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君がいたから  作者: HRK
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espoir

side 丹羽にわ 大空おおぞら




 俺の父親はエリート商社マン。顔良し・頭良し・年収良し。周りに集まるのもまたそういう『デキる男たち』。小さい頃、連れて行ってもらった会社のパーティーは"いかにも"な人がたくさんいた。

 いかにも金持ち。いかにも仕事できます。いかにも計画通りの人生歩んでます。中でも特別親しいのが鏡堂きょうどう 広太こうたっていうやたら声がでかくて鬱陶しいヤツと、藤ノふじのき まさしっていうすっごい静かなお坊ちゃん二人の父親。


 ゴルフや飲み会、BBQに旅行まで。金持ちだから無限に遊んでいた。普段化粧をしない母親も、誘われたらバサバサ厚化粧してラブラブな夫婦を演じてた。家族の円満が仕事に繋がるのだと何度も聞かされたっけ。



「マミ、飲み過ぎじゃないか」

「いいじゃない。ちゃんと二人の世話したでしょ」



 マミは母親の名前。会社の人とのお食事会にお呼ばれして俺と妹のサキの面倒を見ていたからと、滝行のごとくお酒を飲んでいる。横に座っていただけの俺と妹、そんなに手がかかる?仲が悪い訳ではないけど円満ではない我が家。鏡堂や藤ノ木の家みたいに金持ちでもない。稼いでも稼いでも母親がギャンブルに溶かすから。お金なんて、一瞬で消えるよ。





「マミ、またあの金を使ったな」

「はぁ?またその話?あれは夫婦のお金なんだから使ってもいいはずでしょ」

「あれは俺たちの金じゃない。会社の金だ」



 小学四年生になった頃には毎日喧嘩になっていた。父親は絶対に手を挙げるような人じゃなかったけど母親は違った。イライラすると物に当たり、壊す。そして父に向かって投げる。喧嘩が収まったら父が一人で片付けるんだ。ねえお父さん。どうしてお母さんと結婚したの?

子どもながらに抱いていた疑問はすぐには聞けなかった。



「おい。いい加減ギャンブルは辞めるって約束したよな」

「んあ?なにそれ。知らなーい」



 ダイニングテーブルとセットになってる椅子に片足を上げてポリポリ柿ピーを食べる母と、パチンコ店の袋を見て怒る父。また喧嘩。最近毎日だよ。前はこんなに仲悪くなかったよね。



「昨日約束したのにどうして破るんだ」

「約束なんてしてないわ。あんたの妄想でしょ」



ぐびっとビールを流し込む母に、父は初めて手を挙げた。

缶ビールが吹き飛んで大きな音が響く。サキもびっくりして俺にしがみついてきた。…お父さんが、怒った。



「ちょっと、なに?えっ、殴った?は?無理なんですけど。通報するね。エリート商社マンが妻を殴って刑務所とか超笑える。ぶはっ!だっさぁ」

「通報したければすればいい。お前は子どもを置き去りにして会社の金をギャンブルに使った。何度警告しても辞めないからだろう。いい加減にしてくれ」

「ねーえ。ビール無くなっちゃった。買ってきて」



酔ってるの?酔ったらこうなるの?テンションの波が激しくて怖いよ、お母さん。いつからこんな人になっちゃったの?なにも最初からこうだったわけじゃない。優しかったお母さんはどこに行っちゃったの?俺は覚えてるよ。優しかったお母さんに会いたいよ。

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