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君がいたから  作者: HRK
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side 丹羽 サキ


 授業の合間の短い休み時間、響き渡るブサイクのうるさい悲鳴に目が眩んだ。ちょっとくらい我慢してよ。大袈裟に泣き叫んで同情してもらいたいだけでしょ。手を切ったくらいで騒ぎすぎなのよ。


 私は誰よりも賢く、可愛く、可哀相な子だから誰も私を責めたりしない。本来そうあるべきなのに、何も知らないブスが軽い気持ちで話しかけてくるのが悪い。私は繊細なの。もっと大切に扱ってくれないとダメなの。


 

 『私を馬鹿にしたの。可哀相だからって。可愛いからって』

 

 『辛かったね。一人にしてごめんね。しばらく学校お休みしよう?勉強なんて馬鹿のすること。サキは賢いんだから、高校生になってからやればいいわ』


 お母さんだけはいつもどんな時でも私の味方。私のすべてを受け入れ、愛してくれる。私だけのお母さん。




 『なー、マミちゃん。一回だけ。頼むよ。いつも助けてやってんじゃん』


 お兄ちゃんを叩く人がお母さんにしつこく何かを言っている。お母さんをいじめるの?そんなことしたら、私がお母さんを守ってみせる。

 使い古しのカッターをキリキリと尖らせて、リビングの陰から見つめた。


 『勘弁してよ。彼氏でもないあんたに開く股なんかないよ』


 『そこをなんとか!気持ちよくさせるから』


 まだ言うなら次はない。


 『あ!いいこと思いついちゃった!サキ!おいで!』


 カッターを握る手を緩めて手招くお母さんの元へ行った。


 『サキとやりなよ!あたしなんかよりよっぽどいいでしょ。この子、可哀相な子だから彼氏もできないだろうしさ』


 何の事か分からないけれどお母さんが良いと言うなら良いのだろう。それにお母さんは嫌がってるんだから言われなくても私が変わってあげないとだよね。


 『おいおい、マミちゃんまじか?娘だろっ』


 『娘だからこそ初体験は見届けてあげるべきでしょ?』


 『ははっ。正気か?付いていけねーよ。息子殴らせたり、娘を身代わりにやらせるなんて。母親失格だな』


 最後の言葉を聞いて私の中の何かが切れた。母親失格?何を言ってるの?お母さんはお母さんだよ。何も知らない部外者がお母さんをいじめるなんて許せない。殺す。痛いって言ってもやめてあげない。


 隠し持っていたカッターを男の腕に突き刺した。クラスメイトを刺したときみたいにスッとは通らなかったけれどあんなに泣き喚いていたんだ。この男だって痛いは…ず…。


 『何しやがんだ!!クソガキぃ!!!』


 あれ。全然痛そうじゃない。どうして私が痛いの。どうして私の頭を揺らすの。私は誰よりも可愛くて、賢くて、可哀相なのに。


 『あー、あたしに手ぇ出したらどうなるか分かってるよね?そっちは別にいいよ?どうせそのうちいらなくなってポイだし…すっげー馬鹿だからきっと自分が殴られてることも分かってないよ』


 痛くて苦しい思いをしている中で聞こえたお母さんの言葉が難しい。誰が、誰を、殴ってるの…?


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