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君がいたから  作者: HRK
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espoir



 新学期は嫌いだ。したくもない自己紹介と友達になれるか見極めようとする変な空気感。友達は要らない。勉強しにきてるんだから。エリートになるためには勉強だけが必要なんだ。



「君だったよね?大空って名前の子」



一時間目が始まる前の数分。予習中に誰かに話しかけられた。声を出すのが億劫で顔だけ向けた。短く切り揃えられた茶色い髪はワックスで固められ、おまけにピアスなんかも付けてる。不良だ。



「どこ中?俺、西中」



知らない人に個人情報を教えてはいけません。



「大空ってかっこいいね」



この人もからかってるのか。名前の割に暗いねーって言いたいんだろ。勝手に言ってろ。うるさい、邪魔。



「あれ?怒らせた?」



無視して教科書を見ていたら覗き込んできた。怖い。ストーカー。やだ。



「そーらー!!サッカー部入ろうよ〜」



…またうるさいのがきた。なんなの。みんな俺の邪魔をしたいの?流行りなの?全部無視してやる。俺を見下す人はみんな敵。うざいうざいうざい。





 高校生の一日がこんなに大変なんて知らなかった。って言っても、大変にさせてるのはあのうるさいピアス野郎と鏡堂だからあいつらがいなかったら平穏だったのかも。今更気付いたって遅いけどさ。まだ5月になってないっていうのに、サッカー部はたくさんの新入部員を抱えて青春始まっちゃってますって感じ。揃った掛け声で校舎内を走る女子バレー部。部活なんて時間の無駄じゃない。学校は勉強するところだよ。友達を作る場でもおしゃれを楽しむ場でもないの。偏差値高いくせにロクな人がいない。



 家に帰れば暴言、暴力。…柔道部、とか。背負い投げしたらびっくりするだろうな。しないけど。



「ママ、あの人なんで帰ってくるの?馬鹿なの?」

「サキ、あの人は馬鹿なの。頭がおかしいの。病気なの」

「だから叩いても治らないの?」

「そうよ。叩いても叩いても治らない病気なの」



純粋無垢な妹は簡単に洗脳されて今や俺をバイ菌扱い。俺と同じ空気を吸いたくないからって中学はまともに行ってない。だったら違う中学を選べばよかったのに。馬鹿はどっちだよ。





 配布された生徒手帳に記載されていた『アルバイト禁止』の文字。俺の一番近い目標が崩れた。バイトをしてお金を貯めて家を出る。そのために受験勉強を頑張ったと言っても過言じゃない。先に確認しておくんだった。法律では高校生から働けるのに、学校で禁止されているなんて想定外だよ。進学校だから勉強に支障をきたさないためなんだろう。…部活だって同じじゃないか。





「空!!サッカー部!」



 朝一の挨拶代わりになりつつある鏡堂のコレ。いい加減うざいししつこい。毎日毎日飽きないの?



「サッカーやろう!俺、空ともっと関わりたい!」



俺は関わりたくない。だから返事しない。一人で言ってろ。邪魔。目障り。うるさい。

 小学生の頃から変わらない丸坊主頭。ピカーっ!って効果音がつきそうな明るい笑顔。母が付いていけと言うからこの高校を選んだ。中学までは何の関わりもなかった。だから別に同じ高校でもいいと思ってここまで来たのに。なんで急に関わろうとするの。藤ノ木と一緒にいたらいいじゃん。



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