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君がいたから  作者: HRK
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side 丹羽 大空



 いつも通り公園でたむろっていたらたまたま通りかかったっぽい男が近付いて来た。喧嘩も言葉も強くなって何も怖くないと思っていた。それなのに、あの男と、母親が目の前に来ると、何故か何も考えられなくなった。妹と仲良さげに手を繋ぐ男がニタニタしているのが気持ち悪い。俺の前に来たということは殴りたいんだろう。前ほど身長差も無くなっているし、しばらく会っていなかったから怖くもなんともないと思っていた。でも、長年支配されていた恐怖からはそう簡単に抜け出せないみたいだ。


 殴るなら、家にしてくれと情けなく声が震えた。


 須田さんたちに「荷物を取りに行く」と嘘の断りを入れて数か月ぶりの家へ向かった。


 ただでさえ硬直していたのに、玄関まで入るとより固まってしまった。声すら出せない。怖くないはずなのに。母親なんて、俺より遥かに小さい。こんな、俺が殴れば飛んでいきそうな小さい女なのに。


 こんな時ばかり鏡堂の暴言が重なって脳内がうるさい。ここは、俺を弱くする。妹が常にニヤニヤしているのも吐き気がするほどの嫌悪感。



 「お友達に見られるのは恥ずかしいもんな?理解のある優しい父さんでよかったなぁ。さて。ここは自由だ。どれだけ甚振っても誰も俺を止めないから。ここでは俺がルールなのさ」




 始まってしまった暴行に成すすべもなくされるがまま。消し去っていた嫌な記憶がすごい勢いでよみがえってくる。そうだ。どんなに着飾って外見を変えたって、俺は、鏡堂の言う通り無能で、一人じゃ何もできない奴。


 忘れていた死にたい気持ちが全身から溢れて、力が抜けた。


 殺してくれとただ、願った。









 意識が戻った頃には誰もいなくなっていて、もう二度と戻ってこなくていいように大事な印鑑だけでも持って出ようとほとんど踏み入った記憶がない居間へ行った。運良くキャッシュカードを見つけた。実父から郵送されたものらしい。まだ連絡を取り合っていたなんて意外。あの男は結婚しているんだろうか。していたとしても父親面されるのが不快なことには変わりないけれど。


 さすがに印鑑の場所は分からず、キャッシュカードだけを持って家を後にした。どのみち自分のキャッシュカードは持っていた方がいいだろう。



 この時にもっと頭働かせてちゃんと必要なものを回収していれば、あんなことにはならなかったのだろう。つくづく頭が悪いな。

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