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君がいたから  作者: HRK
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side 夏木 あかり


 しばらくして戻ってきた空はどことなく冷たい雰囲気で怒っているみたいだった。聞いても怒ってないとは言うけれど…。


 駅を出て人通りの少ない住宅街を歩き、私の家へと向かう間一言も話さず気まずい。痴漢されたことを黙っていたから怒ってるの?

 ママたちにはラブラブ姿を見せたいのに…。



 「アカリ」

 「…ん?」



 少し前を歩く私を呼び、空は立ち止まった。やっぱり帰るって言うのかな。こんなテンションでお泊まりなんて無理だよね……。



 「アカリ、ごめんね」

 「えっ?」



 人がいない住宅街のど真ん中で抱きしめられている。…どういう心情?空は私を抱きしめてくれることが多いけれど、高い確率で謝る時にそうする気がする。



 「…帰りたい?」

 


 耳元で、言われる前に聞いた。だって家までもうすぐだよ。寂しいじゃん。

 だけど空は無言で首を振った。



 「守れなくてごめんね。一緒にいたのに嫌な気持ちにさせてごめん」



 言葉と共に腕に力を込められて心臓の音が届いてしまいそう。どうして空が謝るの。触られてもそこに居続けたのは私だよ。空は何も悪くないよ。



 「…ううん。謝らないで。私は大丈夫」



 怒っているように見えたけれどそうではなく自分に負い目を感じていたのだと知った。



 「駅で一人にしてごめんね」



 この人はどうしてこんなにも自分が悪いと思うのだろう。電車を降りてから何をしていたのか定かではないけれど、戻ってきてくれたし、こうして謝ってもくれた。空は何も悪いことなんてしていないのに、どうして謝るの?



 「全然平気。ねぇ空?次謝ったらお仕置きね?」

 「え、お仕置き?」



 初めて痴漢された時よりも、どうしてか心が落ち着いているから謝ってばかりの空に意地悪したくなった。空がやりたくないだろうなーってことを思い浮かべて…。



 「何されるの?」

 「んふふ。謝ったらその場で私にキスして」

 「…え、キス?」

 「そう!キス!学校で謝ったら誰の前でもキスしてもらうし、電車の中で謝ったらその場でキスするの!だからこれから謝るの禁…」



 なんとなくのイメージでシャイボーイだと決めつけてやってくれなさそうなことを言ったのに。私のファーストキスは、大好きで大好きな丹羽大空くんに奪われました。



 


 「三回謝ったからあと二回していいってこと?」

 「ちょっ……」



 いたずらっ子のように笑って私をおちょくってる!!私のファーストキス!!もっとこう、心の準備があるじゃん!ファーストキス、いっきまーすみたいな!!



 「自分から言っといてなんでそんなに顔赤いの?」

 「そ、そりゃ!!だって!空が急に!キ、キキ、……キスするから…」

 「キスする前は謝ればいいんだっけ?…村尾の前とか、満員電車とか?」

 「そうじゃない!!」



 これのどこがシャイボーイなの!?むしろドSなんですけど!?お願いだからキスする前に戻して…!



 「ね、もう一回いい?」

 「…き、聞かないでよ」

 「そう?許可制かと思った」




 家の近所で住宅街。こんなところで二度もキスしてしまうなんて…。私ったら…。




 「大好きだよ、アカリ」




 ギュッと抱きしめられたまま耳元で囁く声に、どうしてか涙が出た。バレないように手で拭って家へと歩いた。

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