑っていたくらいだ。
そんな大空くんが今日、バイトを無断欠勤した。
そりゃあ誰だって最初は猫被るよね。
今日は土曜日。少し離れたところで花火大会があるから夜はとても混むだろうと予測してのフルメンバーだった。
おかげで大空くんがいなくても店は回った。
「なぁ翔也」
「はい」
連絡手段がないことに疑問を抱いた大学生の先輩は翔也くんを責めた。
「お前のことは信頼してる。けどな、お前が連れてきた奴がこんなんじゃ、お前の信頼全部、無くなったも同然だからな」
「すみません。俺が責任持ってケジメつけさせます」
仲の良い職場だけどちゃんとしなければいけない部分はちゃんとする。ダメなことはダメ。だから人間性が高い人ばかり集まる。この店の良いところだ。
外見だけで判断するなら大空くんは採用されていない。店長は、翔也くんの友達というだけでは採用しないはずだ。
翔也くんの友達がお客さんとして来ることはよくある。でも、バイトを紹介したことはなかった。
あたしだってよく知っている訳ではない。
知らないけれど、なんとなく、悪い人には見えなかった。無断欠勤するような人には見えなかった。だから、翔也くんも紹介したのだろう。みんな、残念な気持ちを抱いてしまうよね。
この店での無断欠勤はそれくらい重大な失態なんですよ。




