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アーサー探偵団 ①

「ただいま~~」


いつも通り出掛けていた沙織がドアを開けると、アポロが、いやアダムも胸に飛び込んできた。


「えっアダムも!?どうしたの?」


「サオリン、探偵服作ってくれ!俺達探偵団を結成したんだ。もちろんサオリンもその一員だぜ」


「僕はワトソンでしゅ~」


あっこれは昼ドラでシャーロック・ホームズの再放送でもしてたなと沙織は思った。


「ホームズがカッコイイんだよサオリン!次々とトリックを暴いてよ!」


沙織はアダムとアポロから小一時間ホームズについて話を聞かされた。


「それでよ。俺は自分のスキルで探偵服と鹿撃帽を作れるんだが、アポロはそうはいかねえだろ?だからサオリンにアポロの探偵服と鹿撃帽を作って欲しいんだよ」


「作れって言われても・・・一応洋裁はお母さんから習った事あるけど、どんなのか見てみないと」


アダムは、沙織がそう言うと思って、あらかじめ印刷した探偵服と鹿撃帽の写真を見せる。


「鹿撃帽は・・・フンフン・・・・アダムが言ってる探偵服の正式名はインバネスコートって言うんだね・・・う~んちょっとこれは・・・」


沙織は、鹿撃ち帽はともかく探偵服は作れるか自信がないのか、あと一歩を踏み出せない感じで悩んでいる。


「大丈夫だサオリン安心してくれ!もう俺が探偵服作製の手順書をダウンロードして、それを元にアポロの寸法に合わせた型紙をもう作ってある。後は布さえあれば大丈夫だ。色々手伝うから頼むよ」


二人からキラキラした目で小一時間も話を聞かされていた時点で、沙織はやるしかないなと思っていた。


「いいよ。作ろう」


「やったでしゅ~~」


「良かったなアポロ。サオリンありがとうな」


「じゃあ二人共、今から布を買いに行こうか。二人共好きな色があるでしょ」


「えっ俺にも作ってくれるのか?」


アポロはまた目を輝かせて沙織に尋ねる。


「当たり前じゃない。探偵団っていうんだから服くらい揃えなきゃ。あと服を作るのに時間が掛かりそうだから今日は外でご飯を食べましょ。ワックで良い?」


「わ~い!ワック行くでしゅ~」


「そうだな。探偵にゆっくりご飯を食べている時間はねえし賛成だ」


三人は車でヨザワヤに行く。




買い物と食事を済ませて帰って来た三人は、すぐに作業を開始する。


「サオリン!まずこの型紙に合わせて布を切るんだ」


「切った布に、ミシンをかける出来あがり線を書いておくからな!」


アポロは次々と沙織に指示を出して作業を進めていく。一方アポロは昼からはしゃいでいたせいか、沙織の横で眠そうにしている。


「いいよアポロ。ベッドでもう寝なさい」


「そうだぜアポロ。お前はもう寝る時間だ。今日は一杯遊んだからな、疲れてるだろ?無理すんな」


「でも、二人が頑張ってましゅのに、アポロ一人が寝るなんて出来ましぇん。アポロも何か手伝いましゅ」


沙織にもたれ掛かりながら懸命にアポロが言う。沙織はそんなアポロを抱っこしてベッドに運ぶ。


「ありがとうアポロ。でもアポロの役目はまだまだ先なの。一番重要な探偵服を着て貰うって役目があるんだけど大変だよ~~。今のうちに寝ておかないと体が保たないよ。眠そうにしてたらアダムも私も困っちゃうの」


「そうなんでしゅか?」


「そうなの!だからゆっくりおやすみアポロ」


「おやすみなさいでしゅサオリン、アダム・・・グゥーーグゥーー」


アダムが寝ている姿に、目を細める沙織。しばらくしてから部屋の電気を消し、部屋の隅にある間接照明を点けてアダムのもとに戻る。


「ありがとう。アダムは私とインドで約束したことを守ってくれてる」


「約束?・・・・ああっアポロの面倒をみるって話か。そんなの今の今まで忘れてたよ。俺は自分が楽しんでいるだけだぜ」


「でもアポロ一人だけだったなら、今日見た昼ドラもただ寂しさを紛らわすものに過ぎなかったと思うわ。アダム、アンタがいるから、『探偵団でしゅ~!』『ワトソンでしゅ~!』ってニコニコしてると思うの。アダム、感謝してるよ」


「そう言われると照れるなヘヘヘッ。でもいいのかサオリン。俺は何も今日一日で作って貰おうなんて思ってなかったぜ」


「どうしよう。頑張るしかないね。アダムには朝まで手伝って貰おうかしら?」


「ヒューッさすがサオリンだぜ。そうこなくっちゃな」


「本当にそうなるかもしれないけど大丈夫なの?」


「へへッ。今、俺達はサオリンの生活習慣に合わせてるから夜寝るけど、本来なら夜の方が俺達は元気なんだ。それに俺はスパイだぜ。スパイにとって一日や二日寝ないことなんて朝飯前よ」


「じゃあ頼んだよ」


「任せろ。探偵団の証を作る大切な仕事で寝てたまるかよ」


沙織とアダムはハイタッチする。それから二人は夜明け近くまで作業を続けた。




「すごいでしゅ~!昨日見た探偵しゃんの服と同じでしゅ~!」


アポロは朝起きて枕の横に置いてあった探偵服と帽子に飛び跳ねて喜んだ。その衝撃で、寝たばかりのアダムと沙織も起きる。


「う~ん。アポロ・・・頼むから少し落ち着いてくれ」


「おはよー・・・アポロが喜んでくれて良かった」


眠い目をこすりながら上半身を起こした沙織に、アポロは飛びついて沙織を押し倒し、顔を舐め回す。


「こらっアポロやめなさいハハッハハハハハッ」


やめてと良いながら沙織もアポロをモフモフして楽しんでいる。


「さあ、朝ご飯にしよう!ちょっと待っててね」


沙織はアポロを抱えてリビングに置かれているコタツ机まで連れて行く。アダムも、欠伸をしながら起きてくる。


「気に入ってくれたみたいだなアポロ」


「ありがとうでしゅアダム~。アポロのイメージ通りの探偵服でしゅ」


「どういたしまして。でもまだ気が早えよ。寝る前に言っただろ?アポロに着て貰って、色々と調整しないと駄目なんだ。俺はテーラー、洋服を作る専門家のことな、それじゃねえからよ、ネットからダウンロードした情報をもとに作っただけだし、しかもそれは人間のデータだから必ずおかしい所が出てくるはずだ。だから遠慮無く文句を言ってくれ。ストレスのある探偵服で推理に影響が出たらいけねえからよ。頼んだぜアポロ」


「了解でしゅ。アポロにストレスを与える犯人を見つけてやるでしゅ!」


「ハハハハハッその意気だワトソン君」


二人で楽しそうにキャッキャキャッキャと騒いでいると、


沙織が三人分の朝ご飯、シリアルに牛乳をかけ、その上に切ったイチゴをのせたものを運んでくる


「さあ、食べましょう。お腹が膨れた後にサイズ調整しないと尾行中の定番のご飯、アンパンと牛乳を食べる時に脱がなきゃいけないなんて、そんな目立つことしてると尾行失敗しちゃうもんね」


「尾行ってなんでしゅか?」


「ああ、怪しい奴の後ろを付けて行って、犯行現場を押さえたり、そいつの家や立ち寄る所とか仲間なんかを調べたりすることだよ。それとアンパンと牛乳だが・・・間違っちゃいねえがどっちかと言うとそれは刑事ドラマの張り込みだなサオリン」


「!まっまあまあ話は食べながらにしよ。シリアルだから早く食べないとフニャフニャになって美味しくなくなっちゃうよ」


三人はシリアルを食べながら、探偵団の名前はどうするか話し合った。


「アポロは、みんなホットケーキ大好きでしゅからホットケーキ探偵団がいいでしゅ」


「う~んそれだと美味いホットケーキの店を探してるみたいな感じがするなあ」


「じゃあアニマル探偵団は?メインは二人でやるんだしそれでいいんじゃない?」


「駄目だよ。何で一歩引いてんだよ。一緒にやるんだよ。それに三人でもアニマル探偵団でおかしくねえけどな。インドで俺をオーバースローで投げた怪力はゴリラ顔負けだったじゃねえかゴリリン」


「誰がゴリリンよ!私が一回でもウホッて言ったことがある?ゴリラに探偵服が作れる?却下よ!アニマル探偵団なんて却下よ!」


自分が提案したにもかかわらず沙織怒りの却下。


「なんかホームズみてえにアパートの前の道がカッコイイ名前だったりしねえのか?」


「そんな訳ないでしょ。ただの生活道路だよ。名前を探した所で府道第413号とか記号みたいな名前なんじゃないの?目の前に住んでる私でも知らないのに、そんな名前にしたら下手しなくても誰も分からないよ」


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