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氷狼デリバリー ⑱

翌日、沙織達、アーサー探偵事務所の所員は、見送ってくれる山田達に謝罪をし、


修理を終えてピカピカにされた車に乗りこんで逃げるように帰った。


「サオリン!そういうとこだぞ!ホントお前のそういうとこが駄目なんだ!」


アダムが沙織に語気を荒立てて説教する。


「だって東九条の人達がどうしてもっていうから。それに私、酔ってたから覚えていないのー」


沙織は酔いが醒めた今、


アダムから昨日の自分の行動を聞かされ猛烈に反省している。


「俺は何度も止めろっていったんだぞ。それなのにサオリンお前は『もう、アダムったらノリが悪いよ!お尻フリフリしてた時の気持ち思いだして!』って俺を放り投げて精霊化したんだよ。もう間に合わないと思った俺はサヤカとアポロを避難させるんで精一杯だったんだ」


そう、沙織は酔いに任せて、精霊化したのだ。


しかも調子に乗って強めに。


山田達五人がそれに気付いて止めようとしたが間に合わず、


宴会場にいた陰陽師達を、山田達五人と師範格の数名を残して全員病院送りにした。


「山さん達が耐えてくれて助かったよ。そのあと山さん達と俺、アポロ、サヤカの全員が必死で救急車が来るまで看病したんだぞ。サオリン、山さんの宴会の挨拶覚えてるか?『今回は宴会でこんな美味しい料理を食べれてホントに嬉しい。病院でお前達に豚汁を食べさせずにすんでホッとしたわ』って氷狼の代わりにサオリンが送ってちゃ世話ねえわ」


沙織はアダムの言葉にさらに凹む。


「ホント昨日は大変だったッスヨ。昨日破いたビラの『所員が引き起こす厄介事に巻き込まれる苦労人』ってやっぱり間違ってなかったッス」


凹む沙織にサヤカが追い打ちをかける。


「もうアダムもサヤカーンもサオリンをいじめるのは止めて欲しいでしゅ。酔っ払うまで飲ませた陰陽師しゃん達も悪いでしゅ。でもアポロが宴会場に戻った時に皆が倒れているのに、『山しゃん達の気持ちを代弁して歌いましゅ聞いてくだしゃい【翼をくだしゃい】』ってカラオケで歌を唄い出したときは胸がキュッとなったでしゅ」


自分の行動に二日酔いからではなく、


普通にゲロを吐きそうになる沙織。


沙織は落ち込む気持ちをなんとか奮いたたせて運転した。


来るときと同様、支部に一泊して帰る予定だったが、


そこは沙織が頑なに辞退し、旅館に宿泊した。


事が事だっただけに長時間説教していたアダムだったが、


沙織が食事も余り取らず、ずっと落ち込んでいる様子を見て後悔していた。


「あ~サオリンはリア充になりたくて修学旅行に参加したりしたんだった~。嬉しかったんだろうな~勉強のために精霊化を見せて欲しいってみんなから頼まれたのが。精霊界一クールな男が何してんだよホントに。怒りに任せて説教してんじゃねえよ」


アダムとサヤカとアポロは旅館の休憩所で、


落ち込んだ沙織をどうするか作戦を練っていた。


「これはアダムッチのせいッス。言い過ぎたッス。今度はアダムッチが厄介事を起こしたッス。『所員が引き起こす厄介事に巻き込まれる苦労人』やっぱり間違ってなかったッス」


「うるせえよサヤカーン!」


「だからアポロがあんまりいじめるなっていったでしゅのに!」


「アポロ!お前が言った『翼をください』の話がサオリンにトドメを刺したんだぞ!俺とサヤカーンは空気を読んでそれだけは言わないでおこうって思ってたんだぞ!って終わった話はいい。これからの話をするぞ。サオリンがご飯を食べるくらいには元気を取り戻させるんだ」


アポロとサヤカーンは頷く。


「でも根本的な話。サヤカは、別に沙織さんが気にすることなんて一ミリも無いって思ってるッス。別に沙織さんが勝手に精霊化して病院送りにしたんじゃないッス。頼まれたからやったんすからほっとけばいいッス」


「俺もサヤカーンと同じ気持ちだぜ。客観的に見たら今度の事でサオリンを責める奴は少ねえよ。現に山さんもこちらに非がありますからって、また来て下さいねって気持ち良く送り出してくれたからな。でも今言ってるのはサオリンの主観、内面の話だよ。今までも自分の力を上手く操れなくて苦労してるんだ。それでまただぞ。どうすればいいか途方に暮れてんじゃねえか」


アダムの言葉に、場は沈黙する。


「とりあえず根本的な能力の制御の話は考えてもしょうがないッス。沙織さんの力の制御の話は道真様を交えて話するしかないッス。私らが沙織さんの神様の力を制御する方法なんて思いつくはずないッスからね。それより今、沙織さんが恐れていること、不安に思っていることは、自分のその力がいつか私達に牙をむくかもしれないということと、また一人になってしまうと言うことだと思うッス。だからこうしてる時間があるなら沙織さんのそばにいてあげるのがいいと思うッス。それで一緒に不安を共有するッス。今回は止められなかったけどアーサー探偵事務所として対策を考えるッス」


サヤカーンの意見に同意したのだろう、


アポロがサヤカーンに飛びつき髪の毛をグルーミングする。


「そうでしゅ。サオリンを一人にしてはいけないでしゅ!」


アポロもサヤカーンの意見に同意する。


「そうだな。サオリンを元気にするイベントを考えるより、少しでもサオリンの不安を減らすために側にいて一緒に対策を考える。やるじゃねえかサヤカーン。『所員が引き起こす厄介事に巻き込まれる苦労人』ってフレーズをちょっと採用しても良い気がしてきたぜ」


「ホントッスか!またビラを作り直さないと!」


サヤカは自分のビラが事務所公認になるかもしれないと喜ぶ。


「それじゃあサオリンの所にいくぞ」


アダム達は旅館の休憩所を後にし、部屋へ急ぐ。


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