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君がいたから  作者: HRK
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espoir


 5月を過ぎても鏡堂のしつこい勧誘は続いた。部員でもないくせに勧誘しないでほしい。



「空!サッカー!」



もしかして本人は『おはよう』って言ってるつもりなのか、って思うほど軽快な挨拶と化した。お近付きになりたいって言っていたけど、ここまでされると嫌がらせに思えてくる。…いや、どう考えても嫌がらせだよね?毎朝休まず馬鹿でかい声で話しかけて、地味な俺目立たせようとしてるのか。学校では少しでも静かに、平穏に過ごしたい俺の気持ちを知ってそんなことをするんだ。ムカつく。死ね。


きっとそうだと決めつけてわざわざ黒板まで歩いた。一番前の席だから遠くないけど、予習していた手を止めてわざわざ歩いたよ。真っ白な黒板消しを投げつけるために。



「うぉい!!真っ白になったじゃねーか!!何するんだよ!!」



真っ白にさせるために投げたんだから当たり前だろ。ばーか。二度と話しかけるな。




「お前ら何してる」



…タイミング悪く現れた担任に無言で責められている気分。俺じゃないなんて、証人の多いこの場では不可能すぎる言い訳だった。




 黒板消しを人に投げるなんてどうかしてると散々責められ、ついでに少し前にやった学力テストの点数が悪すぎることまで怒られた。だって仕方ないじゃん。眠かったんだもん。点数低くて誰に迷惑かけたの?成績に関わるやつでもないんだし何点でも一緒だろ。

中学生までの優等生な俺は高校入学早々、落ちこぼれの問題児に成り下がった。

鏡堂なんかと同じ場所を目指すからこうなる。あいつは俺なんかとは全然違う環境で、才能で、いとも簡単にこの高校に進学したんだ。滑り込みで入学した俺とは全てが違う。




 「あんた、鏡堂さんの息子さんに物を投げたんだってね。どういうつもり?」



教師はいつだってそうだ。何かあると話も聞かずに弱者を悪者にする。鏡堂も鏡堂だ。自分がしつこかったから俺が怒ったって言わない。自分が弱くなるから、怒られるから。プライドが許さないんだろ。人に指示されるのとか、嫌いそうだもんな。



「しつこかったから。うるさかったから」



今まで親に反論なんてしてこなかった。無駄だと分かっていたからいつも黙っていた。でも今回は…。俺は悪くないって誰かに言ってもらいたかった。クラスメイトでも通りすがりの誰かでもいい。誰か俺の話を聞いて『お前は悪くない』って言ってほしかった。




✴︎




 「空?」




 嫌な呼び名。俺が嫌いな人はみんな俺をそう呼ぶ。




「この怪我、どうした?」

「………」



いつかのピアスマン。髪色が紫に進化してる。




「保健室行こうぜ。絆創膏もらえるから」



すでに瘡蓋になっている顔の傷を見て、まるで心配しているみたい。黒板消しを投げた時、なんのフォローもしてくれなかった癖に。偽善者は地獄へ堕ちろ。死ね、死ね死ね。

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