サンタしゃんに菓子折を ③
「じゃあアダム、作戦通りお願いね。今から私はエイトパッドシリーズとアダムの欲しい物を買いに行くから、アポロとそこら辺をウロウロしながら三十分後にはフードフロアにあるワックの前に来てね」
「ああサオリン任しとけ」
沙織は、ピカチーの前で目をキラキラさせているアポロにも伝える。
「ねえアポロ、私は一度荷物を車に乗せてくるからアダムと一緒にいてね」
「了解でしゅサオリン」
沙織は急いで駐車場に行き、トランクに荷物を詰め込む。
それから家電売り場のヘルス器具売り場に早足で向かう。
最初、エイトパッドが見つかるか不安だったが、そんな不安は杞憂だった。
なぜならそれ専用のコーナーが設けられていたからだ。
沙織はすぐにアポロが欲しがった商品を見つけた。
買い物カゴに入れようと値段を見ると各三万円と書いていた。
「えっホントに!そんなに高いの?お腹と腕と脚で十万円じゃん!私一度にこんなに高い買い物するなんて初めてだよ~トホホ・・・。まあ氷狼移送の報酬が入るし、アポロが喜んでくれるなら。強くならなくても良い、アポロが明るく元気でいてくれるなら」と、沙織はプレゼントを受け取るアポロの喜ぶ顔を想像し、買い物カゴに三種類のエイトパッドシリーズを入れた。
そしてレジに向かおうとする沙織は、ツリーよりこっちの方が恥ずかしいなと思いながらも、
アポロの喜ぶ顔を思い浮かべ再び歩を進める。
その時、沙織の目に一つのポップが目に入る。
「こっこれは!」
「サオリン来ねえな。時間短かったか?包装とかで時間かかってんのかなあ?あんまり長えとアポロが心配するから三十分にしたんだけどなあ」
アダムは、フードフロアのワックの前で独り言をいいながら、ワックのハピネスセットのおまけのオモチャを飽きずに見ているアポロと一緒に沙織を待っていた。しかし、沙織は約束の三十分を五分過ぎてもまだ現れない。
「ねえねえアダム~。サオリンは本当にここに来るでしゅか?」
「ああ間違いねえ。このデパートにワックはここにしかねえからな。でもここは広いから迷ってるのかもな」
「もうしょうがないでしゅねサオリンは!迷子なんて恥ずかしいでしゅ」
「お前が言うなよ」
「もう!イジワル言わないで欲しいでしゅ」とアポロはアダムをポカポカと叩く。
そんなやり取りをしていると、遠くから沙織が走ってくるのを二人は見つけた。
「遅えぞサオリン!心配したぜ」
「ごめんね二人共」
「サオリン、迷子になってたでしゅか?アポロが付いていった方が良かったでしゅ」
「えっ迷子!?アポロじゃあるまいし迷子になんかならないよ」
「二人共ヒドいでしゅ。アポロは日々成長してましゅから、もう迷子になんかならないんでしゅからね!」
アポロは頬を膨らませて怒る。
「ごっごめんアポロ。遅くなって心配かけたね。でも機嫌直して一緒にメロンソーダ飲もうよ」
「そうでしゅ。早く皆で飲みたいでしゅ!今日アポロはビックワックバーガーとハピネスセットが食べたいでしゅ。サヤカーンにもそれを持って行ってあげるでしゅ」
「でもサヤカちゃんは皆でご飯食べてると思うからいらないかもよ。ジュースだけにしといた方が・・・」
「いやサオリン。買っていこう。俺達は昨日、初依頼達成パーティーやったが、サヤカーンとはまだやってねえ。確かにサオリンの言う通りハンバーガーはいらねえかもしれねえから、昼食後のデザートとしてアップルパイなんかを持って行って祝ったら喜ぶんじゃねえか?とりあえず、俺達もセットにアップルパイ付けて向かおうぜ!アリタンが修行付けてくれてるんだったな。俺達だけ喰ってたら気まずいから、とりあえず十個買って行こうぜ」
「うんそれがいいね!そうしよう」
三人は各々が好きなバーガーセットとアップルパイを十個購入し、東九条家に向かった。
時間は遡り、昨日、サヤカはその後、白百合に武道場に連れてこられた。
「ここは東九条家の武道場だ。主にここで2週間修行し、お前をクズから荷物持ち程度にする。私は実践主義だ。陰陽師として必要な座学などは午前の授業に参加して覚えろ。荷物持ちに必要な事はこの場で教えて即実践だ。組み手も実戦を想定して行う。耐えられなければお前は当主の言う通り成人式を迎えられないだろう。お前はハッキリ言ってアーサー探偵事務所の中で、ブッチギリで役立たずだ。2週間でクズのままだったら安心しろ、西九条様の足手まといになる前に、私が成人式前に火葬してやる」
そういうと白百合の手の平の呪符から炎が出現し、
龍が天に昇るかのように天井付近まで燃え上がる。
サヤカはその熱に当てられ、一瞬で体中から汗が吹き出す。
しかし口からは笑みがこぼれる。
「望むところッス。ここを出る時にはアリタンに私の荷物を持たせてやるッスよ!」
サヤカの言葉に白百合の額の血管が浮き出てピクピクしている。