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君がいたから  作者: HRK
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side 武藤 恭子


 


 ぼんやりと窓の外を眺め上の空で受けた空白の授業。気が付けばお昼ご飯の時間だった。

 

 「アカリー。一緒に購買行かない?」


 「いいよー。お弁当は?」


 「作ってない。たまには買い弁でもいいかなって」


 丹羽へのむしゃくしゃした気持ちでお弁当どころではなかったというのが本音。気分転換になるかなっていうのもちょっと本音。


 「アカリは?今日はお弁当?」


 お弁当だったりお菓子だったり、買い弁だったりその日ごとに全然違うアカリは多分、何も食べないつもりだったんだと思う。


 「んー、お財布置いてきちゃって。後でドカ食いする予定!」


 「おっきいパン買って半分こしよ」


 「やーーん!恭子大好き!!」


 ここまでカラ元気でいられるとこっちが苦しくなるよ。




 「なんか、人だかりできてるね」



 校舎内1Fにある購買部へ行く途中の職員室前で先生たちが集まっているのをアカリが不思議そうに呟いた。



 「生徒が問題起こしたんじゃん?」


 「お昼休み返上してまで大変だねぇ。先生って」


 子どもでよかったー。通り過ぎようと人だかりの中心を見て驚いた。

 たくさんの先生たちに囲まれてやいやい言われているのが、丹羽大空だったから。



 「…空?」


 先生の群れを目の前にしてピタリと止まってしまったアカリにため息が漏れる。

 アカリに、というか。丹羽に。


 どうして目立つところで問題を起こすんだよ。



 「…はぁ」

 

 私のため息よりも大きく深い息を吐いたのは、こちらに気付いた丹羽だった。何そのため息。あたしらが通りかかったのが気に食わないの。



 「ここはお前みたいな問題児がいていい学校じゃない。追試が嫌ならすぐに退学しなさい」

 「付いていけなくてカンニングしてしまうなんて。そんなんだから努力が足りないというのだよ。君は努力をしなさすぎる」

 「追試を受けたくないのは何も答えられないからだろう。それが、カンニングの証拠だと言ってるんだ」


 会話の内容から、丹羽は追試を受けたくないと主張していることが分かる。疑われて拗ねてるのかもしれないけどそれで努力が認められるならやればいいじゃん。…まさか、本当にカンニングしたってわけ?



 「辞めるか追試を受けるか、どっちなんだ」



 学年主任の岡野先生から厳しい視線を向けられ、お互い気が立っているのが伝わる。



 「…空はやってないよ。カンニングなんか」

 

 痺れを切らしたアカリに視線が集まる。彼氏が問い詰められて複雑な気持ちは分かるけどさ。あんたは一応、優等生の枠組にいるんだから目立つことはやめなさいよ。

 単なる感情論で先生たちが納得するならとっくに収拾ついてるって。



 「夏木さん、付き合う相手は選ばないとダメよ?」



 …は?



 「先生なにそれ。まだカンニングしたって決まった訳じゃないのに、あんまりなんじゃない?」



 アカリが口を開く前に言葉が出てしまった。丹羽を庇うようなことはしたくなかった。でも、今のミナミ先生の発言は二人を傷つける。


 「武藤さんも、言葉には気を付けなさい」



 は、うざ。何にも届いてない。こんなの先生って立場を利用してただ弱い者いじめしてるだけじゃん。



 「…カンニングしたってことにしといていいからいい加減消えろよ、うぜえな」


 不良の本性、みたいな部分が垣間見えて少しだけ足がすくむ。聞いたことのない低い声で悪態をつくものだからさすがに怖くなる。



 「しといていい、じゃないんだよ。お前はやったんだろ?それを先生たちの良心で見なかったことにしてやろうと言っているのに、なんなんだその態度は」


 「見なかったことにしてくれなくていいっつってんだよ頭悪いな。殺すぞ」


 「認めたな」

 「あぁ、認めた。やっぱりやったんだ」


 岡野先生の誘導尋問に乗せられ更に責められている。こんなやり方、あんまりだ。


 

 「アカリ、うちらじゃどうにもできない」

 「空はカンニングなんてしてないのに」

 「分かってる。どうにかできる人を呼ぼう」

 「どうにかできる人って誰…?」

 「そんなの決まってんじゃん」



 声を顰めて作戦会議。我が校には嵐のような存在感を放つ異才がいる。

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