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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太




 空がまた、殴られているらしい。


 いい加減やり返せばいいのに。


 「今日も休んでるって」

 「そうだね」

 「俺が殴り込みに行ってやろうかな」

 「やめなよ」

 

 最近大人しかったのにどうしてまた殴られるようになったんだろうか。喧嘩でもしたのか?


 「放課後、空の家行こ」

 「やめなって」

 「殴り込みはしない。生存確認」

 「さすがに生きてる」

 「あったま固いな。圧かけにいくんだよ。これ以上やったら通報するぞって」

 「空は望んでないかも」

 「だからなんだよ。関係ない」

 「関係なくないだろ。空の家なんだから」

 「第三者が介入しないと解決しない問題もあんの」


 優はビビっているのか乗り気じゃない。巻き込まれるのが嫌なのか。


 虐待って見て見ぬふりしてるけど犯罪だからな。この歳で虐待って言うのか分かんねえけど暴行障害は犯罪。家族のことを庇っているのか、慈悲の心があってやり返さないのか、あいつの気持ちは分からないが俺が良くないと思ったことは絶対に良くない。


 そうと決めたら揺るがない強い意志で放課後、アポ無し突撃を実行した。


 「家にいないってことあるか?どこ行くんだよ。友達もいないのに」

 「広太よりは多いと思うよ」

 「うるさ」


 何度インターホンを押しても出てくる気配がない。居留守かな。


 会話している最中もずっと押しまくって普通に考えたら迷惑行為だが、出てこないのが悪い。


 「帰ろう。話は学校来てからでいいんじゃない」

 「空と話すというよりあいつの親に用がある」

 「結局殴り込み目的」

 「お話し合いだから」


 ピンポンピンポンピンポン、一生鳴らし続けたがやはり出てくる様子はない。仕方なく帰ろうとインターホンから手を離すと鍵が開いた音がした。

 やっぱり居留守だったか。

 俺はなんて言ったってしつこいからな。やると決めたらとことんやる。


 「…誰」

 

 あれ、拍子抜け。空が俺のしつこさに参ったのかと思ったが、まさか妹の方だったとは。


 「親は?」

 「親、お母さんのこと」

 「母親と父親。いるかいないか答えろ」

 

 前回、保健室で会っただけの空の妹。全然似てないし完全にやばい見た目。目の焦点合ってないし肌の色が悪い。髪はボサボサで不潔。

 会話するのはこれが初めてだった。


 「お父さん、バイ菌。いらない。お母さんすごく優しい」


 会話能力もないのか。確か二歳下だったはず。中三でこれ?まじでやばいな。


 「空は?いるかいないか」

 「あれは病気。死んでいい。汚い。いらない」


 空の名前を出した途端、瞳孔が開いた。

 興味がある話題なのか?もっと聞けば何か喋るだろうか。


 「母親と空、よく喧嘩してる?」

 「喧嘩違う。お母さん、サキを守ってくれる。お兄ちゃんがサキを叩くから、お母さんが戦ってくれる。お母さんは優しい。サキを守ってくれるよ」


 は?空が妹を叩くという言葉が出てくることにも驚いたが、一切嘘がないように見えることにも驚いた。まるで本当にそうであるかのように瞳孔を開いてしっかり否定した。


 空に限って年下の女を殴ったりはしない。

 よく知る仲ではないがそう思うのはただの直感。だけど、こういう理由がないと空が殴られる意味が分からないのも事実。


 「お兄さんたちはサキの味方?お母さんいじめたりしない?」


 空と同じ制服着てるんだからどう考えてもお前の味方ではないだろ。


 「いじめないよ。空が反省してるか見に来た」

 「は!?」


 「なら、いいよ」



 後ろに引っ込んでいた優が息をするように嘘をついた。


 「ありがとう。これ、危ないからしまっておいてね。怪我しちゃうよ」


 俺からは死角になって見えていなかったカッターナイフ。こいつ危ねえな。インターホン出る時は刃物を持てって教わったのか?


 いいよと言われ案内された空の部屋に初めて入る。


 「生きてたら殺してね。お母さん喜ぶ」


 「うん、分かった。怖い思いさせたくないから外で待ってて」


 優の嘘つきっぷりも大概だが、実の兄を殺せと言う妹ってなんなんだよ。本当に叩いてるのか?いやそんなわけないだろ馬鹿。


 「お前、抑揚つけて話せたんだな」


 部屋のドアを開けながら小声で呟いた。


 「やろうと思えばできるよ。疲れるからやらないだけ」


 

 *



 カーテンを閉め切った真っ暗な部屋。物が散乱してお世辞にも綺麗とは言えない。


 空はベッドの上で布団にくるまっている。


 「空。生きてる?」


 壁を向いて微動だにしないから少し焦る。


 「空」


 「…るさい」


 怪我してたら痛いかなと思って体には触れず呼びかけたら反応した。


 「不法侵入まじで帰って」


 「不法侵入じゃねえよ。妹に許可もらった」



 悪態をつく元気があることにちょっとだけホッとした。


 「なぁ空、明日も休む?」


 「ん」


 「明後日は?いつから来る?」


 「………」


 決めた。夏休み中に空を家から出す。



 「また来るから、絶対死ぬなよー」



 返事をしなくなった空はいくら呼びかけても反応しないからな。早めに切り上げて家出計画を企てないとな。



 「外に警察がいるみたいだからまた今度来るね。サキちゃんもお母さんも殺人犯になってほしくないから待ってて」



 家を出る際、またペラペラと嘘を並べて妹を抑制した。こんなんで聞くとは思わないけど。

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