side 夏木 あかり
「まさか付き合っちゃうなんて」
「ふふふーん。幸せ」
「おうおう。顔から滲み出てるわ」
昨日は失恋パーティーならぬカップリングパーティーをして、今日は恭子と語り合い。本当はデートしたかったんたけど、まさかの連絡先を聞き忘れた…。順番間違えすぎ。
「丹羽くんは何が好きなのかなー。どんな映画見るんだろう。音楽は何聴くかな?部活やってるのかな」
「本当何も知らないんだね。よくそれで付き合っちゃうよねぇ」
「いいじゃんいいじゃん。これから知ることが多い方が楽しいじゃん」
そのうち手繋ぎデートとかできる日が来るのかな。ワクワク!!
「…あんまり言いたかないけどさ」
「んー?」
恭子は真剣な表情で言いにくそうに続けた。
「いい噂聞かないのは本当だからさ。今は優しくても、なんかあったらすぐに言ってね。よその学校と連んでたり、怪我して学校来てたこともあるような人だから、本当に優しいかなんて分からないんだからね」
「…うん。ありがとう。恭子が親友でよかった」
…ちゃんと知らないで付き合って、もし何かあった時に一番傷付けてしまうのは恭子だよね。親友なのに、言うこと聞かないからだって。大丈夫って思いたいけど、今からでも知っていかないと。
丹羽くんは優しいよって、恭子に安心してもらうためにも。
*
…とは思ったものの…。F組の丹羽くんのことなんてみんな噂程度でしか知らないのは当然で…。
クラスの子に聞いても全然いい話を聞けなかった。
分かったのは本当、どれも最悪な情報ばかり…。
一年生の定期試験は全部欠席。
S組の人と怒鳴り合い。
不登校歴あり。
飲酒、喫煙歴あり。
外で絡んでいた他校の先輩が全員逮捕。などなど…。優しさのカケラもない。
んでも、私の生理事件の時は周りに気付かれないようにしてくれたよ。話す口調もすごく優しいよ。それになによりかっこいいよ。
「夏木ちゃん!俺、む」
「村尾でしょ!分かるから言わなくていいよ!」
「えっ、覚えててくれたの…?もしかしてこれって二人の愛の物が…」
「そんなの始まらないから!静かにして!」
ふーー。今日も元気すぎない?何なのこのテンション。いつになったらいなくなるのー?
「夏木ちゃん、俺とデートしよ」
「んーんしない」
「じゃあ、お出かけしよ」
「しない」
「それなら、添い寝だけでも」
「村尾!いい加減黙れや!」
「あひーーん!武藤さん怖い!」
恭子が追い払ってくれるまでずっとこれだからもう嫌…。はーあ。丹羽くんに会いたいな。
放課後、連絡先を聞きに言ったら断られてしまったんだけど…。あれ。私たち、付き合ってるよね。
「夢でも見てたんじゃないの?あんたそういうとこあるから」
「え、でも。え?嘘」
「待って待って待って待って。丹羽くん待って!」
チャラ男と並んで歩く丹羽くんのスクバを掴んで止めた。
「夢じゃないよね?夢?夢だった?」
「んー。先行ってて」
キョトンとするチャラ男を先に行かせて私と向かい合う。変に緊張するんですけど。
「携帯持ってないんだ」
「…………んん!?」
…ということで。大人しく恭子の家に来たんだけど…。
「いや、嘘でしょ。どう考えても。あんたやっぱ騙されてんじゃないの?」
「ぇ…」
「アカリが可愛いからって遊んでんだよ。許せない」
ちょっと待って!本当に?私たち付き合ってないの?あの抱擁は!?守るって言ってくれたよね!?
「やっぱ村…」
「それだけは絶対にない!!!」
翌日、真相を確かめるべく呼び出した。朝のHR前、いち早く本当のことが知りたいから。
「あの、私たちってどういう関係?付き合ってるよね?」
「…うん」
「携帯持ってないって、嘘だよね」
「…んー、嘘じゃない」
「嘘だよね!?今時持ってないなんて、ないじゃん!」
「たしかに」
「遊びだった?私があまりにもしつこかったから適当に遇らおうとしたの?」
「違うよ」
「じゃあなんでっ!?」
「本当に持ってないんだ。バイトしてお金貯めてる」
さすがにイラッとしたのかな。少し顔が怒ってる気がする。
「…本当に?」
「本当」
「じゃあ、丹羽くんは私のこと好き?」
私って嫌な女だ。あんなに好きで大好きで告白したのにこんな、試すようなこと言って。
「……」
「どうして私と付き合おうって思ってくれたの?ずっと断ってたのに急に」
「……」
「めんどくさくなったんじゃないの?」
「……」
だめだ。こんなこと言いたいんじゃない。嫌われたくなくて、好きが抑えられなくて。私だけが好きなのかなって不安なだけ。
「…そう思う?」
「………思いたくない」
付き合って数日でこんなめんどくさいことを言い出す女なのにそっと抱きしめてくれる人。
「じゃあ思わないで。持ってないって先に言わなくてごめんね」
どう考えても私が悪いのに謝ってくれる人。
悪い噂に惑わされて疑うなんて最低だ。




