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君がいたから  作者: HRK
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espoir




 駅や学校、よく目につく場所に張り出されている『虐待防止』のポスター。自分の家に当てはまると気付いたのは中学三年生の頃だった。受験勉強のために夜食を用意してくれる優しいお母さんの話。毎日手作り弁当で子どもを励ますいい親を持った人たち。円満な家庭ですくすく育ってる同級生の話が信じられなかった。


 俺は家に帰ったらまず叩かれる。何もしていなくても。家を出て行った父に似た顔が嫌いだと言って何度も叩く。俺は自分の顔が父と似ているなんて思ったことがない。父はこんなに、目つき悪くない。




「わっ!帰ってきた…。汚いー」




 妹が丁寧に俺の帰宅を報告してくれるから、玄関からまっすぐ部屋に帰れたことがない。乱暴にカバンを引っ張られてぶたれる。これが虐待って気付かなかった自分、お馬鹿だねー。痛くない、痛くない。




「あんた、鏡堂さんとこの子と同じ高校に受からなかったら殺すよ。落ちこぼれに生きる資格無し!!」




分かってる。だから勉強してるじゃない。それを邪魔するのはそっちでしょ。ちゃんと勉強するから離して。


 高校に行けば多少の自由は利くだろう。バイトしてお金を貯めて家を出ればいい。こんな家、早く出たい。

約束された未来なんてどこにも無いけれど、道があるなら歩くだけ。家族に期待はしない。俺が俺でいれば腐らず生きていける。



✴︎




 迎えた高校入学式。事前に行われたクラス分けテストでは寝不足で本気を出せなかった。一番上のクラスであるS組になれなかったら殺すと何度も殴られた。受験に合格したんだから責めないでって甘えた。だから一番下のFクラスに決まってしまったんだ。

眠くて痛くて悲しい。そんな気持ちでいっぱいの入学式。周りは友達の輪ができはじめて賑やかな雰囲気。最後に友達と遊んだのはいつだったかな。中学校のクラスメイトなんて忘れた。


 部活動の勧誘がうざったい。ただでさえ歩くのがしんどいんだから道を阻まないで。先輩の大きな声が頭にガンガン響く。うるさい。

黒板に貼られた座席表通りに座る生徒たち。ここが今日から俺の生活スペースなんだ。当然知ってる人はいない。いたとしてもここには…──



「空!!サッカー部入ろう!」



…何でここにいるの。忘れたはずの幼馴染。鏡堂広太が教室中に聞こえる馬鹿でかい声で部活を誘ってきた。しかもサッカーってなに。そんな部類に見えるの?眼科行ってきなよ。

聞こえないフリをした。そもそも仲良くない。他に空って名前の人がいるんだ、きっと。



「おーい。空?俺ら〜、小学生からの仲じゃん?そろそろお近付きになりたいんだけど!」



見下してるのか。親が離婚して散々な家庭の俺を馬鹿にしてるんだな。絶対話してやらない。こんなやつとお近付きなんて一生御免。

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