side 丹羽 大空
「空!この後マックで勉強会するんだけど一緒にどう?」
授業終了後、同じクラスの明村に誘われた。学校に残るように説得してくれたのは明村だし、俺がちゃんと通えるようになったのもこいつのおかげだけど…。
「ごめん、鏡堂たちと約束があって」
明村たちとの勉強会に参加するならあの坊主との勉強会を取りたい。
「最近仲良いらしいな。…よかったよ。打ち解けたなら」
「うん、ごめんね」
本当にそう思っているとは思えない表情でも、表向きは送り出してくれる。家庭には恵まれなかったけれど、友達には恵まれていると思う。
*
「でさぁ、、夏木ちゃんに見せてもらったわけ。もうね、幸せ満開。俺の入る隙なかった。クラスのマドンナがさ…はぁ」
昼休みに言われたっけ。「なんで村尾に言うの!?うるさいのがもっとうるさくなった」って。村尾は何をしてもうるさいんだからどっちでも一緒でしょ。
「写真!すっごいよかった。空きゅん笑えよ!にっこりすまーいる!」
「うざ」
つい心の声が漏れたけれど村尾は怖がったり遠慮したりしない。KYと言えばそうなのかもしれない。
「言っとくけど!夏木は校内で一、二を争う美女だからな!間違ってもあんなことやこんなことするんじゃないぞ!」
「するだろ。彼女なんだから」
「うわ!もうしちゃったの?うわ、、うわ、、」
まだ何もしてないけど、村尾を泳がせるのが楽しい。
「俺の夏木ちゃんが、、」
「それ、今度言ったら夏木に話しかけるの禁止な」
「ねぇごめん!!俺の空きゅんの夏木ちゃんだよね!直接的に俺のじゃないよね!分かってる!!」
鏡堂と藤ノ木の前で村尾と戯れあっている間、二人は微笑みながら見守ってくれていた。
物事が順調に進んでいるのはその後に起こる絶望の前兆。俺の人生はいつだってそうだった。いつになっても、どれだけ"努力"した気でいても、そんなものはただの自己満で誰の心にも響かない、独りよがりの寂しい現実だけが残るのだった。
「定期試験に向けての勉強も始めないとな」
「1年の時、全部飛ばしたからさすがにやばい」
今の担任が進級の面で救いの手を差し伸べてくれたのも、絶望への第一歩だ。俺の人生にはいつもいつもとっておきの絶望が待ち受けているのだから。
「今の空なら赤点回避は間違いないと思うぞ。Fだし。赤点ライン低いだろ?」
「うん。体調崩さなければ」
「あれはお前。保健室行かないのが悪い。アホか」
「うるさ」
「なんか、仲良いね。むふ」
…村尾に言われて気付いた。鏡堂と喧嘩口調で話しているのに雰囲気が悪くない。これが俺たちの通常の会話の形になるんだろうか。…それはそれで、飾らなくて楽だな。




