落とせ!難攻不落の姫路城!!93
「ホッホッホッこの化粧櫓の壁にワシをぶち当て壊しながら入ったことで、お主はここをすり抜けることが出来ぬ神域と勘違いしたか?ホッホッホッお主は知らんじゃろうがこの城は今、ワシのオーラで出来ておる。神域などではない。じゃからこんな風に本来壁のない所に壁を作り出したりするのも自由自在よ。さあ阿修羅よ、終わりの刻じゃ。沙織から出ていけい!」
鎧武者は肩に突き刺した刀から直接沙織の中にオーラを送り込み、阿修羅を追い出そうとする。
「ぐあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー」
膝をつき悶絶する阿修羅。沙織の中の阿修羅の意識が追いやられていくのを鎧武者は感じる。
「さあ我慢なぞするな。サッサと―なんじゃこれは!?」
阿修羅に突き刺した刀がポキリと折れた。沙織に刺さっている刀を見ると、どす黒いオーラに包まれて分解されたのか消えてしまった。
「クックックッ、ハッハッハッハッハッハーーー。勝った気でいたか?笑わせんなよハッハッハッハッハッハッ演技だよ演技」
膝をつき苦しそうな表情をしていた阿修羅が笑いながら立ち上がる。
「それなのにお前ときたらドバドバとオーラを流し込んでくれてありがとよ。回復できたよ」
「回復じゃと!?」
「あん?ただのドレインタッチだろ?」
「ワシのオーラを吸収したのか!」
「あ~~何度も言うが俺を舐めすぎだ。俺は誰だ?阿修羅だぞ?世界でも有数の戦闘の神だぞ。そんなこと造作も無い事よ。まあお前が本来の姿であれば封印された身の俺では一溜まりもなかったがな。しかしお前も俺と同様本来の力を使えない身で、しかも沙織の身体を気遣いながら戦っている。最初からお前に勝ち目なんてないんだよ。さあもう終わりだ。お前のオーラを吸収したおかげで、さっきまで感じ取れなかったこの城を構成するオーラを感じ取ることが出来る。ああ、お前のさっき壁をすり抜けた動きも出来るぞ。さあもう逃げられないぜ。この俺に講釈を垂れたお前をズタズタに引き裂いてやる」
阿修羅が剣を構える。
「ちぃっ厄介な神じゃ!」
「フンッそれはお互い様だ。それと勝ち目がないにも関わらず諦めないその精神力だけは認めてやろう。いくぞ!」
鎧武者と阿修羅は再び斬り結ぶ。鎧武者は城の形を変え、行く手を阻もうとするが、阿修羅は一切惑わされず壁をすり抜け、鎧武者の命を刈り取ろうと剣を振る。そして・・・
「さあ終わりだ。本当の終わりが近づいてきたぞ」
「何を言っておる?」
鎧武者の背が壁につく。
「何じゃと!?」
ありえない。鎧武者としては後退せずに阿修羅の攻撃を受けるのは不利でしかないため、当然廊下の突き当たりの壁などすり抜けるつもりでいた。しかしそれが出来ない。
「クックックッすり抜けるのが出来るなら、当然その逆も出来るだろ。だがお前は俺のオーラを吸収していないから、俺のオーラが侵食した壁をすり抜ける事は出来んがな!」
先程と同じように阿修羅は大上段から渾身の一撃を放つ。鎧武者は二振りの刀にありったけのオーラを込め、刀をクロスして受ける。激突の衝撃で天井や側面の壁が吹き飛ぶ。
阿修羅の剣は鎧武者の刀の半分まで斬り進んで止まる。鎧武者は腕をプルプルと震えさせながら耐えている。
「ほう、さすがだな」
「ギッまだまだ」
「いや、終わりだ」
阿修羅はオーラで出来た両腕の指を絡ませ、それを勢いよく剣の峰に振り下ろす。鎧武者の二振りの刀は真っ二つに両断され、鎧も大きく斬り裂かれる。
「グフゥッ誰か、誰か阿修羅を止めよ・・・手遅れになる・・・」
鎧武者と共に最後まで立っていた背面の壁は、その衝撃により粉々に砕かれ、鎧武者は地面に落下する。
息も絶え絶え地面に横になっている鎧武者の前に阿修羅が立つ。
「阿修羅よ、見事じゃ。負けを認めよう。だから此奴を許してやってくれんか?」
「ふんっ。その姿のお前が負けを認めても何の価値がある?この阿修羅と敵対し、生き延びたと言いふらされる不利益の方が大きいわ。取引き不成立だ」
阿修羅は剣を振りかぶる。