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サンタしゃんに菓子折を ⑭

「サヤカ、沙織さんの縛鎖を見たな」


「はい見たッスよ。精霊でも縛鎖なら簡単に拘束できるなんて。早くサヤカも縛鎖を使える様になりたいッス」


「・・・サヤカ、お前に一つ注意しておく事がある」


「何スかアリタン?」


「沙織さんを信じるな」


「ちょっどういう事ッスか!」


「縛鎖であれば精霊を簡単に拘束できる。それは嘘だ。いや沙織さんは嘘を言っている自覚はない。沙織さんが無詠唱で簡単に出した縛鎖だが、ここ総本家では当主が再現出来るかどうかのレベルだ。私はみとれたよ。その美しさに。沙織さんは特別なことは何もしていない、丁寧にすればいいと言ったが、私にはどうやればいいか全然分からない。だから気を付けろ。失礼な事を言うが、沙織さんは教えるのが下手だ。それは我々とレベルが違いすぎるからだ。サヤカ、お前は私の修行が終わった後、自分が出来る事、出来ない事を沙織さんに正確に伝えろ。間違っても何々の術を覚えたなんて口が裂けても言うな。防御の術を覚えたならこの程度の術は跳ね返せるだろうと解釈されてしまえばお前は死ぬ」


「何スかそれ!メチャクチャじゃないスか!」


「それが西九条家だ。サヤカ、お前、アーサー探偵事務所辞めたほうがいいぞ。いや事務とか危険がない仕事をするなら良いんだがな」


「・・・今日それ2回目ッスけど、アリタンがサヤカの事を心配してくれてるのが良く分かったッス。でもサヤカは沙織さんの隣に立ちたいッス」


「そうか、その言葉を忘れるな。今から冬休みが終わるまで気の休まる時があると思うな。今からお前に呪いをかける。常にオーラを、呪いを弾くイメージで纏え。気を抜けば死ぬぞ」


「こっちもッスか!デッドオアデッドってそんな選択を中学生に―」


「隣に立ちたいんだろ?」


「じょっ上等じゃないッスか!サヤカに呪いを倍返しされて、昨日みたいに東九条家を走り回るアリタンを見るのが楽しみッスよ!」


「ほっほう」


沙織と写真を撮ったり、名前で呼ぶ許可を得た嬉しさで、忘れかけていたクリスマスの憎悪を思い出し、白百合の額に青筋がいくつも現れる。


「三日だ。三日は手加減してやる。死にそうになったら止めてやる。何が悪かったか教えてやる。返し方も教えてやる。それ以降手加減はせん。サヤカ、お前の息の根を止めてやる」


「この天才サヤカに三日も時間をくれるッスか。ちょっと両親に電話していいッスか。サヤカはまだ喪服を持ってないんで用意してもらわないといけないッスから」


「フフフフフッ」


「ハハハハハッ」


「「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――」」


二人は食堂で不気味に笑い合い、そして同時に立ちあがり、道場に消えて行く。


クリスマスの因縁から端を発したこの呪い合戦は、後にクリスマスウォーと名付けられ東九条家に代々伝わっていくことになる。




アダムは技術開発部にいた。研究職員とあーだこーだ言い合っている。


沙織とアポロは邪魔になるだけだと思い、研究室の外の長いすに座ってジュースを飲んで待っている。


「だからここをこうして、全てをデジタルにするんじゃなく、ここはアナログでやればいいだろ?別にネットを介した正確な情報なんていらねえんだよ。パッと見て分かることが重要なんだ。これだと情報量が多すぎて表示に時間がかかるし、見にくい。そもそもネットを使えないとアウトだ」


「なるほど。確かに・・・分かりました。これなら不要な部品を排除すればアダム様の言う機能を詰め込めますね」


「出来ればそれを四個欲しいんだが、取りあえず一個早く仕上げて貰えねえか?」


「良いですよ。これなら部品を組み替えるだけですから、30分もあれば終わります」


「宜しく頼むよ。俺は外でサオリン達と待ってるからよ」


ふぅ~と一仕事終えた感を出してアダムが研究室から出てくる。


「アダムお疲れ様。結構揉めてたけど大丈夫だったの?」


「ああ解決したよ。俺達の分も含めて四個注文しといたよ。とりあえず三十分で一個作ってくれるって言うから、それをサヤカにクリスマスプレゼントとして渡そう」


「わかった。ねえそれで何をプレゼントするの?」


「時計だよ。ただし、俺達四人の位置情報と、霊的存在の接近を教えてくれる機能を盛り込んだ東九条特製スマートウォッチだ。俺が加えて欲しかった機能は俺達四人の相対的な位置情報、つまりサオリンがそれを付けると、サオリンを中心に、アポロが、サヤカーンが、俺が一キロの範囲でどこにいるかわかる機能だ。これがあれば、アポロが迷子になっても一キロの範囲内にいればすぐに見つけられるし、サヤカーンに霊や精霊が攻撃しようと近づいてきたら俺達の時計に警告が入るからすぐに誰かが駆けつけられる優れものだ」


「すごいじゃない!アポロやサヤカちゃんには今一番必要な機能が入っているし、私も尾行なんて自信がないからこれがあれば、尾行を撒かれても、アダムがいる方向に行ったからフォローしてって言えるし最高じゃない」


「ハハハッサオリンもやる気が出てきたな。良いことだぜ。でも値段も最高でな、一個120万円だ」


「わぁ高~い。でも良いよ。アポロがいなくなった時の不安をまた味わいたくなんてないし、サヤカちゃんはまだ私達が守らなくちゃいけない。その事を考えれば安い買い物よ」


「そう言ってくれると思ったぜ。でもオッちゃんから貰った200万アッという間に使っちまったな」


「そうね大家さんきっと笑ってるね」


「これからサヤカーンにプレゼントを渡してくれるよう頼みにオッちゃんに会いにいくんだろ?だったら一本分の値段くらい値切ってやろうぜ」


「程々にね」


それから時計をラッピングまでして貰い。大家に渡しに行くと、アダムのアイデアを大いに気に入り、時計二本分の代金をまけてくれた。またアイデアがあれば是非持ち込んで下さいとのことだった。それからアポロに見つからないように、沙織からのクリスマスプレゼントも渡してくれるようお願いしておいた。


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