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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太




 空が目を覚ましたのは次の日の午前0時過ぎ。脳震盪による意識障害だから念の為、二日間は絶対安静だそう。

 

 空にはまだ話していないけど、父さんは離婚して家を出た空の父親についても調べている。せめて18歳までの間だけでも、書面上の引き取り手になってもらうためだ。

 離婚する前に勤めていた会社は元嫁からのストーカー対策で辞めたのではないかという話だった。


 母親と妹は何故か狂っているが、父親はまだまともな印象。幼少期に何度か会ったきりだけど、父さんが話す空の父親像は誠実だった。

 誠実な人が子どもを置いて出ていくのは矛盾しているような気もするけれど、連れていけない事情があったのかもしれない。


 企業がいくつか集まるパーティーやバーベキュー、旅行、家族ぐるみで何度か会っていたのがパッタリとなくなり、何年も連絡を取っていないからどこで何をしているのか、皆目見当もつかないと困っている様子だった。

 父さんの広い人脈を駆使しても見つけるのは困難なのだろうか。




 *


 

 絶対安静の二日間を病院で過ごした次の日には、本人の希望で半ば強引に退院。

 一日中、一人でいると気がおかしくなりそうだったらしい。

 『退院したいけど学校には行きたくない』

空が言うなら仕方ないと、父さんが医者に頼んでくれたのだ。実家に帰る訳ではないし、その方が気が休まるなら。


  しかし結局、俺の家にいてもずっと部屋に閉じこもっているから、一日中一人でいるのは変わらなかった。一人でいたくないけど誰にも会いたくないという複雑な葛藤を抱いていて、どうにかできないものかと悩む。


 夏木はもちろん、村尾や斎藤とその彼女まで心配している。おまけにS組の伊藤や巌という、直接の関わりがほとんどないような人にまで様子を聞かれた。

 空は最下位クラスのF組だけど、空の内面をよく知っているのはS組の人達。俺は密かに、来年度のクラス分けで空がS組にまで上り詰めたらいいのにと思う。


 月末になり、中間試験も後半。テスト期間で昼過ぎに帰宅する日が続いたある日、斎藤がどうしても空に会わせてほしいと頼み込んできた。

 どうやら居酒屋バイトの初任給が支給されたらしい。給与は手渡しで期限内に取りに行かなければならないそう。

 それを伝える手段がなく、斎藤が会って伝えたいんだそうだ。積もる話もあり、何より顔が見たいと話していた。


 トイレのために部屋を出る時にすれ違うしか接点がなかったこの期間。意を決して部屋のドアをノックした。


 「空ー、入るぞ」


 返事を待つ気は毛頭ない。言い切る前にドアを開けた。


 「斎藤が会って話したいって。給料手渡しだからどうしようかって」

 「…………」

 「呼んでいい?」

 「…………」


 頭まで布団を被っている空の、恐らく頭付近めがけて声をかけるが返答はない。

 九月末とはいえまだ暑さが残る。湿度の高い部屋の中で布団にくるまって熱中症になったら大変だ。エアコンを除湿モードで付けよう。


 「なんか食べたいもんない?何だったら食べられそう?」

 「…………」


 退院してから今日まで、ほとんど何も口にしていないから内心焦りながら聞くがやはり返事はない。

 頭に向かって喋ってるから聞こえてない訳ではないと思うんだが…。


 「斎藤呼ぶけどいい?超嫌だったら動くか返事して」

 「…………」


 無反応。


 「呼ぶぞ。呼ぶからな」


 後で責められないように何度も念を押して逃げた。俺は言ったからな。ちゃんと許可とったからな。


 

 

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