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君がいたから  作者: HRK
67/152

side 鏡堂 広太





 *



「ホットコーヒーひとつお願いします」


 空の頑固さに仕方なく大人の俺が折れてあげたからご褒美にコーヒーを注文。

 駅前の人気カフェなだけあって人が多い。


 「こんな暑い日にホット?バグりすぎじゃね」

 「コーヒーはホットしかありえないだろ。お前なんか食べんの?」

 「食べない」

 「飲み物は?」

 「水」

 「コーラひとつください」

 「優は?」

 「アイスティー」

 「アイスティーもお願いします」


 店内入口に夏木が言っていた新作メニューの看板がデカデカと飾られているのだが、これを食べにきたのか?パンケーキに大量のホイップが乗っかった生クリーム丼みたいな見た目。


 辺りを見渡すとそこかしこのJKがクリームを頬張っていて、見るだけで胸焼けしそう。


 「お待たせいたしましたー!」


 A組トリオは3階の席にいるらしい。建物内最大の広さなのにほぼ満席。それも女子ばっか。あちらこちらの席に生クリーム丼が置かれていて気持ち悪くなりそうだ。



 「あ!空ー!こっちこっち!!」


 カウンター席が並ぶフロアの一番奥に四人掛けのボックス席が二つ。荷物を置いて陣取っていたらしい。横並びで座っているJKたちの視線が痛い。


 「うっわ。生クリーム丼、二個もある」

 「生クリーム丼って何!?可愛くない!エクストラホイップパンケーキなんだけど!」

 「俺もこれ食べてみたかったんだよねー!ホイップマシマシにしちゃった!」


 野菜マシマシみたいに…。


 

 「はい、優の」

 「はい空」

 「あぁどうも。今度払…」

 「いいよそんくらい。優を見ろ」

 「ジュロロロロ」

 「早」

 「こんな暑い日にホットコーヒーはイカれてるね」


 奢っただの奢られただのいちいち覚えていないくらいよくあること。空ともこういう関わり方ができたら楽なんだけどな。


 「300円貸して」

 「はい」

 「さんきゅ」


 優は普段、財布を持ち歩いていないからこんなんしょっちゅうなわけ。


 「なんか、友達超えて兄弟みたいだね」


 300円握りしめて降りて行った優を背に夏木が呟いた。


 「俺が上ね」

 「いや、うん、どっちでもいいけど」






 「てか、明日から夏休みだねー。みんなでどこか行かない?」

 「お祭りとか?」

 「お祭り!チョコバナナとかりんご飴とか…わたがし…!!」

 「食べ物ばっかり」


 女子二人の会話をぼんやり聞きながら空のことを考えた。


 夏休み、バイトがどれくらいあるのか知らないが、家にいる時間が多くなるのは確実。しかも働いていることがまたバレたら給料没収どころじゃ済まないかも。


 父さんと母さんも引っ越し準備し始めてるし…。俺まじでぼっちじゃん。

 

 「空は?どこか行きたいところない?」


 祭り、花火大会、遊園地、海、盛り上がる二人が空へ話題を振った。


 「どれも楽しそう」

 

 本当は行く気ないくせに。今ここで日程まで決めないと行けないよな。

空の家知ってるの俺と優だけだし、携帯持ってないし、なんなら金ないし。行きたくないわけじゃないだろうけど、行きたいとも思ってなさそう。


 「プールもいいよね!」

 「あたしナイトプール気になる」

 「雰囲気出る〜!!」


 「俺も彼女ほしい…。今からナンパしてこようかな…」

 「あんたがナンパしたところで誰も付いて行かないよ」

 「武藤さん毒舌ー!」

 


 *



 「それじゃあ連絡するね!熱中症には気を付けて!!」


 見事、生クリーム丼を完食したトリオと駅で解散。その後すぐに夏木だけが戻ってきた。


 「待って待って待って待って!空!!私のお家来ない?連絡取れなくなっちゃう」


 さては忘れてたな。


 「明日からバイトなんだよね」

 「私の家から行けない?遠い?」

 「そんなことないけど急に行ったら迷惑じゃない?」

 「大丈夫!!親いないから!」

 「あぁそう…?じゃあお邪魔しようかなぁ」

 「ほんとっ!?やったぁ!!じゃ、空もらうね!」

 


 はぁ、恋人同士だったらこんなに簡単に家に誘えるのに。



 

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