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落とせ!難攻不落の姫路城!!92

 鎧武者は宮本武蔵が得意としたかかとを使う独特の歩法で一瞬にして距離を詰める。


今まで自身の強さ故、先手をとると勝負を楽しむ前に終わってしまうため、相手の攻撃を受けてから攻撃するスタイルであったが、それは阿修羅との戦いでも同じだった。そのため阿修羅は急なスタイルの変更、見事な歩法に虚を突かれる。


この阿修羅相手に今まで本気ではなかったのかと。


阿修羅相手にこの土壇場でスタイルを変えるなど前代未聞。多くの者は震え、怯え、命を狩られるのを待つだけだからだ。それに加え、さんざん武器の性能差を見せつけていたはずだ。今はそれに鎧武者自身が放った術を二つも上乗せし、その差はさらに大きくなっている。それにも関わらず、懐に飛び込む鎧武者の胆力に阿修羅は驚いた。しかしそれは一瞬、阿修羅は鎧武者の首を刈り取るため刀を横薙ぎする。


鎧武者はそれを柳が風に揺られるように剣の軌道に合わせて避ける。紙一重で避けた鎧武者の顔は炎と電撃により酷い火傷を負う。しかしそんな事に一ミリも気を取られず、温存していた刀で阿修羅の右肩の筋肉を断ち、骨を砕こうとする。


そうはさせまいとオーラで出来た腕が襲い掛かる。

それを左の刀で二本とも一気に前腕部から斬り飛ばし、右手に持った刀で刺突を敢行する。


「許せよ沙織!」


骨を砕く音ではなく金属の打撃音が響く。


数十の阿修羅の剣が突然目の前に現れ刺突を防いだ。さらに数十本の剣が、鎧武者の急所という急所に数ミリの距離を残し浮いている。

鎧武者は微動だに出来ない。


「クックックッ人間を介しているから、一部の力しか使えぬから、この四本の腕に持つだけの剣しか作りだせぬとでも思ったか?」


「阿修羅!お主本当に分かっておるのか!そこまでの力を行使して沙織の身体がどうなるか分かっておるのか!」


「安心しろ。すぐにお前を殺してやる。それで終わりだろ?だがこのままお前の全身の急所を貫いて終わりというのは面白くない。お前はこの一振りで俺自ら肉を斬る感触を味わってやるクックックッ」


全ての剣は阿修羅の持つ剣に吸収され、今までにないほど禍々しいオーラを放っている。


「この愚か者めが!神たるものが自身の心を律することが出来ぬとは。お主は強くなどない。殺神衝動に溺れ、護るべき者を見失い、また大切な者を失うただの馬鹿よ」


「黙れ!お前に何が分かる」


「分からんよ。じゃが今のお主のようにさせまいと諫める者がいたじゃろう、お主と一緒に涙を流してくれる者がいたじゃろう、悲しみにくれるお主を愛してくれる者がいたじゃろう、その者達をお前はどうしたのじゃ?傷付け、拒絶したのではないか?何故お前の娘にかける愛情の少しでもその者達にも注がなかったのじゃ?無論、家族が大切で有ることは言うまでもない。それを奪われた悲しみはいかほどか。じゃが生まれも育ちも違う者達がお主をいさめ、共に泣き、愛してくれることは同じように尊いものなのだ。それが分からぬのか!」


「黙れ!」


「沙織はお主に何を願った?命と引き替えにでもアポロを護ってくれとでも言うたか?違うじゃろ。昔の沙織はツチグモに両親を殺され、自暴自棄になり死に場所を探しているようじゃったが変わった。今はアダム、アポロ、サヤカと楽しい時間を過ごしたいとな。人の子が変われるのじゃ。阿修羅よ、今ここで―」


「黙れ!!!全てを、全てをもう失ってしまったのだ。俺にはもう自らを焼き続ける赫怒の炎しか残っていない!」


「違う。お主は全てを失ってなどいない。今じゃ!今すべてを失いかけておるのじゃ!踏みとどまれ阿修羅よ。理性が少しでも残っているなら沙織を解放して―」


阿修羅は鎧武者にもう話すことはないという意思を、剣を向けることで伝える。


「構えろ!別に大人しく首を差し出しても構わんぞ!」


「個人的にはそうしたいのじゃが立場というものがある。ワシがそのような事をすれば世はまた乱れる」


二人の間に再びオーラの嵐が吹き荒れる。


「ちぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」


今度は同時に斬りかかる。


鎧武者は受け流しながら斬りかかるが、阿修羅に当たる直前にオーラの腕で剣の腹を横から叩かれかわされる。また阿修羅が斬りかかる・・・


人知を超えた二柱の神の攻防は無重力状態で行われているかのように床や天井など関係無しに斬り結んでいく。鎧武者は押されながらも冷静にチャンスを待つ。


しかしその時は来た。


姫路城が広く、廊下が長いと言っても無限ではない。阿修羅の圧力を後退することで逃がしていた鎧武者にとって決断の時が迫る。


「さあ終わりの刻が近づいてきたぞ」


阿修羅がニヤリと嗤う。

鎧武者の背が壁につく。


「ちぃっここまでか!」


「死ね!!!」


阿修羅が大上段から渾身の一撃を放つ。鎧武者が防御しようとも剣もろとも叩き斬るつもりだ。


「そうはイカの金玉ホッホッホッ」


鎧武者は壁をすり抜け、阿修羅の一撃をかわす。


「なに!?グフッ」


阿修羅は壁から突き出てきた刀に肩を刺される。目の前にあった壁が消え、鎧武者が現れる。


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