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君がいたから  作者: HRK
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side 鏡堂 広太

 雨が止むまで自習することにした俺たち優等生。いや、俺は帰れるけどね。傘を忘れた哀れな優に付き合ってやろうっていう慈悲の心よ。入学早々授業に遅れる事はないから先読み精神で先へ先へ進みたい。勉強は習慣だから少しサボったら途端に面倒くさくなるよね。

 誰もいない放課後の教室に雨の音とシャーペンの擦れる音だけが響く。数学の公式がアホ程多くて嫌になる。カチッとはまれば楽しいのだけど知らない公式が次々と出てくるのがもどかしい。全部一度に覚えてしまいたい。公式の使い方一覧があったら便利なのに。インターネットにはあるんだろうけどわざわざ調べるのも面倒だ。気分が乗らないな。英語にしよう。

 幼い頃から海外に行く機会が多く、聞き取りは得意だ。少しなら話せる。知らない文法をフィーリングで交わそうとすると周囲の大人に笑われる。英語も毎日やらないと一気に衰えてしまうから思い出したときは優と英語で話してみるんだけど優は俺より話せるからマウントを取られるのが癪だ。

本人にその気がないから尚更腹立たしい。


「明日小テスト」


 優が思い出したかのようにぽそっと呟いた。小テストなんてどうってことなくね。自分の名前を答えるくらいの問題じゃん。


「暇なんだよね」


独り言かと思って返事をしないでいたけどどうやら会話だったらしい。一定のトーンで細々と喋るから言葉を返していいのか分からなくなる。


「暇ねえ」


お互い教科書に落とした目線はそのまま。


「小テストに20分」

「うん、そうだね」

「長すぎる」


優のしょうもない愚痴だった。表情や声に機嫌が現れないから、ここまできてようやく気持ちが分かる。頭はいいかもしれないけど表現力は俺の勝ち。ありがとう。


「雨止んだ」

「まだ」

「あそう」


 頼むからクエスチョンマークを付けてくれ。誤差程度にしか感じられない語尾の上がりを聞き逃さなかった俺を褒めて。

 沈黙が流れる。シャーペンの擦れる音と教科書をめくる音。雨上がりを待つ必要なんて俺にはないけれど、たまにはこういう日もいいかもしれない。



 雨が止んだことに気付かないまま学校にいられる限界の19時まで勉強した。一緒に下校しても特に話すことはない。寄り道することなくまっすぐ帰るだけ。雨上がり独特なにおい。明日は晴れるかな。


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