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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太




 「じゃあ、帰ったらご飯食べて勝手にしといて」

 「ん」



 担任と話した翌日、俺より後に家を出る空に昼食兼おやつとして用意した辛い炒飯を指差した。みんなが授業を受けている間に試験を受けることで合致。弁当を持参するよう言われたが学校で食べる気にならないとのことで、帰宅してから、ということになった。

 試験対策については所謂、一夜漬けというやつになってしまったけれど、夏休み期間中も継続的に勉強会をしていたからきっと上手くいく。

 今回の試験で来年のクラス分けがおおよそ決まる。試験結果で挽回しようと思えばできないこともないが、実力勝負だからとんでもない努力が必要になる。クラス分けが全てではないとしても、クラスによって学べる内容が変わるから大学進学を考えている人なら、なるべく上位クラスをキープすべきだ。

 俺はなんとしても空をS組、ないしA組まで引き上げたい。その方が目の届く範囲内だし、何より楽しそうだから。小、中、高と一緒なのに、同じクラスになったことはないけれど、幼馴染の勘で絶対楽しくなると思い込んでいる。楽しさ重視で生きていく人生もあるのだと知ってほしい。


 

 学校が近付くと周囲には文化祭についての話題で盛り上がる生徒が多くいる。一応進学校の部類にある学校でも、それぞれのイベント事はそれとして楽しむ。『優が無理しない程度に行ける学校』だからこその空気かもしれない。もっと上だったらこの時期、受験に向けてもっとカリカリしていたかもしれない。

 俺は受験が近いという理由で情緒が不安定になるのを好まない。気持ちは分かるが、勉強は日々の積み重ねであり、例外を除けば自分主体で未来を選べるはず。環境のせいにしたり他人のせいにすると周りの空気まで変えてしまう。空以外にも複雑な理由で、いくら頑張っても努力が報われない人もいるだろうけれど、大概自分の選択で未来が決まるのだから、できない理由を他人に押し付ける空気感が、少なくともS組にはほとんど無いのが救いだった。



 「大学、行かなきゃいけないかな」

 

 教室で自習する優がポツリと呟く。いつも机に向かうだけのガリ勉サイボーグの言葉とは思えない発言。大学卒業までが優の歩むべき道なんだと思ってた。


 「目的に依るんじゃね」


 知識より技術な人なら専門学校に行くだろうし、将来の目標がない人は大学で勉強しながら夢を見つけるとか。


 「親的に」


 優の親がどう思っているかは知らないけども。少なくとも大学卒業までをレールだと思っているんじゃないだろうか。親のために行くか自分のために行くかで選択肢はかなり変わる。


 「最終学歴高卒ってなったら親というか、家族が一番驚くだろうな」

 「そうかな」

 「こんなに勉強できるのになんで?ってなるだろ」

 「できるんじゃなくて求められるからしてるだけなんだよなー」

 「珍しいじゃん。人間みたいに悩んじゃって」

 「広太はもしかすると勉強するのが好きなのかもしれないけど俺は、できることなら何もしたくない。広太みたいな人が欲しいものを与えてくれて、自分では何もしない生活がほしい」

 「プロポーズ?」

 「ほんと。広太がほしいよ。ロボットとして」

 

 喧嘩を売られているのか微妙なラインで話すから突っ込むに突っ込めない。ガリ勉サイボーグでも、人から羨ましがられるような成績の人でも、生きている限り悩みはある。


 「今すぐ教科書を投げ捨てて、自由だーって叫びたい」

 「叫んでも虫の息だろ」

 

 仮にも目標としている人からそんな投げやりな事を言われると茶化さずにはいられなかった。


 「空も、広太くらい分かりやすかったら良かったね」

 

 何でもお見通しと言わんばかりに微笑む優には、一生叶わない。



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