落とせ!難攻不落の姫路城!!100
「その稲荷神昇進試験ってのは何なんだウーカ」
「コラ!またアンタは勝手にあだ名を付けて!」
「ウーカ!ホホホッ良いあだ名じゃ。お主達には特別にその名で呼ぶ事を許す。ワシもお主達をあだ名でよんで良いか?サオリンにサヤカーンにアリタンに焼き鳥だったかの?」
「どうぞどうぞ」
「気軽に呼んで欲しいッス」
「アリタンと呼んでいただき光栄です」
「あっあの焼き鳥は・・・」
「ホッホッホッ冗談じゃウィング。ホッホッホッ」
側近は振り回されることに慣れているのか、それとも宇迦之御魂大神が良いと言うなら文句は無いのか、自らの主人をウーカと呼ばれる事に別に何とも思っていないようだった。
「それで稲荷神昇進試験とはの、全国にいる稲荷神がより神格の高い神になるために必要な試験じゃ」
「それって俺も受けられるか?」
「そうじゃな~アポロちゃんには資格があるが・・・試験については此奴にまかせておるからのう~どうじゃ?」
「相当強いのは分かりますが難しいですね。しかしこの者にも神の気配があるのですが探ってもその理由が分からないのです・・・」
「ああ!これか?」
西九女王様を解いて貰ったアダムは、祓魔の剣を具現化する。
「それだ!しかし・・・借り物か」
「なんじゃそんな事か。要するに神のオーラを纏っているか神器が必要なのじゃな。ワシはアダムのファンじゃからの。アダムよ、お主がよく使う銃、信頼しておる相棒を出してみよ」
アダムはスパイ御用達の銃ワルサーPPKを出す。世界中のスパイ、警察ドラマでも良く使われる銃だ。
「でもこれ祓魔の剣と違って普通の銃だぜ?」
「威力などは関係ない。切っ掛けじゃからの」
そう言うとアダムの銃に触れる。するとアダムの銃が銀色に輝く。
「ウーカこっこれは!?」
「アダムの銃を、稲荷神昇進試験を受けるのに必要なレベルにした。これでアダムも受けられるぞ!」
「大神様!」
これには側近も声を荒げる。
「あ~うるさいうるさい。黙っておれ」
「コラ待て!」
後ろから怒鳴り声が聞こえる。
サヤカが宇迦之御魂大神の前に出ようと駆け出す。
それを宇迦之御魂大神の直前で白百合が押し倒す。サヤカは押し倒されたまま宇迦之御魂大神に願う。
「宇迦之御魂大神様!お願いです。サヤカも、サヤカも稲荷神昇進試験を受けさせてくださいッス。サヤカはこれ以上みんなに引き離される訳にはいかないんッス!!」
「申し訳ありません宇迦之御魂大神様。すぐに下がらせます」
「よい。サヤカーンよ、お主は千尋の谷に突き落としたのに戻って来たの。この宇迦之御魂大神、約束は守る。お前が稲荷神昇進試験を受けること、許可しよう。ただ・・・お主忘れておらんか?ワシの事をウーカと呼ぶ事を許すと言ったはずぞ」
宇迦之御魂大神は頬をぷくっと膨らます。
「ありがとうッス ウーカ!」
サヤカは満面の笑顔で喜ぶ。それを見て宇迦之御魂大神もホッホッホッと笑う。
「ちょっ大神様!」
「うるさいぞ。サヤカーンのオーラを調べてみよ」
「勘弁して下さいよ。試験を仕切るのは私なんですよ。ええっと・・・・・魔王っと・・・・・エッ魔王!?大神様!こやつ魔―」
宇迦之御魂大神の裏拳が側近の顔に突き刺さる。
「うるさいと何度言わすのじゃ。そうじゃ魔王じゃ。サヤカーンよ、実はそちに言われなくても修行を受けてもらうつもりだったぞよ。そして白百合、そちもな」
「えっ私もですか?しかし私は神器など持っておりませんが・・・」
「その内わかるフフフッ」
宇迦之御魂大神は妖しく笑いながら二人を見る。
「ウーカタン、みんなが受けるならアポロも受けたいでしゅよ~」
「お~そうかアポロちゃんも受けたいか~。良いぞ!頑張るのじゃぞ~」
「了解でしゅよウーカタ~ン」
さらにモフモフされて一層上機嫌になるアポロ。
その横で、側近が『部外者をそんな簡単にポンポンと参加させて苦労するのは私なんですからね』とブツブツ呟いていると、また宇迦之御魂大神からゲンコツを落とされた。
「ウーカ、私からも質問宜しいですかな?」
「おお清本!お主には治療してもらった恩もある。何でも聞くがよい」
「それではお伺いします。なぜ姫路城を占拠したのでしょうか?アダムさんの言う、動物園の霊達の戦わずにテリトリーを手放すことになる無念と、霊園の霊達による姫路城の占拠を防ぐ目的のためにやったのなら初めからそう伝えて下さればここまでこじれずにすんだのでは」
「清本よ、それは順序が違う。ワシが本物の宇迦之御魂大神であり、アダムが信用に足る精霊だと理解した今だからそう言えるのじゃ。もし、ワシが最初から正直に宇迦之御魂大神と伝え、今のような事を言うても、霊すら今まで見た事がない少し前のお主では東九条家に『宇迦之御魂大神を名乗る賊に姫路城が占拠された。成敗してくれ』と言うたはずじゃ。東九条家にしても宇迦之御魂大神がそんな所にいる訳がないとワシの言葉を信じたとは思えん。結局同じなら余計な事はせず、東九条家から来る陰陽師に伝えた方が楽じゃろ?あとは夢枕に立つという手段もあったんじゃが、あそこは厄介な結界だらけじゃ。強引に破って入れば別の危険が及ぶからの。じゃから待つことにしたのじゃ。まあ神と人では時間感覚が違うからお主にはやきもきさせてしまったがの。じゃが東九条家にも頭が切れる者がおるようじゃの。ワシのもう一つの目的を看破し、会いたかった者達を寄越してくれるとはのホッホッホッ」