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君がいたから  作者: HRK
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side 夏木 あかり




 夏休みに入って一週間が経った。最初の数日は空とのデートを楽しんだ。それもそれぞれの家に帰宅してしまったら連絡の取りようがないから、このまま夏休み終わりまで会えないのかなーなんて。


 鏡堂や村尾の連絡先はわかるのに。一番連絡を取りたい人の名前がない。登録されていないスマホの連絡先をスクロールしてため息をつく。


 最後に会った日はなんとなく、元気がなかった。次のデートの約束をしたかったけど、心ここに在らずって感じで帰してしまったのだ。引き止めれば留まってはくれたんだろう。そうまでして、空を苦しめないかなって私のネガティブがひょっこりしちゃった。


 空とは付き合っている。でも、それ以上踏み込めない境界線っていうのが他人ひとよりくっきり見える気がする。私が勝手に思ってるだけかもしれない。そうなら、そうであってほしい。


 ◇





 「でね、もう一週間も会ってないの。やばいよ。危機だよ」


 空に会えていない鬱憤を、大親友の恭子に吐き出す。大量のじゃがりこを抱えて突然ピンポンしても相手してくれるからすごく優しいのよー。


 「あんた太るよ?その量食べるなら野菜スティックにしなさいよ」


 「聞いてる!?会えてないの!愛情不足で干からびちゃうよ。これは、栄養補給だから!」


 親友の正論に聞く耳持たず、じゃかりこを突き立てて熱弁する。じゃがりこはじゃがいもだし、野菜味なら野菜だし。いいのいいの。


 「あいつと一緒にいる時もお菓子ばっかり食べてんの?」


 「んーん。ずっと喋ってるか、お昼寝してるから、空とはお菓子食べてないよ」


 「お昼寝!?」


 おっきいお目目をパッチリ見開いて、そんなに驚くことだろうか。


 「うん。いつも眠たそうなのよ。寝不足なのかな」


 「えぇ〜何それ。彼女とデート中に寝る?」


 「いいのいいの。人はリラックスすると眠くなるってネットで見たし」


 恭子は未だに私たちを応援してはくれていないけれど、私が空を好きだからいいんだ。恭子は恭子、私は私。


 「ふーん。都合よく使われてるだけじゃない?大丈夫?」


 「いつもわがまま聞いてくれるから、むしろ私がそう思われてるかも」


 恭子の心配は素直に嬉しい。でもね、空はとっても優しいよ。



 「で、このまま会えないのは無理だから、鏡堂に電話してみようかな!来週花火大会あるでしょ?誘うタイミング逃しちゃって…」


 「花火ねぇ。てか、なんで電話なの?メールでいいじゃん」


 実はこれが本題。一人で電話してもまともに話せそうにないから、恭子に仲介してもらおうと思って乗り込んだのです。

 みんなといる時は話せるのだけど…なんていうか、ズバズバ言うイメージがあって、少し怖いのです。


 「メール返ってこなかったら気まずいじゃん」

 

 これも勝手なイメージ。自分に無益なことには興味を示してくれなさそうで…。


 「あぁね。てかさ、あいつの連絡先は持ってないの?」


 「あいつ?」


 「サイトー」


 「持ってると思う」


 まさかの名前で少しびっくり。恭子もよく思っていない相手のはず。なんであんなやつ…。


 「あいつんとこでバイトしてんならシフト教えてもらえるんじゃん?」


 「あ!そっか!!恭子天才!」


 『アカリって天然だよね〜』と言うけど、バカって言われてる気がして解せぬ…。


 

 「あ、もしもしー?あのね、斎藤に用があるとかでは決してないんだけどね、空の次のシフト教えてもらってもいいかな?断られても困るんだけど、バイトの空ってどんな感じ?かっこいい?かっこいいよね!分かる!」


 「アカリ、テンパリすぎ」


 『あー切ってい?』


 寝起きっぽい掠れ声でダルそう。勇気出して電話してるんだからしっかり答えてよね。もう昼過ぎだし。寝過ぎだよ。


 「最近空と会ってる?」


 『さっきまで一緒にいたけど?』


 「そうなの!?なんで呼んでくれないの?いじわる?」


 さっきってことは寝起きってわけじゃないのか。


 『酒飲んでたし、言っても来ないだろ、優等生ちゃん』


 すっごいバカにされた気持ち。嫌い。


 『とにかく切るぞ。オール明けだからクソ眠い』


 「オールってことは、朝まで一緒にいたの?」


 『そうだって。あー、空に説教とかやめろよ』


 お酒を飲んだことに対してだろうか。何か言うつもりは毛頭ないけど、そう言われると気になってしまう。


 『今あいつ荒んでるからそっとしといてやって』


 …だからって未成年の飲酒が許されるわけではない。何も言わないけどさ。それより、


 「荒んでるってどういうこと?」


 『知らね。外で喧嘩でもしてんじゃね。じゃ』


 「あっ、ちょっと!…切られた」

 

 空はすごく、かっこいい。どちらかと言うとヤンチャっぽい雰囲気で、冷たい空気を纏っているから、一見すると悪い人に見えるのかもしれない。


 でも…。喧嘩するような気性の荒い人じゃない。怒ると怖いけど普段はすごく穏やかな人だよ。


 「なんて?」


 「なんの役にも立たなかった!」


 シフトも教えてくれなかったしさ。不安ばっかり残してさ、本当に役立たずだよ。

 

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