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アーサー探偵事務所設立&面せ 違うッス!スーパールーキーの面接ッス ④

「サヤカちゃん!何してんの!」


交差点では、サヤカが「アーサー探偵事務所宜しくお願いします!」と頭を下げながらビラを配っていた。


「沙織さんじゃないですか!今、アーサー探偵事務所の事を一生懸命宣伝してるん ッスよ!あっすいませんお兄さん、アーサー探偵事務所です。宜しくお願いします」


沙織に説明している最中にも通行人にビラを配っていくサヤカ。


「ちょっちょっと待って!これ一時間くらい前に決まった話だよ。なんでサヤカちゃんが知ってるの!っていうか学校はどうしたの?」


サヤカはポケットをまさぐり、スマホを突き出すように沙織に見せる。


「大家さんがRINE で教えてくれました。私それ聞いて、いても立ってもいられなくなって、今日は期末考査最終日でもう学校終わったから、先生に頼み込んでPCルーム開けて貰って急いでこのビラ作ったんッスよ。とりま100枚印刷して、荷物も学校に置いたままダッシュでこの交差点に来て、人通りが多くなるこの時間に配ったから、もう後5枚しかなくなっちゃいましたよ。もっと印刷してくれば良かった~。あと進路指導の先生にもここに就職するってもう言ってますから安心してください」


沙織の胸にツチグモの爪が魂に刺さっていた時と同じくらい強い痛みが走る。


『あれ?私治ったよね。なんでこんなに胸が痛いの?あっそっか!魂えぐるくらいのダメージを受けてんだ』と沙織は理解し、失神しそうになる。そのまま後ろに倒れそうになったが、アダムとアポロが必死で支えてくれたおかげで何とか持ちこたえる。


「おい!サヤカーン。おまえあの時に絶対に止めろって言ったじゃねえか何してんだよ!」


「ちょっとどういう事アダム。とりま詳しく聞かせて欲しいんだけど!」


「アダムが、アーサー探偵事務所に入らないかって誘ってくれたんです。私、迷ったんですけど入所する事にしました」


「ちょっお前!サオリンが誤解するようなことギイアアアアアアアァァァァァァー」


「またお前かいアダム!今度こそお腹から紅茶吹き出すか試してやるわ」


アダムをアルゼンチンバックブリーカーで痛めつける。


「さっサオリン止めて。それよりヤバイのは内容だからアアアアアアアアアアアアア」


アダムの指摘にハッとなった沙織はアダムを交差点に投げ捨てサヤカを問い詰める。


「そっそうよサヤカちゃん。これどういう事!」


「えっ?何か間違ってるッスか?アットホームな探偵事務所です。所長の沙織とコーギーの精霊アダム、トラの精霊アポロとピチピチの十五歳の探偵が皆様のお悩みを解消します」


「問題あるでしょ!精霊って書いちゃってるじゃない!いやサヤカちゃんは間違ってないんだけど、普通の人にはアダムとアポロは見えない訳だから、そこは飛ばしてくれないと!私、起業してから一時間で普通の探偵から霊界探偵にクラスチェンジしちゃってるじゃない!それにアットホームって私まだ事務所見てないんだよ!あとサヤカちゃんが入社するって初耳なんだけど!」


「そうッスね。アダムとアポロは見えないッスもんね所長!次からは気を付けます所長!って・・・えっ?私社員じゃないんスか?そうなんッスか。裏の所長のアダムが言ったからOKなのかなって思ってました。私、お祈りされちゃうんッスか?就職活動中の兄が言ってました。会社に落ちるとお祈りされるって!サヤカは、神社の巫女で、お祈りする立場なのにお祈りされちゃうんッスか?沙織さん、私何でもするッス。お茶くみ、コピー用紙の補充、コンビニへの買い出しはダッシュで行くッス。あと・・あと・・・マッサージとか!どうか宜しくお願いします」


サヤカの言ってるのは『○○様とはご縁がなかったと言う事で、○○様の今後をお祈りしております』とかいう就職不採用通知のテンプレの事だろうと考えている内に、交差点で大きな声で雇ってくださいと小さな女の子が頭を下げる姿は人目を引き、大勢の人が集まり人垣が出来た。


周りからは「雇ってやれよ!」「こんな小さな子にここまでされたんだ。雇わねえと女が廃るぞ!」「君のマッサージに興味があるんだが、おじさんの所に来ないか?」などやんややんやと囃し立てる。通行人からプレッシャーを受け、困った沙織がサヤカに伝えたのは・・・


「ごっ合格!一次試験合格!二次試験の面接は事務所でやるから・・・2時、2時に事務所に来れる?」


沙織がそう言うと、声が出ないほど嬉しいのか、持っていたチラシをバサッと落とし、両手で口を塞いで信じられないという顔をする。周りから「やったな嬢ちゃん!」「昔の熱かった自分を思い出したぜ!さあ初心に返って仕事するか!」「マッサージが~、マッサージが~」と色々な声が飛び交う。


「行けます。絶対行きます。やったやったー一次試験合格しちゃった!先生に言っちゃお!」


「それは止めて!サヤカちゃん、とりあえず待ってるから。荷物も取りに帰って一旦家に帰ってから来るのよ」


「わかりました。それじゃあね所長」


サヤカは中学校に向かってダッシュした。


沙織はどっと疲れたようで、へなへなと歩道に腰を下ろす。


「サオリン、気持ち分かるぜ!あいつ、人の話聞かねえだろ。さっきも面接があるっつってんのに所長って気が早えよ」


「ごめんねアダム。今日はアダムに謝ってばっかりだね。アダムの時もこうだったんだね。大家さん余計な事しなくていいのに」


「オッチャンとしては多分、サオリンがまだ迷ってるみたいだから、背中を押すつもりでサヤカーンに伝えたんじゃねえかな。まあでも背中を押した場所が電車のホームの上みたいな・・・。まあアパートでゆっくり話をしようぜ。さあサオリン立って。ワックに荷物と商品取りにいこうぜ」



グフッどうしてこうなった?何で放課後に面接って言ったら、サヤカちゃんの両親が来るのよ。いやまだご両親は分かるよ。大事な娘だからね。変なところには就職させるわけにはいかないでしょうよ。でも何で進路指導の先生までが来てるの?いやもう胸の痛みが半端ない。ちょっと道真様がツチグモの毒用に調整したお酒飲んできていいかなと沙織が現実逃避していると、サヤカから声をかけられる。


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