表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/292

サンタしゃんに菓子折を ⑮


「それじゃいくでしゅよ」


アパートに帰ってからアポロが綺麗に飾り付けたクリスマスツリーの電源を入れる。


「「「ワアーーーーーー」」」


三人は綺麗に点滅を繰り返すツリーにウットリする。


「綺麗ねアポロ。よく頑張ったね。サンタさん喜ぶよ」


「これで今日の夜はサンタさん来てくれるでしゅ。楽しみでしゅ」


「そうだなこれで見に来ねえって言うんなら、家まで追っかけて俺が赤鼻のトナカイとお揃いになるように鼻パン喰らわせてやるぜ」


「駄目でしゅよ。せっかく昨日のお詫びに菓子折も用意してるでしゅのに来てくれるに決まってるでしゅ」


東九条家から帰ってくる途中、「ハッ!!サオリン、菓子折買いましゅたか?買ってないならコンビニに寄って買って欲しいでしゅ」といわれた沙織は、「えっ菓子折ってコンビニに売ってるの?」と疑問に思いながらもレジの後ろ側をみると確かに菓子折が飾っていて買う事が出来た。沙織の中で昼ドラさえ見ておけば日本の全てが分かるという、昼ドラ万能説が浮上してきた。


帰ってくるとアポロは、クリスマスツリーの飾り付けと共にサンタさんへのお詫びの手紙を一生懸命書いていた。


「何て書いたの?」


と沙織が聞いても「秘密でしゅ」と言って見せて貰えなかった。


「さあ、料理も準備出来たし、一日遅れだけど、メリークリスマ~ス!」


「メリークリスマス」


「メリークリスマスでしゅ~」


アダムとアポロの二人は沙織特製の唐揚げを美味しそうにパクパクと食べる。


「サンタさん、早く来ないでしゅかね~。サンタさんにもサオリンの美味しい唐揚げを食べて欲しいでしゅ」


「まあ!!、ありがとうアポロ。でもサンタさんは世界中の子供達にプレゼントを配ってるでしょ?だから私達の所に来るのは、ずっと夜遅くになっちゃうの」


「アポロがこんなに準備して待ってるのに早く来いってんだよなあ。昨日、撃っちまったのも夜遅くに来るのが悪いんだ。自業自得ってもんだぜ」


「今度は撃っちゃだめでしゅよアダム。アポロがアダムのこと謝りましゅから、じっとしてて欲しいでしゅよ」

「へへへっありがとよ。お前は本当に優しい良い奴だぜ」


沙織とアダムはアポロの成長を微笑ましく思う。


「でもサンタさんはまだまだ来ないから、取りあえず両手に抱えている菓子折を置いて、トランプで遊んだり、ケーキを食べたりしましょ」


「そうでしゅね。夜は長いでしゅ。今日はババ抜き負けられないでしゅ。お風呂掃除している間にサンタしゃんが来たら大変でしゅ。アダム、今日こそアポロが勝つでしゅよ」


「おっ生意気に言うじゃねえか。掛かってこいよ。氷狼にカチコチにされた時のように、息も出来ないくらい打ちのめしてやるからよ」


「今日のアポロはひと味違いましゅ。アポロには絶対に負けられない理由がありましゅ。サンタしゃんに菓子折を渡すという理由が!」


アダムとアポロの間で火花がバチバチと飛ぶ。いまだかつて負けられない理由がサンタさんに菓子折を渡すからというものがあっただろうか。おそらく史上初ではないかと沙織は思う。


でもアポロがサンタを心から信じ、サンタに会いたいという純真な強い気持ちに溢れ、強く輝く瞳に、二人は今日のババ抜きは番狂わせが起きる予感がした。




「ギャアアアアアアーーーーーーーババでしゅーーーーーーー!!」


アダムはアポロの絶対に負けられない理由など、バキバキにへし折り、いつも通り風呂掃除はアポロの仕事となった。


「おうアポロ、俺からのクリスマスプレゼントだ。しっかり時間をかけて綺麗にするんだぜ」


アダムはニヤニヤとしながらアポロに言う。


「悔しいでしゅ。すぐ洗ってきましゅからサンタしゃんが来たら教えて欲しいでしゅよ」


「おう!教えてやるよ。早く行ってこい」


「もう!今日くらい負けてあげても良かったんじゃない?」


「一抜けしたサオリンが言うなよ」


「わっ私は、小さい頃から負ければ死ぬっていう西九条家の特殊な環境で育ったというか・・・」


「ハハハッ良いじゃねえか。好きだぜそういうの。誰が相手でも真剣に挑んできた者には真剣で返すのが礼儀だ。わざと負ければ、もうアポロは気付くぜ。その方がアポロを馬鹿にしちまう。勝ったときの喜びを半減させちまう。それにサオリンも気付いてるだろ。そろそろ俺達も負ける時が近づいてきたって」


「そうだね。絶対大丈夫だと思ってひいたのがババだった時は、何かアポロの成長が嬉しくなっちゃってニヤッとしちゃった。それが私にババを引かせて喜んでいたアポロを、何で喜んでるのって困らせちゃったっけ」


「ハハハハハッそりゃあアポロに悪い事しちゃったなサオリン。おいっアポロ!今外に赤い服を着た奴が!」


沙織と話していたアダムが突然大声でアポロを呼ぶ。


「どこ?どこでしゅか?」


アポロはスポンジを持ったままの泡まみれの姿で、急いで窓に駆け寄る。


「あっすまねえ。通りすがりのカズレーザーだったわ」


「もう!アダムは!しっかりして欲しいでしゅ。でも呼んでくれてありがとうでしゅ」


アポロはお風呂場へトテトテと走って戻って、再びゴシゴシとバスタブを掃除する。


「コーラ、悪い事しないの。アポロをからかっちゃ駄目でしょ」


「ハハハッ悪かったよ。でもあいつカワイイだろ?ついやっちまうんだ」


「それは同感。今もスポンジ持ったまま窓まで走ってきて超可愛かった。それになんでいつも泡だらけになるの?いつも笑っちゃう」


二人はアポロのカワイイエピソードを言い合って笑う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ