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君がいたから  作者: HRK
112/152

side 夏木 あかり





 昨日、無事に空が試験を終えて結果が張り出された。結果を見るや否やずーんと一人落ち込む鏡堂をみんなが笑う。


 「いつも二位だったのにいきなり七位に落ちた気持ちはいかがですか?」

 「今のお気持ち聞かせてください!」

 「今回は何が原因だったのでしょうか!?」


 S組の教室で他クラスの私やアコちゃんも加わり、大盛り上がりだ。すっかりいじられキャラになった鏡堂を男子がいじり倒す。


 「クソうぜぇ。お前ら俺の足元にも及んでない癖になんなんだよ」

 「いやいや、鏡堂くんも優くんの足元から遠ざかってますよ?ギャハハハ」


 藤ノ木は相変わらず堂々の一位。鏡堂の点数は七位でも十分すぎる程だけど、本人は分かりやすく落ち込んでいた。


 「つーか俺のことも名前で呼べよ鬱陶しい」

 「適当にキレポイントを探してるらしい鏡堂広太くん」

 「当たるなよ、鏡堂広太くん」


 主に斎藤とS組の伊藤くんにおちょくられている。

 私とアコちゃんの点数は平均並みで変わりない。斎藤は来年も余裕でS組に残れそうな得点だった。


 「まぁそんなに落ち込むなよ。この調子なら俺も来年は、ウフッ。S組…うふふふ」

 「あーお前は肝心なとこで失敗するヘタレだから留年」

 「ねぇ!?20位なんですけど!?学年で上から20番目なんですけど!?」

 「わーったわーった。学年13位の俺様が教えてやるからさ」


 鏡堂は斎藤と村尾のボケツッコミに反応する元気もなく、途方に暮れていた。


 「こんな点数取ったの人生で初めて」

 

 いつも自信満々な人の切ない表情は新鮮だった。



 「それよりも!空!!」

 

 村尾の大きな声で一瞬緊張感が走る。空の点数は既にみんな確認済みだ。前回の試験でカンニングを疑われて一時最下位だった空が、今回…。


 「来年はA組余裕じゃね!?だってほら!42位だって!!!」


 記念にとスマホで撮影した順位表の空の欄を一人一人の目の前に見せつける村尾の声でどわっと歓声が上がった。


 「本当にすごい!!早く帰って伝えなきゃ!!」

 「あとちょっとで村尾抜かせるぞって言わなきゃ」

 「ねぇ!?さっきからなんなの!?俺の悪口言わないで!?」







 「夏木ちゃん、夏木ちゃん」

 「んー?」


 六限のLHRロングホームルーム前の休憩時間に村尾がニヤけながら私の席に近付いてきた。


 「このあと文化祭のあれこれ決めるじゃんか〜」

 「うん」


 体をくねらせていつも通りちょっとキモい。


 「クラスの出し物でさぁ、メイド喫茶やりたいんだよね」

 「提案してみたら?」

 「いやさぁ、俺なんかが言ったところで変質者として流されると思わない?」

 「たしかに」

 

 変質者の自覚があったことに驚いて吹き出しそうになってしまった。ギリギリセーフ。なんとか耐えた。


 「そこはお世辞でもそんなことないよって言ってほしかった…」

 「え?ごめんね」

 「それはいいんだけど、夏木ちゃんが言ってくれたら聞き入れてくれると思うんだよね」

 「あぁ、なるほど。私が言えばいいの?」

 「頼んでもいい?俺、高校生になったら絶対メイド喫茶やるって決めてて…」


 昔からの夢なんだと、瞳を輝かせて語るから簡単に信じてしまった。私は特にやりたいこともないし、面白そうだと思って…。



 「メイド喫茶か!じゃあ夏木が看板娘で決まりだな!立案者だし!ね?いいよね?他に案ある人ー?いないね、よし!決まり!」



 「え?」



 文化祭委員の男子が捲し立てるように決めてしてしまった。反射的に村尾を見たら"してやったり"と言わん顔でケラケラと笑っている。


 …騙された。




 「恭子ちゃんは料理得意だから裏方いく?」

 「あーそうだね」

 「そしたら恭子ちゃんに教えてもらいながらやりたいから私も裏方いく!」

 「あたしもー!」


 離れた席で会話する"親友"の声に、ちょっとだけ落ち込んでしまう。私と一緒にメイド服を着てはくれないと言われているみたいで。


 「夏木ちゃんのメイド服姿を写真撮って現像して額縁に入れて飾ったら…教室内がパァッと明るくなるよね!?」

 「どっかの校長かよ」

 「普通に変態発言」


 男子たちは知ってか知らずか、恭子の声を掻き消すように盛り上がっていた。


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