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アーサー探偵団 ②

三人は名前に困ってしまう。


「ねえサオリン。このイチゴとっても美味しいでしゅ。もっと欲しいでしゅ」


「やるねえアポロ。そのイチゴは“あまおう”って言ってとっても美味しくて有名なイチゴなんだよ。それでね、あまおうの『あ』は甘い、『ま』は丸い、『お』は大きい、『う』はうまいのことなんだよ~」


「サオリン、スゴイでしゅ。物知りでしゅカッコイイでしゅ~」


「エヘヘヘへッもうしょうがないなあ~アポロは。あるやつ全部持ってきてあげるね」


沙織は嬉しそうに台所に走って行く。イチゴの説明をへーそうなんだと聞いていたアダム。


「そういう名前の付け方もあるか・・・俺の『ア』、アポロの『ア』、サオリンの『サ』でアアサ・・・あ!」


イチゴを手に戻ってきた沙織は、アダムの大きな声に驚く。


「何?どうしたの?あまおうアダムも食べたいの?」


「そうじゃねえ。いや食べるけどな。探偵団の名前が決まったんだ。アーサー探偵団だ」


「それってアーサー王から?聖剣エクスカリバ―で有名な人だよね。もう、アダムも中二病をまだ卒業してないじゃない」


「まあそれも入ってるよ。でもメインじゃない。サオリン、シャーロック・ホームズの作者の名前って何だっけ?」


「う~ん・・・誰だっけ?ハハハッ」


「アーサー、アーサーコナンドイルだよ。シャーロック・ホームズの作者の名前が俺達の名前の頭文字を並べたものと一緒なんだよ。もうこれ運命だろ」


沙織は少し頭で考えて「あっ本当だ!凄い」とアダムの発想に感動する。


アポロは沙織から、アーサーは凄い王様の名前でもあると聞くと、


「同じ王として、尊敬しましゅ」といって気に入っているようだ。


二人共異議などなく、三人の探偵団の名前はアーサー探偵団に決まった。




朝ご飯を食べ終えた三人は、アポロの探偵服の調整をする。


「首がキツいでしゅ」


「手が出てないでしゅ」


「手を上に上げにくいでしゅ」


等々様々な修正をして欲しいとアポロから要望が出た。


「思った通りだな。そもそも子供が着るもんじゃねえし、アポロは人の子供と変わらない動きが出来るといってもトラだからな、やっぱり色々マズイ所がでたか」


「そうだね。まあそこまでキツい修正じゃないよ。でもこれから作る探偵服はアポロのデータを反映して修正を減らしてね」


「分かってるよ。サオリンの探偵服には胸の所に、パッドを入れるポケットを忘れずつくるからよ」


沙織はまち針をアポロのお尻にプスッと突き刺す。


「イッテ―――!」


「あっ、ごっめ~~ん。アダムのお尻が凄いモフモフなんで針山と間違えちゃった」


「そんな訳あるかー!」


アダムはお尻をさすりながら沙織に文句を言う。


「まあサオリンの探偵服は良いのを買ってくれ」


「えっそうなの?三人お揃いの探偵服を着ると思ってたのに」


「それはサオリンと俺の考え方の違いだ。サオリンはまだこの探偵団をお遊びだと思ってるだろ?俺は違う。ゆくゆくは本物の探偵事務所にしたいと思ってるんだ。そうなると依頼人がサオリンの手作りの服を見て帰ってしまうこともあるだろうな。手作りは否定しないし、サオリンが俺達に作ってくれるこの探偵服は俺達の宝物だ。でも世間はそうじゃない。見た目で判断されるんだ。サオリンも身に覚えがあるだろ」


沙織は一ヵ月前に行った祭のことを思い出し、唇をキュッと噛む。


「だからサオリンには、既製品の良い物を着て欲しい。それでサオリンとアポロと俺の三人で普通の探偵にはお手上げの霊事件とかも解決していくんだ。そうすると噂を聞きつけた中に、サオリンのような本物がいるさ。サオリンが近くにいても、何もおかしな状態にならないそんな奴が。将来的にはそんな奴や精霊をアーサー王の円卓の騎士になぞらえて12人集めてえな。サオリンが笑顔でいられる場所が出来たらなと思うよ。まあサオリンにもやりたい事あるだろうから何年でも待つからよ」


沙織はアダムを抱きしめる。


「アダムありがとう。アンタの中二病は良い中二病よ」


「へへッありがとよ。さあサオリン一気に作っちまおうぜ」


「うん」


沙織は涙で目が潤んで針先がよく見えないが、笑顔で探偵服を修復していく。


アポロの探偵服の修復が終わったあと、アダムが沙織を気遣い、明日でいいと言うのも聞かず、沙織はアダムの探偵服の制作を始めた。


一度作ったこと、子供服の大きさであること、修正が少なかったこと等により、二人は何と三時間でもう一着を作り上げた。


「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉサンキューサオリーーン。俺の探偵人生のスタートだぜ!」


「アダム、とっても似合ってるでしゅ」


アポロはアダムが色違いの同じ探偵服を着ているのを見て飛び跳ねて喜ぶ。


「違うだろ?俺の名前はホームズだろワトソン君」


「!そうでしゅ僕はワトソンでしゅホームズしゃん!」


「ワトソン君、謎が我々を呼んでいる。行くぞ」


「はいでしゅホームズしゃん」


二人は昨日、生地と一緒に買った虫眼鏡を手に部屋を調べ回る。沙織はそんな二人を見て頑張って良かったと目を細める。気が抜けると沙織に睡魔が襲い掛かる。沙織はトイレを済ませてからお昼まで寝ようと決めた。


二人はいろんな場所を調べる。当然トイレも。


「ムッこれは!」


「ホームズしゃん、何かありましたか?」


「気づかないかね?ワトソン君」


「えっ?綺麗なトイレでしゅ?」


「フフフッ臭いだよワトソン君。この臭い、さてはサオリン三日ほど便秘―」


バキッ!木製のお盆がアダムの頭に振り下ろされ真っ二つに割れる。


「ぐおおおぉぉーこのアマぁぁぁぁ!」


アダムが痛さのあまりトイレの中を転げ回る


「アダム!余計なことすんじゃないわよ。あんた達が喜ぶと思って一生懸命作ったのに、一番始めにする推理が、乙女のトイレの後の臭いを嗅いで便秘を当てるって何考えてんのよ」


サオリンは射殺すような目をアダムに向ける。この時、アダムに多くの名探偵が持つ直感が働いた。反論したら死ぬと。自分の命に関してアダムは名探偵であった。


「悪かったよサオリン。俺達にとっちゃ排泄は人間と違って縄張りを示すための重要なものだったからな。その習性がつい出ちゃったんだよ。もうしないから許してくれよ」


「もう!約束だよ」


沙織は頬を膨らませながらベッドに行く。


「ホームズしゃん。大丈夫でしゅか?」


「大丈夫だ。でも分かっただろ?探偵は真実に近づくにつれ命を狙われる職業だ。ワトソン君も自分が真実に近づき過ぎたと思ったら注意するんだぜ」


「了解でしゅ」


その後二人は調味料の賞味期限を調べたり、沙織の足の大きさを調べたり、沙織の枝毛の数を数えたり、さらには沙織が寝ている姿をみて「これは他殺じゃない。孤独死だ」とアダムが言ったところで起きた沙織に殺されかけたりしたが、それにはアポロからも「サオリンにはアポロがいましゅからそんな死に方しないでしゅよ~」と泣かれアダムは二人に平謝りした。


そんな事をしているとお昼ご飯の時間になり、二人は休憩に入った。


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