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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太




 俺はあの日あの時、確信した。



 「空は歌だ!!歌手!!」

 「上手だったね」


 二日前の軽音部突撃にて強引に歌わされた空の歌が信じられない程、上手だった。

 歌い終わる頃には音楽室の外まで観客がいたくらい。窓を開けていたからグラウンドから覗き込む生徒もいた。吹奏楽部は楽器を抱えたまま観に来て呆然としていた。俺も村尾も、軽音部員も、プロなんじゃないかと驚いた。


 本人は『聴き慣れないから新鮮なだけ』と言っていたがあれは間違いなく本物。


 曲が始まる前は気だるそうに、嫌々だった。しかし、歌い出したら空気が、雰囲気が、変わった。素人のソレでは絶対に分からないゾーン的な。


 夏木は『おかしくなりそう』と言いながら発狂していたし、村尾や西田という地味な奴もうるさかった。

 俺もなんていうか、身体の内側が熱くなるような不思議な感覚を味わった。


 ということで今年の文化祭で歌わされることになったと嘆いていたな。


 口では嫌だと言うけれど、なんだかんだ歌うこと自体は嫌いではなさそうだからいいじゃん、と思っていたら巻き添えを食らった。


 『こいつらが演奏できるようになったら出る』


 優はさておき、俺はピアノ以外の楽器は初心者。夏木や村尾はリコーダーさえまともに吹けない楽器音痴だ。

 こういう、どう考えたって無理だろって案件、逆に燃える。


 夏木や村尾の能力を見てどうせやらない、できない、と考えての発言だろうけど、俺は今まで「やってみせて」と言われたものは全てやった男だからな。

 おつかいだろうが宿題だろうが、優の嫌味だろうが、「やれ」と言われたらなんだってやる。

 楽器音痴がいたところでなんの関係もない。目的達成のために必ずマスターしてやる。

 


 夏木の腰巾着、武藤恭子は参加を拒否し盛り上がる俺らを置いてそそくさと帰っていった。感じ悪いやつ。





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