落とせ!難攻不落の姫路城!!96
しばらくすると、そこにみんなが集まってきた。
「サオリ~~~ン、アダム~~~、大丈夫でしゅか~~~~!」
アダムがトテトテと走って来て二人に抱きつく。
「大丈夫よアポロ。アポロ大活躍だったねえ」
「ああ、アポロがいなかったらこの依頼は失敗してたぜ」
二人はアポロをこれでもかとモフモフしてあげる。
「照れるでしゅよ照れるでしゅよ~~~」
アポロは満面の笑みを浮かべ二人の顔を舐める。
「二人共大丈夫ッスか?もし怪我が酷いんなら所長はこのサヤカが引き受けるッス」
木の棒を杖にしてヨロヨロとサヤカが二人に近づいてくる。
「お前は感動の再会って時に、上司に欲望をぶちまけるんじゃねえよ」
「フフフッ今のサヤカちゃんよりは元気かな?」
「それは良かったッス!じゃあ遠慮なく行くッス」
サヤカは二人に飛びつく。
「こらサヤカーン!重てえよ!」
「いいじゃないッスか!所長なら器のデカいところみせるッスよ」
「ハハハハハッもうサヤカちゃんたら」
白百合とウィングも集まってきた。ウィングは疲労の色が濃く、白百合に肩をかりて歩いている。
「沙織さん、アダムさんもご無事でしたか!あのガイを倒すなんて流石です!惚れ直しました!」
「本当にとんでもない事務所だ。いっそ事務所ごと自衛隊に所属しないですか?給料の心配もしなくて良いですし、装備も支給されますよ」
白百合はウィングを投げ捨てる。
「いってぇな!何するんだよ白百合!」
「あぁ?言ったはずだぞ。サヤカは東九条家が育てると。それにお前程度が一佐では陰陽部隊のレベルもたかが知れるというものだ。お前は自分の修行に専念しろ」
「おまっ陰陽部隊の悪口を言うんじゃねえよ!部隊には俺より強い人がまだまだいる。それに自衛隊に入りませんかって提案しただけじゃねえか。何が悪いんだよ。っていうか良い話だろが!」
「ふんっ金や装備を支給すれば口がでると言っているんだ。沙織さんはお前達が動かないような事件も解決して人々の笑顔を護りたいとアーサー探偵事務所を設立したのだ。ハァ~ッその崇高な理念に考えが及ばないとは。だからお前は焼き鳥にされるのだ」
「ああーーーーーー焼き鳥って言ったな!一番気にしてること言ったな白百合!分かります~~~俺は沙織さんの気持ちお前より分かります~~~人の痛みを理解出来ないサイコパスのお前よりず~~っとず~~~っと分かります~~~」
「ほっほう、その身体の状態で私に喧嘩を売るとは良い度胸だ。私はお前から言わせるとサイコパスらしいからな。うっかり加減を間違えて殺してしまっても文句をいうなよ」
指の骨をボキボキ鳴らしながらウィングに迫る。
「さっ沙織さん、アダムさん助けて下さい。こいつは殺る気です。自衛隊員の勘が俺に最大限の警鐘をならしてます」
「情けねえなウィング。まあそこがお前の良いところだけどよ」
「ホントね。ウィングさんは優しいからね。アリタン、無事で良かった。アリタンが大天守から落とされた時はどうしようかと思ったけど、アリタンなら大丈夫と信じて戦いに集中出来たわ。また一緒に仕事しましょ」
「この白百合、京都タワーの天辺から落とされても大丈夫です。東九条家に仕事を依頼する時は是非この白百合を御指名ください」
さっきまで指の骨をならしていた両手は、今は沙織の手を優しく包んでいる。
ウィングはホッと胸をなで下ろす。
「大変だなウィング。頑張れよヘヘヘッ」
「頑張れって何をですか?ちょっ!ちょっとアダムさん!?」
清本達も駆けつけてくる
「おお!大将軍が敵大将 鎧武者を討ち取っておるぞ!」
「さすが大将軍様じゃ!」
「勝ち鬨をあげ~~~~い!!」
「「「「「「「「「大将軍!大将軍!大将軍!大将軍!大将軍!大将軍!・・・」」」」」」」」」
清本達の大合唱が広場に響く。
「さあ続くッスよ!天才軍師サヤカ様♪所長になってよサヤカ様♪」
「「「「「「「「「天才軍師サヤカ様♪所長になってよサヤカ様♪」」」」」」」」」
「きてきてサヤカ♪ばいばいアダム♪」
「「「「「「「「「きてきてサヤカ♪ばいばいアダム♪」」」」」」」」」
「テメエこの野郎サヤカーン!おら続け 窓際サヤカ♪解雇だサヤカ♪」
「「「「「「「「「窓際サヤカ♪解雇だサヤカ♪」」」」」」」」」
「ちょっとアダム、古今東西の名軍師がうなるような素晴らしい作戦を考えた功労者にそれはないッス!サヤカは今、アダムに下克上を宣言するッス!」
「おう上等だ!クタクタでヘトヘトだけどお前なんかに負けるかよ!」
お互いのほっぺを引っ張り合いしてじゃれ合う二人。そんな楽しそうな二人にアポロが混ざり、アダムのお腹の肉を引っ張る。
「あっ!アダムもこんなにお肉が余ってましゅ!アポロに痩せろと言っといてこれはヒドいでしゅ!!」
「なに!?そんな訳あるか!これはコーギーの仕様だ!」
「イヤイヤこれはひどいッスね~。これはもう肥満体ッスね~。りんごパイはお預けッスよね、沙織さん?」
「ハハハハハッそうだね。二人共ミニサイズにしよっか」
「何でそうなるでしゅかーー!何でアポロもミニサイズでしゅかーー!」
「お前はもう腹からアゴから首から全部に肉ついてんじゃねえか!おいサオリン、俺は太ってなんかねえよ。これからもフルサイズで頼むぜ」
「だめ~。これからはご飯の量を減らします~」
アダムとアポロがギャーギャーうるさい。そんな二人を見てサヤカが大笑いしている。このうるさい日常こそ沙織が欲したものだ。沙織は離ればなれにならなくて本当に良かったと心から思う。